「マッチングアプリで知り合った人に投資を勧められた」——その流れ、数字で追うとどうなるか
「マッチングアプリで知り合った人と、毎日やり取りしている。最近、投資を勧められて少し始めてみた」——こういう相談が、ここ一、二年で本当に増えました。本紙はこの手の話を名指しで「詐欺だ」と決めつける立場は取りませんが、ひとつだけ先に言っておきます。この型は、いま日本でいちばんお金が消えている入口のひとつです。煽るためではなく、数字がそう言っているので、淡々と追ってみます。
まず、規模の話から。これは「珍しい話」ではない
警察庁の確定値によると、令和6年(2024年)のSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は10,237件、被害額は1,271.9億円。前年からそれぞれ+166.2%、+179.4%という増え方です(出典:警察庁「特殊詐欺の認知・検挙状況等について」掲載の確定値)。1年で件数も金額も2倍以上。これは、ごく一部の不運な人だけの話ではなくなっている、ということです。
「自分は恋愛で浮かれたりしないから大丈夫」と思う方もいるでしょう。が、この型は恋愛感情だけを狙うわけではありません。SNS広告から「投資グループ」に招かれる入口もあって、警察庁はこの両方をまとめて統計に入れています。入口は違っても、出口は同じところへ向かいます。
出会いから出金不能までを、ひとつながりで見る
警察庁が公開している手口の流れを、私のほうで段階に分けて並べ直すと、だいたいこうなります(出典:警察庁SOS47「SNS型投資詐欺」/同「SNS型ロマンス詐欺」)。
- SNSやマッチングアプリで接触し、別のチャットアプリへ移動を促される
- 恋愛感情や信頼を時間をかけて育てる(あるいは「儲かっている」投稿で気を引く)
- 投資サイト・アプリを案内され、勧められる
- 最初のうちは利益が出ているように見え、少額なら出金もできる
- 安心したころに高額の入金を促される
- 大きく出金しようとすると、手数料・保証金・税金などの名目で、さらに送金を求められる
- 結局出金できず、相手と連絡が取れなくなる
ここで立ち止まりたいのが、4番目の「少額なら出金できる」という段階です。これは親切でも好意でもなく、信用させるための仕掛けです。金融庁も相談事例の中で、「しばらくは利益が出たように装い、少額の出金ができることもありますが、安心、信用して高額な入金をしたり、高額な出金要請をすると、突然、連絡が取れなくなったり」と、はっきり書いています。最初の小さな成功は、次の大きな入金を引き出すための撒き餌、という構図です。
なぜ「画面の利益」は当てにならないのか
勧誘で見せられる取引画面は、相手側が用意したものです。残高も、グラフも、約定履歴も、表示そのものは自由に作れます。こちらからは、その数字が本当の市場取引に裏打ちされているのかを確かめる手立てがありません。自分で検証できない利益は、根拠としては限りなくゼロに近い——ここは何度でも言います。儲かっている「ように見える」ことと、儲かっていることの間には、まだ何の証明もありません。
もうひとつ、最近は翻訳アプリや生成AIで、会ったことのない相手が別人になりすますことも簡単になりました。警察庁も「会ったことがないのに、投資や結婚費用等の名目で金銭等を要求された場合は、詐欺を疑ってください」と注意しています。顔写真も、流暢な日本語も、もはや「本人である証拠」にはなりません。
巻き込まれないための、地味な確認
気合いで見抜こうとすると続かないので、いつものクセにしてしまうのがいちばんです。私が読者の方にお伝えしているのは、次のあたりです。
- 会ったことのない相手から投資・送金の話が出たら、その時点で一拍おく
- 「少額なら出金できた」を、信用してよい理由にしない(むしろ典型的な段階だと思う)
- 見せられた利益画面は、自分で裏が取れるかどうかだけを基準にする
- 送金の前に、利害のない家族・友人に一度だけ声に出して話す
- 「手数料を払えば出金できる」と言われたら、そこはもう引き返す地点だと考える
この記事のまとめ
- SNS・マッチングアプリ経由の投資勧誘は令和6年に1万件超・1,271億円超まで急増した(警察庁確定値)
- 「最初は少額出金できる」は信用させるための段階。画面の利益は自分で裏が取れないかぎり根拠にならない
- 会ったことのない相手の送金話は一拍おく。送ってしまったら追加で払わず #9110/188 へ
結局のところ、判断基準はいつもの一行に戻ります——「で、その利益の出どころは?」。それが言えないうちは、まだ動かない。