利用者の売買実績が星付きで並ぶ“AI厳選の注目銘柄ランキング”の型を、お金の流れで調べた
「AIが厳選した注目銘柄ランキングを、無料で公開しています」――そう案内されるサイトがある。ただのランキングではない。登録した利用者が買った銘柄、買値(IN)と売値(OUT)、★いくつの評価、ひとことの投資理由まで、誰かの取引明細がずらりと並ぶ。「923人が参加」と人数も出る。にぎやかで、よく作り込まれている。看板に使われる名前や銘柄は案件ごとに違っても、お金の流れだけを抜き出すと、よく似た一つの型に収まる。特定のサービスは名指しせず、この「利用者の売買実績を並べて見せる無料ランキング」の型を、数字と仕組みからほどいた。
以前、みんなで注目銘柄を共有しあう交流型の無料コミュニティの型を扱った。あのときは「場のにぎわい」を信頼の根拠にする話だった。今回はそこから一歩進んで、利用者一人ひとりの「買値・売値・評価」という取引明細そのものを実績として並べ、他人の成績を信用の担保にする型を見ていく。
なぜ「他人の売買実績」を見せられると信じてしまうのか
広告の文句なら、人は身構える。だが「実際に使った人の取引履歴」と言われると、急に具体的に見えてくる。AIという技術への信頼、ランキングという順位づけ、そして利用者の生々しい数字。自分では裏を取れない三つの権威づけが重なると、出どころを確かめる一手間がすとんと抜け落ちる。
つまり、信じさせているのは中身の正しさではなく、見え方の作り込みだ。たくさんの人に同じ画面を見せて、反応した人だけを次の段階へ進める。最初の入口を無料の「実績一覧」にしておくのは、たぶんこの効率がいいからだろう。では、その並んだ数字は、誰がどうやって用意したものなのか。
並んだ実績は、こちらから裏が取れない
順に分けて考えたい。まず「923人が参加」という人数。画面に出る数は、表示する側がいくつにでも書ける。次に「この銘柄で+30%」という成績。スクリーンショットも、明細風の画像も、いまはいくらでも作れる。最後に★評価とランキング。表示の順番は運営の都合で並べ替えられる。要するに、AIが選んだという過程も、利用者が出したという実績も、こちらの手では一つも確認できない。
無料ランキングの先で、お金の流れがどう変わるか
無料の実績一覧は、たいてい入口でしかない。「ランキング上位の銘柄は、有料の会員向けに先出ししています」「AIの精度を上げた限定情報はLINEのグループで」――そう案内されて、別のやり取りへ移った先で流れが変わる。金融庁は、情報交換や勉強会から始まり、虚偽の成功談をもとに投資話を持ち掛け、しばらく利益が出て出金もできるかのように装いながら追加で高額な入金をさせる、という典型的な流れを注意喚起している。にぎやかな実績一覧は、その「成功談」を一覧の形にしたもの、と見ることもできる。
規模も見ておきたい。警察庁の確定値では、令和6年のSNS型投資詐欺の認知件数は6,413件、被害額は871.1億円。被害時の連絡ツールはLINEが90.9%を占める。無料の広場から個別のチャットへ呼ばれた時点が、ひとつの境目になっている。国民生活センターも、SNSをきっかけにした投資勧誘トラブルが急増していると警告している。
立ち止まるための、ゆるい行動ルール
気合いで見抜こうとすると疲れる。私は「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。一番効くのは、その場で決めないこと。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、大半は防げる。そのうえで、
- 並んだ実績は「自分の手で確かめられるか」を基準にする。確かめられない数字は、根拠として数えない
- 「AIが選んだ」「ランキング上位」は、選んだ過程が見えなければ判断材料にしない
- 無料の一覧から有料会員やLINEグループへ誘われたら、そこを一つの境目だと意識する
- 勧誘してくる相手が登録業者かを先に確かめ、「出金前に税金・手数料を払え」が出たら止める
うまい話だ。だが、その金の出どころを一度たどってみてほしい。並んだ★や+30%は、誰かの口座から運用益として出たものなのか、それとも新しく入った人の入金が回っているだけなのか。で、その利益の出どころは?――そこが説明されない話には、いったん近づかないでおきたい。判断に迷ったら、その場で決めず、消費者ホットライン「188」に相談してほしい。
この記事のまとめ
- 「AI厳選ランキング+利用者の売買実績」は、AI・順位・他人の数字という、自分で裏が取れない三つの権威づけを重ねる型
- 人数も成績も表示順も、見せる側が用意できる。実績の派手さではなく、登録の有無と利益の出どころを見る
対策は結局、その場で決めない・自分で確かめる・第三者に話す。確かめられない実績は、根拠として数えない。それだけでいい。