無料で配られる「あの銘柄は数倍になった」という“実績”、自分で確かめられない理由を調べた
無料で銘柄情報を配るサイトやアカウントを見ていると、決まって「過去にこの銘柄は数倍になった」という“実績”が添えてある。値上がりのチャートと、跳ね上がった株価。たしかに、あれを見せられると気持ちは動く。ただ、私が毎回引っかかるのは、その華やかな数字をこちらが後から確かめる手立てがない、という一点である。特定のサイトを名指しはしない。案件をまたいで繰り返し現れる、一つの型として書く。
なぜ“実績”はいつも華やかに見えるのか
結論から言えば、見せ方の問題だ。実績の数字そのものが嘘とは限らない。だが、見せられた数字だけでは、それが本当に「事前に・誰でも・同じように」取れた利益なのかが分からない。仕組みを二つに分けて見ておきたい。
後から「上がったものだけ」を並べられる
たとえば、ある期間に百の銘柄に触れていたとする。相場である以上、その中のいくつかは結果的に大きく上がる。終わってから振り返り、上がった数本だけを抜き出して並べれば、それは立派な“実績”の一覧になる。外れた九十数本は、そこに載らない。つまり「当てた数字」ではなく「当たった数字を後から選んだ並び」かもしれない、ということだ。見ているのは結果の一部を切り取った断面にすぎない。
「いつ・誰に・どの値段で言ったか」が抜けている
本当に再現できる実績なら、推奨した日付、そのとき提示した株価、見ていた人数、そして「いつ売ると言ったのか」までが残っているはずだ。ところが無料で配られる“実績”は、たいてい上がった後の値幅だけを示す。買い時も売り時も人数も伏せられた数字は、こちらの手元では検証できない。要するに、答え合わせの土台が最初から渡されていない。
無料の“実績”の、その先にあるもの
もう一つ見ておきたいのは、お金の流れだ。実績を無料で見せる目的は、たいてい無料のまま終わらない。華やかな数字で関心を引き、登録や会員登録へ進ませ、その先で有料の情報サービスや、個別の銘柄を助言する契約、あるいは専用の売買ツールへとつなぐ。無料の実績は、後ろにある有料への入口として置かれていることが多い。
ここで一つ、確かめやすい線がある。報酬を受けて個別の銘柄を「これが上がる」と継続的に助言する行為は、金融商品取引法上「投資助言・代理業」にあたり、登録が必要になる。金融庁は詐欺的な投資勧誘の典型として「上場確実ですので、必ず儲かります! 元本も保証します!」といったうたい文句を挙げ、詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!(金融庁)で注意を呼びかけている。「必ず」「確実」と言い切る情報は、無料か有料かを問わず、その言い切り自体を物差しにしてよい。
規模も小さくない。警察庁の令和7年の集計(暫定値)では、SNS型投資詐欺の認知件数は9,538件、被害額は1,274.7億円とされている。あくまで暫定の数字だが、入口の“実績”からこれだけのお金が動いている、という背景は頭の隅に置いておきたい。
無料の“実績”を、その場で確かめる手順
気合いで見抜こうとすると疲れる。私は「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。配られた実績を前にしたら、次の四点だけ自分に問い直してほしい。
- 外れた銘柄まで載っているか。当たった数本だけの並びになっていないか
- 推奨した日付・そのときの株価・売り時が示されているか(後出しの値幅だけになっていないか)
- 実績の先で、登録・有料サービス・助言契約・売買ツールへ進ませようとしていないか
- 「必ず」「確実」「100%」と言い切っていないか。言い切りは、その時点で物差しになる
この記事のまとめ
- 無料で配られる“的中実績”は、上がったものだけを後から選んで並べた断面かもしれない
- 推奨日・買値・売り時・人数が伏せられた数字は、こちらの手元では検証できない
- 無料の実績は、たいてい有料の助言・ツールへ進ませる入口として置かれている
確かめ方は、外れまで見せているか・いつ誰にいくらで言ったかが残っているか・その先で有料へ進ませていないか。で、その“実績”の数字は、自分の手で裏が取れるのか。――その一問が残れば、たいていの入口は静かになる。