SNSやマッチングアプリで親密になった相手から投資アプリへ誘われ、出金時に手数料・税金名目の追加送金を求められる型を、警察庁・金融庁の一次情報で調べた
SNSのDMやマッチングアプリで知り合った相手と、しばらくやり取りを重ねる。会話の途中で「私もやっている投資がある」と持ちかけられ、案内された専用アプリに登録する。最初のうちは小さな額を入れても出金でき、残高は画面の上で増えていく。まとまった額を入れたところで、「手数料」「税金」「保証金」といった名目の追加送金を求められ、そこから先へ進めなくなる——特定のアプリ名・相手の名は挙げず、案件をまたいで繰り返し報告されるこの型を、お金の流れで調べた。
なぜ「親密な関係」から始まるのか
いきなり投資の話をされたら、たいていの人は警戒する。だから最初は投資と関係のない会話から入り、時間をかけて信頼を積む。金融庁も、こうした勧誘は「SNS・マッチングアプリ等で知り合った者」や「著名人を騙る者」から始まると注意を呼びかけている(「SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください!」金融庁)。関係ができてから持ちかけられる話は、見知らぬ広告よりも疑いにくい。その「疑いにくさ」自体が、この型の一段目だと私は見ている。
型を、お金の流れで分解する
個別の相手・アプリ名は伏せる。だが、寄せられる話を並べると、流れはおおむね同じ順序をたどる。
入口:SNS・マッチングアプリでの関係づくり
投資と関係のない会話を重ね、相手との距離を縮める。ここではまだ、お金の話は出てこない。
一段目:専用アプリへの誘導と少額の出金
「自分もやっている」として専用の投資アプリ・取引画面へ案内される。少額であれば出金できた、という体験談も少なくない。ここで一度成功体験を持たせる、という手口も報告されている(本紙による個別事案の裏取りは行っていない)。
二段目:まとまった額の入金
画面上の残高が増えていくのを見て、入金額を引き上げる。この時点まで、出金自体に大きな支障は出ない場合が多いという。
三段目:出金時の「手数料」「税金」名目の追加送金要求
まとまった額を出金しようとした段になって、「手数料」「税金」「保証金」などの名目で、別途の入金を求められる。警察庁は手口の一例として、「保証金が必要です」「この手続きには税金として●%の額がかかります」などと言われ、指定口座へ複数回振り込んでしまったケースを紹介している(警察庁 SOS47「SNS型投資詐欺」手口紹介)。金融庁も同様に、「出金時に高額な手数料や税金の支払いといった名目の口座入金を要求され、入金した直後に連絡が取れなくなる」ケースがあるとしている(前掲・金融庁)。
被害の規模を、数字でほどく
警察庁の確定値によると、令和7年(2025年)中のSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は9,523件、被害額は1,288.0億円で、いずれも前年より増加している(「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」警察庁)。単純に件数で割ると、被害額は1件あたり平均で1,000万円を超える計算になる。少額の出金を経てから大きな入金に進む、という流れの中で、被害が大口化しやすいことがうかがえる。
この型を後押ししているのは、著名人へのなりすましだ。国民生活センターによれば、著名人を名乗る・つながりがあるなどとして勧誘される金融商品トラブルの相談は、2021年度52件から2023年度には1,629件へ急増した(「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」国民生活センター・2024年5月29日)。関係を装う相手が実在の著名人本人とは限らない、という前提を持っておく必要がある。
「登録業者かどうか」という、もう一つの確認軸
金融庁は、日本で登録を受けずに金融商品取引業・暗号資産交換業を行うことは違法であり、無登録業者は「投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず」、出金拒否や法外な手数料請求のトラブルが多く寄せられていると説明している(「無登録業者との取引は要注意!!」金融庁)。案内された取引アプリ・会社名は、金融事業者一括検索(金融庁)で登録の有無を確かめられる。ただし金融庁自身が「掲載されていない者でも、無登録営業に該当する行為を行っていることがあり得る」と留保している通り、検索に出てこないことは安全の証明にはならない。あくまで一つの確認材料として使いたい。
すでに追加送金を求められている、または応じてしまった方へ。
- 「手数料」「税金」「保証金」名目の追加入金は、これ以上止める
- 案内された事業者名を金融庁の登録業者検索で確認する
- 振込先が個人名義の口座になっていないか確認する
- クレジットカードや銀行など、決済元に事情を連絡する
- 消費者ホットライン「188」や最寄りの警察相談窓口に相談する
この記事のまとめ
- SNS・マッチングアプリでの関係づくり→専用アプリでの少額出金→まとまった入金→出金時の手数料・税金名目の追加送金要求、という型がある
- 令和7年のSNS型投資・ロマンス詐欺は認知件数9,523件・被害額1,288.0億円で前年より増加(警察庁)
- 案内された事業者は登録業者検索で確認できるが、載っていないことが安全の証明にはならない
親密な関係の中で持ちかけられる投資話ほど、いったん切り離して考える。追加の送金を求められた時点で、まず立ち止まりたい。