SNS・マッチングアプリで親密になった相手に誘われた暗号資産サイトが、会社名も住所も示せなかった型を、警察庁・金融庁・国民生活センターの一次情報で調べた
SNSやマッチングアプリで知り合った相手と、しばらくやり取りを重ねたあと、投資の話を持ちかけられた——という相談が、ここ数年で目に見えて増えている。特定のアプリ名・相手の名は挙げず、案件をまたいで繰り返し報告されるこの型を、お金の流れで調べた。相手が悪い人間かどうかを見抜こうとするより先に、案内される「取引先」そのものを確かめる。今号はこの件を洗いました。(黒)
どんな流れで話が進むのか
典型的な流れはこうだ。SNSかマッチングアプリで知り合い、しばらくは投資と関係のないやり取りが続く。世間話や近況報告を重ねて、警戒心がゆるんだころに、連絡先をLINEなど別のアプリへ移すよう提案される。国民生活センターの資料でも、「マッチングアプリから早々にLINE等のSNSへ変更を提案」という導線がはっきり指摘されている(「愛してるから投資して」っておかしくない!? 国民生活センター・2022年)。
LINEに移ったあとは、個別のやり取りという体裁になる。第三者の目が入りにくくなり、相談しづらくなる。ここまでは、まだお金の話は出てこないことが多い。つまり、投資の勧誘そのものより先に、「連絡経路を一対一に絞る」段階があるということだ。
誘われる先の「取引所」を確かめてみる
親密になった相手から、暗号資産の取引サイトを紹介される。スクリーンショットでは残高が増えていくように見える。ただ、私が気になるのは画面の数字より先に、そのサイトの「会社概要」だ。運営会社名、所在地、電話番号——確かめようとすると、たいてい何も出てこない。
暗号資産を交換業として扱うなら、本来は登録が要る。国民生活センターの資料も、その点を脚注で明記している。「暗号資産交換業者は金融庁・財務局への登録が義務付けられており、FX等の金融商品取引を業として行う場合は、金融商品取引業の登録が必要です。マッチングアプリ等で知り合った相手から紹介される投資の運営会社は、これらの登録が確認できない場合が多くあります」とのことだ(前掲・国民生活センター)。
金融庁も、海外に所在する無登録業者が日本語のサイトで勧誘する例に、以前から注意を促している。「金融商品取引法に基づく登録を受けていない海外所在業者が、インターネットに日本語ホームページを開設する等により、外国為替証拠金取引(FX取引)や有価証券投資等の勧誘を行っている例が見受けられます」という(「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」金融庁)。
金融庁は無登録業者の一覧も公表している。ただし、この一覧は「確認できたものを載せているだけ」であって、載っていない業者が無登録でないことの証明にはならない。金融庁自身が「掲載されている無登録業者は、警告書の発出を行った時点で(中略)無登録で暗号資産交換業を行っていることが確認できた者です。そのため、掲載されていない者であっても、無登録交換業に該当する行為を行っていることがあり得ますのでご注意ください」と注記している(「無登録で暗号資産交換業を行う者の名称等について(国内)」金融庁)。つまり、リストに載っていないから安全、とはならない。会社名・所在地・電話番号を自分で確かめられるかどうか。それが最初の分かれ目になる。
出金しようとした時に、何が起きるか
画面上の残高は増えていくのに、実際に引き出そうとすると壁が出てくる。「税金」「手数料」「保証金」といった名目で、追加の入金を求められる型だ。金融庁の相談事例には、「口座凍結を解除するためと称して、手数料、保証金や税金の支払いといった名目で、さらに高額な入金(被害者が認識させられている財産額の2~3割程度であることが多い。)を要求されるケースが多くみられます」という記載がある(「投資詐欺等に関する利用者からの相談事例等」金融庁)。
国民生活センターに寄せられた相談にも、似た経過が記録されている。「暗号資産の引き出し等を行うには、約75万円の暗号資産を支払う必要があるが、のちに返金すると言われたので、送金したところ、サイトから、受領のメールと72時間以内に返金するとの通知が届いたが、返金されない」というものだ(「出会い系サイトやマッチングアプリ等をきっかけとする投資詐欺にご注意を」国民生活センター・2021年)。「あと少し払えば全額戻る」という説明が続く。ここで一度払ってしまうと、次の名目が出てくる——というのがこの型の骨格だ。順番に払い続けるほど、後戻りしにくくなる。
数字で見る、この型の広がり
個別の体験談ではなく、まず件数を見ておきたい。警察庁の集計では、「令和6年のSNS型投資詐欺の認知件数は6,413件(+4,142件、+182.4%)、被害額は871.1億円(+593.2億円、+213.4%)と、認知件数、被害額ともに前年から大きく増加」しているという(「特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」警察庁・2025年)。
マッチングアプリ関連に絞った消費生活相談の件数も、国民生活センターの資料では2018年度の45件から2022年度には年間1,000件を超える水準まで増えている(2020〜2022年の推移で見ても、明確な増加傾向にある。前掲・国民生活センター)。警察の認知件数と消費生活相談の件数は集計の性質が違うので単純比較はできないが、どちらの統計を見ても、この型が珍しい例ではなく、繰り返し起きているパターンだと分かる。
- 相手の会社名・所在地・電話番号を、公式の登録情報で確認できるか
- 暗号資産交換業者としての登録が金融庁・財務局で確認できるか
- マッチングアプリからLINE等への移行を急がれていないか
- 出金の前に「税金」「手数料」「保証金」名目の追加入金を求められていないか
- 「あと少しで全額戻る」という説明を、自分以外の誰かに確認してもらったか
この記事のまとめ
- SNS・マッチングアプリでの親密化→LINE誘導→暗号資産サイトへの投資、という流れは統計上も増えている型
- 運営会社名・所在地・登録の有無を自分で確かめられるかが、最初の分かれ目になる
- 出金前の「税金・手数料」名目の追加請求は、この型に共通する赤信号
すでに払ってしまった場合は、これ以上払わないことを先に。警察相談専用電話「#9110」、消費者ホットライン「188」、金融庁の金融サービス利用者相談室など、正規の窓口に一度話してほしい。