第210号黒岩検閲済 2026年6月22日 発行(不定期刊/前号:6月22日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|無料オファーの型

「無料で注目銘柄を教えます」という株情報サイトの勧誘の型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「無料で今週の注目株が分かります」「登録は無料、まずはお試しで一銘柄」。SNSの投稿やまとめ記事から、こういう案内に行き着いたことのある方は多いと思います。すすめてくるサイトの名前も、誘い先のLINEアカウントも案内ごとに違うのですが、お金の流れだけを抜き出すと、よく似た一つの型に収まります。特定の事業者やサイトは名指しせず、この「無料を入口にして、その先で課金させる」型を、数字と仕組みでほどいてみます。

どうして勧誘は「無料」を入口に置くのか

「無料」と書かれていると、警戒のハードルがぐっと下がります。お金が動かないなら、とりあえず登録してみよう——その一歩を踏ませることが、この型の最初の目的なんだと思います。けれど、入口が無料でも、出口まで無料とは限りません。国民生活センターは、「高額収入を得る方法を教えると強調された広告等を見て連絡をしたところ、高額な契約をすれば儲けることができるノウハウを教えると勧誘されたが、実際は説明と異なり儲からない」といった相談が寄せられている、と注意を呼びかけています。無料や手軽さを入口に置き、信用が育ったころに有料の上位プランや高額情報へ進ませる、という段差が、すでに公的に記録されている構図だということです。

「無料の銘柄が当たった」という体験も、よく語られます。けれど、たくさんの人に別々の銘柄を配れば、結果として当たる人は必ず一定数出ます。当たった一握りの声だけが表に並び、外れた大勢は見えない——そう考えると、無料で見せられる「実績」は、自分で裏を取れないかぎり根拠としては弱い、と見ておくのが落ち着いた読み方だと思います。

「無料銘柄」のその先で、お金はどこへ向かうのか

無料の案内をたどると、たいてい有料の投資助言プランや、個別の売買指示を売る契約にたどり着きます。ここで一度立ち止まりたいのが、「その助言を売っている相手は、そもそも売っていい立場なのか」という点です。

有償で個別の銘柄を推奨・助言する事業は、本来、登録を受けた者でなければ行えません。金融庁は、日本の居住者を相手に株取引などの金融商品取引業を行う者は法令に基づく登録が必要であり、取引の前に相手が登録を受けているか、無登録業者として警告を受けていないかを確認するよう促しています。無料の銘柄配信そのものは登録の有無が見えにくいのですが、その先で有料の助言・売買指示にお金を払う段になったら、相手が登録業者かどうかは必ず確かめるべき分かれ目になります。無登録の相手に助言料を払う流れは、入口の「無料」とは別の問題として残り続ける、ということです。

その相談は、いま実際にどれくらい起きているのか

「自分は無料の範囲でやめておけば大丈夫」と思いたくなりますが、入口の手軽さから抜け出せず相談に至る人は、数字のうえでも少なくありません。国民生活センターによると、もうけ話のノウハウなどをうたう「情報商材」に関する相談は、2022年に約7,000件、2024年も4,118件が寄せられています。さらに視野を広げると、警察庁の確定値では、令和6年(2024年)のSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は10,237件、被害額は約1,271.9億円にのぼり、前年からおよそ2.8倍に増えています。無料の銘柄オファーは、この大きな流れの「いまの入口の一つ」として置かれている、と見ておくのが安全だと思います。

「無料」の出どころを、お金の流れで見る 誰かが手間とお金をかけて銘柄情報を集め、それを「無料」で配るなら、その費用はどこかから回収されているはずです。多くの場合、無料の先にある有料プランや、紹介した口座・商材からの手数料が、その出どころになります。見るべきは「無料」という言葉ではなく、最終的にあなたの・あるいは誰かのどのお金から、相手の利益が出てくるのか、です。出どころが見えない「無料」ほど、出口の値段が高くつきやすいと考えています。

名前と登録を、見える事実で確かめる

もう一つ気になるのが、情報を配り、課金を求めてくる相手の素性です。サイトには華やかな実績だけが並び、運営会社の名前も、代表者も、所在地もぼやけている——というのはよくある光景です。お金を払う前に、まず相手が「誰」なのかを、見える事実で確かめておきたいところです。

足場はあります。金融庁は、無登録業者との取引は高リスクだとして、相手が登録を受けているか、無登録業者として警告を受けていないかを確認するよう案内しています。登録のない相手に助言料を払い続けると、調子よく「次は上がる」と言われ続けるのに、こちらが損を取り返せないまま支払いだけが重なる、という流れに入りやすい。無料の銘柄に感心する前に、まず運営の名前を調べて、登録の有無と照らしてみるのが順番だと思います。

迷ったとき用の一言 「本当に良い情報なら、こちらが運営会社や登録を調べる時間を取ることを嫌がらないはず」。無料を理由に登録を急かしたり、「今だけ」と即決を求めたりするなら、それはそれで一つの答えだと思います。無料なのはあなたの入口だけで、急いでいるのは相手なのだ、と一度引いて眺めてみてください。

巻き込まれないための、ゆるい行動ルール

気合いで見抜こうとすると疲れるので、いくつかを「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思います。一番効くのは、その場で決めないこと。「運営会社と料金の全体像を持ち帰って調べます」と言えるだけで、大半は防げます。

  • 「無料」の先に有料プランや個別の売買指示があるなら、その総額までを先に確かめる
  • 無料で当たったとされる「実績」は、自分の手で裏を取れるかどうかを基準にする
  • 有料の助言・売買指示を買う前に、相手が金融商品取引業の登録を受けているかを照らす
  • 運営会社名・代表者・所在地が見当たらないサイトには、お金を入れない
  • 無料登録やLINE追加だけでも、一拍おいて、利害のない人に話してから決める

この記事のまとめ

  • この型は「無料で警戒をゆるめる → 無料の当たりで信用させる → 有料プランや個別助言で課金 → 無登録の相手に払い続けさせる」流れになりがち
  • 無料を入口に高額契約へ誘導する相談は国民生活センターが注意喚起済みで、有償の銘柄助言は金融商品取引業の登録が必要

見るべきは「無料」という看板ではなく、その先の料金の総額と、お金を払う相手の素性です。確かめられないなら、その場で決めず消費者ホットライン「188」に相談してください。