第216号黒岩検閲済 2026年6月23日 発行(不定期刊/前号:6月23日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|イナゴ投資の型

「次はこれが来る」とSNSで急騰した銘柄に後乗りする型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

SNSのタイムラインに「次はこれが来る」「乗り遅れるな」という投稿が並び、ある銘柄がぐんと急騰する。そういう光景を、ここ数年で何度も見るようになった。チャートが一気に立ち上がる形を、相場の世界では「イナゴタワー」と呼ぶことがある。群がって食い荒らし、いなくなると一気にしぼむ。今号は特定の銘柄やアカウントを名指しするのではなく、この「SNSで急騰した銘柄に後から飛びつく」という動きが、お金の流れで見るとどういう型なのかを淡々と調べてみた。

まず、急騰した銘柄の「後ろ姿」を見ておく

急騰しているチャートは、買った人が大勢いるから上がっている。問題は、その買いがどういう順番で入っているか、である。早い段階で仕込んだ人や、自ら「これが来る」と発信した人は、値が十分に上がったところで売る。すると、最後にタイムラインを見て「まだ間に合う」と飛びついた人が、いちばん高い値で株を抱えることになる。

つまり、SNSで急騰した銘柄に後乗りする構図は、椅子取りゲームに近い。音楽(話題)が鳴っているあいだは全員が儲かっているように見えるが、止まった瞬間に座れなかった人だけが損をする。誰が音楽を止めるかというと、たいていは最初に煽っていた側だ。ここを押さえておくと、次の話が分かりやすくなる。

「次はこれが来る」を、お金の流れで分解する

この調査報がいつも立ち止まる問いは一つだ。で、その利益の出どころは? 急騰した銘柄で誰かが利益を出したなら、その同じ額をどこかの誰かが払っている。新しい事業や配当が生んだ価値ではなく、ただ「後から高い値で買った人」の資金が、先に売り抜けた人の利益に変わっているだけなら、それは富が増えたのではなく、移っただけだ。

厄介なのは、煽る側にとって「後から人が来るほど儲かる」点である。だから本当に手堅い銘柄かどうかよりも、いかに多くの人を急がせて買わせるかが目的になりやすい。「今すぐ」「限定」「乗り遅れるな」という言葉が増えるのは、そのためだと私は見ている。SNS上で注目銘柄を分け合う交流型のコミュニティについては、別号でみんなで注目銘柄を共有しあう型を調べた記事にもまとめている。雰囲気は違っても、後から来た人の買いを当てにする構造は、よく似ている。

この型に共通する三点 銘柄名が何であっても、後乗りで損が出る流れは似ている。①「次はこれが来る」と理由より勢いで急がせる ②自分では裏の取れない他人の「儲かった」を根拠にさせる ③値が十分上がったところで、煽った側が静かに降りる。この三つがそろっていたら、商品名が何であれ、いったん手を止めたい。

SNSでの株価の煽りには、制度上の線がある

「合理的な根拠がないのに、値が上がると思わせて買わせ、自分は売り抜ける」。これは単なるマナーの問題ではなく、制度の上で線が引かれている行為だ。証券取引等監視委員会は、うわさや根拠のない風評を不特定多数に伝える「風説の流布」や、相場を人為的に動かしておきながら自然な需給で動いたように誤解させる「相場操縦」は、金融商品取引法で禁止されていると説明している(証券取引等監視委員会「不公正取引規制違反に係る課徴金制度について」)。電子掲示板を使った風説の流布が実際に告発された例もある。

もちろん、SNSで銘柄について語ることのすべてが違法だというわけではない。ただ、「必ず上がる」「絶対に儲かる」と言い切って急がせる発信は、制度の線に近づいていく。金融庁も、詐欺的な投資勧誘の典型として「上場確実ですので、必ず儲かります! 元本も保証します!」という文句をそのまま挙げている(金融庁「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!」)。投資に「必ず」はない。言い切る発信ほど、いったん引いて眺めたい。

さらに危ないのは「銘柄を教えるグループ」への誘導

SNSの煽りそのものよりも一段深いのが、そこから「無料で注目銘柄を教える」チャットグループや個別のやり取りへ連れていく流れだ。ここまで来ると、単なる相場の盛り上がりではなく、勧誘の段階に入っている。実際、こうした入口を含むSNS型投資詐欺の被害は大きい。警察庁の暫定値によると、SNS型投資詐欺の認知件数は9,538件、被害額は約1,274.7億円で、いずれも前年から増えている(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」)。1件あたりに直すと、およそ1,300万円を超える計算になる。

金融庁は、SNSやマッチングアプリで知り合った相手、著名人をかたる者からの投資勧誘について「儲け話をすすめられたら、まずは疑いましょう」と注意を促している(金融庁「SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください!」)。見分けの手がかりも公的に示されていて、消費者庁は「投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合、それは詐欺です。振り込まないでください」とはっきり書いている(消費者庁「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください!」)。個人口座への振り込みを求められたら、そこで話は終わりにしてよい。

教えてくれる相手の「登録」を確かめる 日本の居住者を相手に株などの取引を勧める業者には、登録が必要だ。金融庁は無登録で営業しているとして警告した相手の名称を一覧で公表している(無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について)。ただし同庁も断っているとおり、これは確認できた相手に限られ、「一覧に載っていない=安全」ではない。あくまで確認の入口として使いたい。

巻き込まれないための、ゆるい確認手順

気合いで見抜こうとすると疲れる。だから「いつものクセ」にしてしまうのがいい。いちばん効くのは、その場で買わないこと。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、急騰に飛び乗る失敗の大半は防げる。そのうえで、次の点を確かめてほしい。

  • 「次はこれが来る」「乗り遅れるな」と急かされたら、急がせる理由のほうを疑う
  • SNSで回ってくる“儲かった報告”は、自分で裏の取れない数字として扱う
  • 「無料で銘柄を教えるグループ」に入れられそうになったら、一拍おいてからにする
  • 振込先に個人名義の口座を指定されたら、そこで止める

すでに飛び乗って損をしてしまった方、あるいはグループに誘われて振り込んでしまった方へ。気持ちは分かるが、順序だけ先に置く。取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。①追加で払わない ②やり取りやチャート、振込の記録を残す ③振り込んだ決済元に連絡する ④警察相談専用電話「#9110」や消費者ホットライン「188」、金融庁の詐欺的な投資に関する相談ダイヤル(0570-050588)に相談する。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

迷ったとき用の一言 本当に確かな機会なら、こちらが数日考え、相手の登録の有無を調べる時間を取ることを嫌がったりはしない。「今すぐ」「あなただけ」と急かされたり、調べようとして不機嫌にされたら、それはそれで一つの答えだと思う。

この記事のまとめ

  • SNSで急騰した銘柄への後乗りは椅子取りゲーム。煽った側が高値で売り抜け、最後に飛びついた人が高値づかみする
  • 「必ず上がる」と急がせる発信は制度の線に近づく。煽りから「銘柄を教えるグループ」へ進ませる流れは、SNS型投資詐欺の入口にもなる

結局のところ、その場で買わない・他人の“儲かった”を自分で確かめる・個人口座への振り込みはしない。この3つに尽きる。