「資産が毎日増える」投資アプリで、出金時に税金や保証金を求められる型を、お金の流れで調べた
スマホの画面に毎日数字が増えていく。預けたお金が「10%増えました」と表示され、グラフは右肩上がり。ところが、いざ引き出そうとすると「税金を先に払ってください」「出金には保証金が要ります」と、追加の振込を求められる――そういう相談が各地の消費生活センターや警察に数多く寄せられている。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、その「増える画面」と「出せないお金」のあいだで何が起きているのかを、お金の流れと公的データから調べた。
なぜ「画面の数字」だけは増え続けるのか
まず押さえておきたいのは、アプリやサイトに表示される数字は、運営する側がいくらでも書き換えられる、ということだ。本物の取引所につながっている保証はどこにもない。こちらから見えるのは「増えました」という表示だけで、その裏で実際に資産が運用されているかどうかを、利用者の側から確かめる方法がない。
増える数字は信用をつくるための演出で、引き出せるかどうかとは別の話だ。だから「増えている」ことそのものは、安全の根拠にはならない。むしろ、自分で裏が取れない数字を見せられている時点で、一拍おいたほうがいい。
お金の流れで見ると、入口は広告、出口は無い
この型は、入口から出口までおおむね同じ順序をたどる。第一に、SNSやネット広告で接触する。著名人や有名企業の名前・写真を無断で使い、「この人が勧める投資」と思わせる作りが多い。消費者庁は、こうした著名人・有名人になりすましたと考えられる事例が令和5年度下半期以降、増加傾向にあると注意喚起している。
第二に、広告からLINEのグループやチャットへ誘導する。そこには数十人から数百人が参加しているように見え、「自分も増えた」という報告や利益画面が次々と流れてくる。だが、その多くは演者(サクラ)役で、焦りと同調圧力をつくるための舞台装置だと考えていい。みんなが儲けている場所に見えるほど、断りづらくなる。その「断りづらさ」こそが狙いだ。
第三に、専用アプリや、本物そっくりの偽サイトへ入金させる。実在する登録番号や会社名を盗用して載せ、いかにも正規業者のように見せることもある。ここで初めて、冒頭の「毎日増える画面」が動き出す。被害の規模は小さくない。警察庁によれば令和7年のSNS型投資詐欺の認知件数は9,538件、被害額は1,274.7億円にのぼる(暫定値)。一件あたりにすると、生活を揺るがす金額だ。
出金しようとすると「税金」「保証金」を求められる
そして出口で、流れは逆を向く。これまで増え続けていた画面から、いざお金を引き出そうとすると、急に条件が付く。金融庁は無登録業者とのトラブルとして、これまで出金できていたにもかかわらず、出金の拒否や法外な出金手数料を請求されるケースを挙げている。
名目は「税金」「保証金」「手数料」とさまざまだが、共通しているのは、出金のためにさらに入金を求めてくる点だ。金融庁も、FX取引や暗号資産投資の勧誘で出金の際に税金等の名目で高額な金銭を要求される手口に注意を呼びかけている。払えば次の名目が出てくるだけで、増えた数字が手元の現金になることはない。で、その利益の出どころは?――新しく振り込む人のお金から、先に振り込んだ人へ「成功談」を見せている、というのがこの型の素朴な答えだ。
振り込む前に、確かめられること
幸い、入金してしまう前なら、自分の手で確かめられる事実がいくつかある。一つは、相手が本当に登録された業者かどうか。金融庁は2026年1月から「金融事業者一括検索機能」の運用を始めており、業者名を入力して登録の有無を照合できる。あわせて無登録で金融商品取引業を行うとして警告書が出された業者の名称も公表されている。広告に載っている番号や社名を、そのまま信じる前にここで照らし合わせたい。
もう一つは、振込先の名義だ。消費者庁ははっきりと、投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合、それは詐欺なので振り込まないように、と述べている。正規の金融事業者が、個人名義の口座に投資資金を振り込ませることはまずない。サイトの見た目や登録番号の表示よりも、「どこのドメインか」「誰の名義の口座か」という地味な事実のほうが、ずっと正直だ。
- アプリやサイトに表示される「増えた数字」は、自分で裏を取れないかぎり根拠にしない
- 業者名・登録番号は、金融庁の一括検索と無登録業者リストで自分の手で照合する
- 振込先が個人名義なら、その時点で振り込まない
- 「出金には税金・保証金が必要」と追加入金を求められたら、応じずに記録を残す
この記事のまとめ
- 「毎日増える画面」は運営側が書き換えられる演出で、出金できるかとは別物
- 入口は著名人なりすまし広告とサクラのグループ、出口は「税金・保証金」名目の追加入金要求に集まる
- 振り込む前に、登録業者かを照合し、振込先が個人名義でないかを確かめる
増える数字より、登録の有無と振込先名義という地味な事実を先に見る。出すために入れろと言われたら、そこで止める。それだけで、この型の多くは防げる。