第390号黒岩検閲済 2026年7月25日 発行(不定期刊/前号:7月25日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|生成AI副業入口×電話勧誘×個別ローンの型

「未経験でも月30万円」をうたうAI副業が、電話勧誘を経て年35万円のローン契約に変わる型を、消費者庁・国民生活センターの一次情報で調べた

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黒岩警戒度

特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、生成AIの記事をコピペするだけで稼げるとうたう副業勧誘を、お金の流れで調べた。「未経験でも月30万円」「スマホで生成AIの記事を貼るだけ」とうたう広告は、経験も準備もいらないという、参入のハードルの低さだけを前面に出している。広告のどこを見ても、運営している会社の名前は出てこない。

申し込むと、まず公式LINEへの登録を求められる。そこから先の説明は電話に切り替わり、個別説明という名目で年額35万円ほどのプランへの契約を勧められる。手元にその額を用意できないと答えると、個別信用購入あっせん——分割で支払うローンを組む案内が出てくる。その返済の原資として当てにされているのは、まだ手にしていない、この副業からの将来の収入である。

なぜ入口を「AIが書くから簡単」にするのか

生成AIという言葉は、この数年で一気に日常語になった。この副業勧誘の型は、その新しさをそのまま入口に使う。「文章を書いた経験がなくても、AIが書いた記事を貼るだけでいい」と言われれば、参入の心理的なハードルはぐっと下がる。ここまでは、悪いことではない。

ただし、商売である以上、どこかで誰かが代金を払っている。未経験でも月30万円という数字が、本当にコピペだけの軽い作業から出るのなら、なぜそれをわざわざ他人に教える必要があるのか。教えること自体が商売になっている、と見たほうが自然である。

気になるのは、入口を軽くする話法が、運営者名を明かさない姿勢とセットで出てくることが多い点だ。広告に会社名がないこと自体は、即座に違法とは言い切れない。だが特定商取引法ガイド「通信販売」(消費者庁)によれば、通信販売の広告には事業者の氏名または名称、住所、電話番号を表示する義務がある。「簡単」「未経験でも」という言葉だけが並び、運営者の名前が抜け落ちている広告には、まず名前を確かめてほしい。

同種の勧誘には、公的機関からも注意が呼びかけられている。「簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者に関する注意喚起」(消費者庁・2025年6月26日)では、「『アフィリエイトは初心者でも簡単に稼ぐことができる』『このプランなら月50万が当たり前になる』『儲けが出なければ返金保証がある』などと勧誘」する事例が挙げられている。手法の骨格は、生成AIを謳う勧誘とほぼ重なる。で、その利益の出どころは?——そこを明かさないまま「簡単」だけを強調する入口には、注意を向けてほしい。

型を、お金の流れで分解する

個別の広告主・運営者名は伏せる。だが、寄せられた相談を並べていくと、流れはほぼ同じ順序をたどる。段階を追って見ていく。

入口:「未経験でも月30万円」「AIの記事をコピペするだけ」、運営者名のない広告

SNS上の広告に、「未経験でも月30万円」「AIの記事をコピペするだけ」といった文言が並ぶ。仕事の中身は「コピペ」の一語で説明され、それ以上の具体性はない。広告のどこを見ても、運営している事業者の名前は出てこない。国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル」(国民生活センター発表情報・2024年9月4日)でも、「簡単に稼げる」という入口の強調は、この種のトラブルに共通する特徴として指摘されている。

申込:公式LINEへの登録と、電話での個別説明

広告から進むと、まず公式LINEへの登録を求められる。名前とLINEアカウントを渡すだけで、この段階では金額の話はまだ出てこない。仕事の詳しい内容は、その後の電話で個別に説明する、という運びになる。国民生活センター「消費生活センターにおける解決困難事例の研究~起業・副業をめぐる消費者トラブルの被害救済を中心に~」(2023年3月)には、「『定型文を送信するだけで月に100万円から200万円稼げる』というSNSの広告を見て副業サイトにアクセスし、ノウハウが記載された情報商材を購入した。すると業者から電話があり」という一節がある。

請求:年額35万円規模のプランと、個別信用購入あっせんの案内

電話の先で、年額35万円規模のプラン契約が案内される。手元に現金がなければ、個別信用購入あっせん——分割払いでローンを組む契約——を勧められることもある。消費者庁「『タスク副業』で報酬が支払われるとうたい、実際には高額を送金させる事業者に関する注意喚起」(2025年2月6日)でも、SNSでの勧誘からメッセージアプリでの個別のやり取りへ進み、そこで高額な送金や契約が持ちかけられる段階構造が指摘されている。無料をうたう広告の先に、いつのまにか年単位の支払い契約が置かれている。

「AIが書くから簡単」の出どころ この型の核は、生成AIという新しい言葉で入口の心理的なハードルを下げつつ、広告のどこにも運営者名を出さない設計になっていることだ。運営者が分からないまま公式LINEへ登録させ、電話という記録に残りにくい場で支払い能力を見極め、まとまった額のプランへ進める。順番が「匿名の入口、後から個別の高額請求」になっている勧誘は、それ自体を一度疑っていい。

「未経験でも月30万円」を数字でほどく

「未経験でも月30万円」。うますぎる数字は、まず割り算で確かめたい。

電話で示されるプラン代は35万円だという。もし本当にこの副業で月30万円を稼げるなら、35万円を30万円で割って約1.17。1か月と少し働けば、プラン代は回収できてしまう計算になる。そんなに早く元が取れる話を、なぜ自分ひとりで続けず、年35万円を払わせてまで他人を集める必要があるのか。ここに、まず引っかかりを覚える。

35万円を一括で払えない人には、分割払い(ローン)が案内されることがある。12回払いにすると、35万円を12で割って月々約29,167円。実際にはここに分割手数料が上乗せされるため、負担はこれより重くなる。

この毎月の支払いの原資として説明されるのが、まだ手にしていない、この副業からの将来の収入だという。稼げるかどうかを確かめる前に、稼げる前提で毎月の支払いだけが先に始まる。そういう順序になっていないか、契約の前に確かめておきたい。

こうした形で消費者金融からの借入れを勧められる例は、公的資料にも記録がある。「消費生活センターにおける解決困難事例の研究」(国民生活センター・2023年3月)には、「支払いは『消費者金融の無利息の期間に返済できるから心配ない』と30日間無利息の消費者金融から借金するよう勧められた」という事例が載る。同資料では、契約や解約をめぐって消費者金融やクレジット会社への支払いを強く求める「クレ・サラ強要商法」の相談割合が、2021年度の8.7%から2022年度には13.3%へ増えているとも整理されている。

返済の原資が、まだ稼いでいない収入だという設計 ローンを組ませる場面で、その返済の原資として説明されるのは、多くの場合、この副業自体からのまだ手にしていない将来の収入である。稼げるかどうかが分かる前に、支払いだけが先に確定する。この順番になっている勧誘は、それ自体を一度疑っていい。

で、その返済の原資は?——副業が思うように稼げなかったとき、月々の支払いはどこから出てくるのか。ここは契約の前に、答えを自分の言葉で言えるかどうか、確かめておきたい。

迷ったとき用の一言 電話の場で「では今日、契約書にサインを」と言われても、その場でローンの契約をしないでほしい。「いったん持ち帰って、家族に相談してから返事をします」——それだけで、たいていは一呼吸置ける。

運営実態は、どこまで確かめられるか

電話での個別説明が終わり、年額35万円規模のプランへ話が進む段になると、次に気になるのは「この契約は、誰との間で結ぶことになるのか」という点だ。広告の時点で、運営している会社の名前がどこにも書かれていないことがある。それを見落としていい情報だとは、私は思わない。

通信販売や、業務提供誘引販売取引——仕事を紹介する見返りに、その仕事に必要だとして商品や役務の代金を負担させる取引の型——に当たりうる勧誘には、事業者の氏名(名称)・住所・電話番号等を表示する義務がある。「業務提供誘引販売取引」(消費者庁・特定商取引法ガイド)は、勧誘に先立って事業者の氏名(名称)を告げるよう義務付けている、と説明している。ここでいう名称は、法人であれば登記簿に登録された正式な名前を指すのであって、普段使っているサービス名や、通称・屋号だけでは、この義務を満たしたことにならない——と私は理解している。

広告に会社名が出ておらず、公式LINEに登録して初めて名乗られる——という順番になっている場合、氏名等の明示義務は、まだ実質を伴っていないと言っていいだろう。勧誘に先立って名乗る、という順番そのものが崩れているからだ。

契約が進み、振込の案内が来たとき、もう一つ確かめておきたい点がある。契約書に書かれた事業者名と、実際の振込先の口座名義が違う、という相談が寄せられることがある。

振込先の名義そのものについて、公的機関が統計を出しているわけではない。ただ、事業者には氏名(名称)を明示する義務がある、という先の話と重ねて考えたい。契約書の名前と、振込先の名前が違う状態は、その義務がどこまで実質を伴っているのかを疑わせる。一つの兆候として、覚えておいていいと私は思っている。

私見だが、契約書に書かれた事業者名と、実際の振込先の名義が違う——これは副業の勧誘に限った話ではない。名義が合っているかどうかは、業種を問わず確認していい線引きだと私は思っている。

振込先の名義については、以前の号でも、同じ角度から調べたことがある。あのときも、案内された事業者名と振込先の名義の一致は、契約前に自分の目で確かめられる、数少ない手がかりの一つだった。

この型の契約が業務提供誘引販売取引に当たる場合、一定期間は無条件で契約を解除できる。同ガイドによれば、法律で定められた書面を受け取った日から20日間、クーリング・オフ——契約を白紙に戻せる仕組み——を使える、とされている。

ここで見落とされがちな点がある。クーリング・オフパンフレット(消費者庁・2023年6月)は「書面に不備がある場合、正しく記載された書面を受け取ったとはいえません」としている。渡された契約書面に不備があれば、20日間の数え始めは、まだ始まっていないことになる。日にちが経っていても、まず書面を見直してほしい。

すでに契約・入金してしまった方へ

すでに公式LINEに登録し、電話での説明を受け、契約やローンの手続きまで進んでしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わない・これ以上借りないことが先だ。順序はこうなる。

  • 追加で支払わない・追加で借りない
  • 勧誘のやり取り(LINEのメッセージ・電話の日時・契約書面)の記録を残す
  • 支払った決済元(信販会社・クレジット会社)に状況を連絡する
  • 消費者ホットライン「188」や最寄りの消費生活センターに相談する

年額のプランを個別信用購入あっせん――販売店に代わって信販会社が代金を立て替え、購入者が信販会社へ分割で返していく仕組み――で契約している場合、元になった契約がクーリング・オフや取消しの対象であれば、クレジット契約のほうもあわせて解除できることがある。契約の類型によって使える制度や期間は変わるため、ここは自分で判断せず、事実関係を窓口に伝えて確認してほしい。

相談先がすぐに分からなければ、消費者ホットライン「188」(消費者庁)から最寄りの窓口につないでもらえる。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

この記事のまとめ

  • 「未経験でも月30万円」「スマホで生成AIの記事をコピペするだけ」という入口の軽さと、運営会社の名前がどこにも見当たらないことは、同じ広告のなかで同時に成立していることがある
  • 電話での個別説明のあとに示される年35万円規模のプランは、個別信用購入あっせん(ローン)での支払いに進むことがあり、その返済原資として、まだ稼いでいないこの副業自体の将来収入が想定されている場合がある
  • 特定商取引法に基づく表示義務やクーリング・オフの権利、契約書に記された名称と実際の振込先の口座名義が一致しているかは、契約の前後を問わず自分の目で確かめておきたい

稼げるかどうかを確かめる前に、稼げる前提で支払いだけが先に始まっていないか。まずそこを、自分の言葉で確かめてほしい。(黒)