第445号黒岩検閲済 2026年8月9日 発行(不定期刊/前号:8月9日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|ブランド便乗×使い捨て通販の型

実在ブランドのロゴを借りた『限定品』通販サイトが、運営実体不明のまま海外ドメインを使い捨てる型を、消費者庁・警察庁の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

検索結果やSNSの広告に、見慣れたブランド名やサービス名を掲げた通販サイトが表示されることがある。人気の限定品が定価よりずっと安い値段で売られていて、数量には限りがあるという。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、この「ブランドの名前を借りた通販サイト」を、お金の流れと公的機関の一次情報で調べた。今号はこの型を、代金がどこへ向かい、なぜその値段が成立するのかという数字の面から分解しておきたい。

なぜ「知っているブランド」の名前を借りるのか

見覚えのあるロゴが並んでいる。それだけで、人は警戒を緩めやすい。知っている名前を、無意識のうちに「安全の証拠」として扱ってしまうからだ。この型が利用しているのは、まさにその隙だと私は見ている。

やり方は単純である。実在するブランドのロゴや商品写真をそのまま複製し、公式に近い見た目の通販サイトを作る。消費者庁「人気アウトドア用品公式通信販売サイトを装った偽サイトに関する注意喚起」(令和4年7月28日)は、「人気アウトドア用品のブランドのロゴや商品の画像を盗用した偽サイトにおいて、商品を注文させ代金を支払わせようとする行為(消費者を欺く行為)の発生を確認した」としている。ロゴと写真を借りた時点で、サイトの見た目は本物にかなり近づく。その先の代金請求は、この借り物の信用の上に乗っている。

借りる対象は通販ブランドに限らない。警察庁「偽ショッピングサイト・詐欺サイト対策」では、「官公庁やショッピングとは無関係の企業や病院等に見せかけて、実際には金銭を要求するサイトや偽ショッピングサイト・カジノサイト等へ転送するサイトも見られます。」と説明されている。見た人が信用しそうな名前であれば、通販ブランドでも官公庁でも構わない、ということだろう。

ブランド側の許可を取る必要はなく、名前とロゴを借りるコスト自体は低い。ここが、この型が飽きられずに何度でも作り直される理由だと私は思う。

型を、お金の流れで分解する

個別の事業者名は伏せる。だが、寄せられた相談を並べてみると、流れはおおむね同じ順序をたどる。順を追って見ていく。

入口:見慣れたロゴと「数量限定」の値引き

SNSの広告や検索結果に、見慣れたブランドのロゴを掲げた通販サイトが出てくる。表示価格は、通常の相場より大きく安い。そこに「数量限定」「在庫僅少」の一言が添えられる。

判断材料が「ロゴを見たことがあるから」「安いから」の二つだけになっている時点で、一度立ち止まってほしい。なぜここまで安くできるのか、なぜ今すぐ決めなければならないのか。その理由は、どこにも書かれていない。

支払:モノが届く前に、代金だけを先に払わせる

注文の手続きに進むと、クレジットカードの決済画面か、銀行振込先の案内が出る。求められるのは、代金の先払いだけだ。この時点で、商品はまだ手元にどころか、発送すらされていない。

数日待っても発送の連絡は来ず、代わりに「欠品のため返金する」という案内だけが届くことがある。だが、その返金にも実際には応じない、という段階が続く場合がある。払った側の手元に残るのは、注文完了の画面と、応じてもらえない連絡先だけ、ということになる。

消える:運営実体はもとから確認できず、ドメインごと入れ替わる

サイトの下のほうには、たいてい会社名・所在地を記した表示欄がある。だが、そこに書かれた情報が、最初から実在しないか、確認できない場合がある。消費者庁は、こうした型のサイトについて注意喚起を出している。「限定品などの希少性の高い商品を格安で販売するかのように装った偽の通販サイトに関する注意喚起」(消費者庁・2026年8月4日)では、対象となったサイトについて「(注1)本件事業者の実体は不明です。」と明記されている。

同資料が示すチェックリストには、「日本国外のドメインが使用されている」という項目も挙がっている。見た目は日本語の通販サイトでも、URLの末尾までは確認していない、という人が多いのではないか。会社の実体を示せないまま、ドメインだけが複数用意され、一つが問題視されれば、また別のドメインに切り替わる。短期間で現れては消える、というのがこの段階の姿だ。

会社の名前も、所在地も示せないまま、なぜ取引だけは成立したことになっているのか。運営実体・所在地が確認できない、という論点は、通販サイトの型に限らない。SNS・マッチングアプリの暗号資産サイトが会社名も住所も示せなかった型でも、同じ骨格が繰り返されている。入口の見た目が違っても、誰が代金を受け取っているのか分からないまま、代金だけが先に動く、という点は共通している。

「実体が確認できない」まま、代金だけが先に動く この型の核は、見慣れたロゴと「数量限定」の値引きで足を止めさせ、会社名も所在地も確認できないまま、モノが届く前に代金だけを先払いさせることだ。支払いの前に、運営者情報を確認できるかどうか、それ自体を一度疑っていい。

その値引き率を、数字でほどく

「定価2万円の限定品が、今だけ4千円」——という例で考えてみる。2万円を4千円で割ると5になる。つまり定価の5分の1、8割引という計算になる。仕入れ値・送料・決済手数料をどれだけ切り詰めても、正規のルートで仕入れた本物をこの値で売って利益が残るとは、私には考えにくい。

使い捨てのドメインには、費用の非対称性がある。取得費用は一般に数百円から数千円程度で済み、代金を先払いする客が数人現れれば、初日で回収できる計算になる。だから、消えるのも早い。消費者庁の同じ資料でも、同一の事業者が名前やドメインを変えながら複数のサイトを使い回している実態が指摘されている。

本物のブランドがすでに正規の通販サイトを持っているなら、わざわざ別サイトを乱立させ、自ら値崩れを起こす理由がない。名前とロゴを借りるだけなら、本人の許可も、在庫も、発送体制もいらない。便乗する側が本当に欲しいのは、限定品そのものではなく、ブランド名が積み上げてきた「信用」のほうだと私は見ている。

では、その差額はどこから出ているのか。仕入れて、送っているのなら、この値段では原価割れの計算になる。だとすれば、残る可能性は多くない。で、その利益の出どころは?——そこから先は、私が断定することではない。

「返金します」と言っても、応じないというもう一段

返金保証をうたうサイトも中にはある。だが、実際に返金を申し出ると、そこで話が止まることがある。欠品を理由に返金すると言いながら、返金の手続きに本来は要らないはずのやり取りを次々と挟み、最終的には応じない——そういう型が確認されている。消費者庁「限定品などの希少性の高い商品を格安で販売するかのように装った偽の通販サイトに関する注意喚起」(令和8年8月4日)には、「欠品を理由に返金するとしながらも、返金手続に不要と考えられる対応を要求し、返金に応じませんでした」との記載がある。「返金します」という言葉が、次の要求を引き出す入口になっているということだ。

この「もう一段」は、形を変えて出てくることもある。別の型では、返金の手続きを装ってコード決済アプリの操作を持ちかけ、実際には逆に送金させる、という手口が報告されている。消費者庁「通信販売サイトの返金手続を装い、コード決済サービスを利用して、返金ではなく逆に送金させる事業者に関する注意喚起」(令和7年2月28日)によれば、「PayPayといったコード決済サービスを利用して返金手続をするかのように欺き、逆に送金させるなどし」ていたという。返金の名目で、お金が戻るどころか出ていく仕掛けである。

もう一点だけ、軽く触れておく。特定商取引法では、通信販売の広告をインターネット上で行う法人に、代表者や責任者の氏名を示す義務がある。消費者庁 特定商取引法ガイド「通信販売」には、「事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該事業者の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名」を表示すべき旨がある。会社名だけでなく、誰が代表者かも本来は示す義務がある。この空欄をそのままにした入口は、LINE副業紹介の「運営会社」欄にある住所が実体のない共用オフィスだった型とも、根の部分で重なっている。

迷ったとき用の一言 「返金します」と言われた直後に、コード決済アプリでの操作や、返金に必要とは思えない追加の手続きを求められたら、その場でスマホを操作しないでほしい。いったん切って、正規の窓口に確認してから動いても遅くない。

注文の前に、自分で確かめておきたいこと

気合いで見抜こうとすると疲れるので、私はいつも「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。注文ボタンを押す前に、次の点を確かめてほしい。

  • そのブランド・サービスの公式サイトやSNS公式アカウントから、同じ商品ページへ辿れるか確認する
  • 「会社概要」に名称・所在地・電話番号が具体的に書かれているか確認する
  • サイトのドメインが、そのブランドの公式ドメインと一致しているか確認する
  • 表示されている値引き率を、実際に割り算で確かめる
  • 支払い方法が銀行振込のみなど、クレジットカード決済以外に限定されていないか確認する

この記事のまとめ

  • 見慣れたロゴや「数量限定」の値引きは、足を止めさせるための入口にすぎないことがある
  • 運営者情報を確認できないまま代金だけを先に払わせ、海外ドメインを使い捨てながら現れては消えるのがこの型
  • 「返金します」と言われても、コード決済での追加操作を求められたら、それ自体を疑っていい

対策は、注文前に運営者情報とドメインを確かめる・極端な値引き率を割り算で確かめる、この2つに尽きる。すでに代金を払ってしまった場合は、まず追加の支払い・送金を止め、注文画面や振込明細を記録に残したうえで、支払った決済元(クレジットカード会社・銀行)にチャージバック等の可否を確認し、消費者ホットライン「188」や最寄りの消費生活センターに相談してほしい。