第377号黒岩検閲済 2026年7月23日 発行(不定期刊/前号:7月23日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|低額教材×電話勧誘アップセルの型

LINEで届く数千円の副業ガイドブックが、電話勧誘で数十万円のサポートプラン契約に化ける型を、消費者庁の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。SNS広告から「スマホ1台でできる」というLINE登録へ誘い、数千円ほどの副業ガイドブックを買わせたあと、電話でもっと稼げるプランへ話を進めていく。入口の金額と出口の金額の差が大きすぎる、この型を今号は洗った。(黒)

「数千円」で最初の一歩を踏ませる

この型の入口は軽い。SNS広告に「スマホ1台でOK」「初心者歓迎」とあり、そこからLINE登録へ誘導される。登録した相手に案内されるのは、いきなり高額な契約ではなく、数千円程度の「ガイドブック」や「マニュアル」だ。

金額そのものは小さい。だが、一度お金を払って商品を受け取るという体験は、次の提案を「知らない相手からの話」ではなく「もう取引したことのある相手からの話」に変える。ここで作られているのは、教材の中身そのものより、この後に続く提案を聞く姿勢だと私は見ている。

電話勧誘で、話の桁が変わる

ガイドブックを受け取ったあと、電話がかかってくる。ここで示されるのが、数十万円から数百万円規模のサポートプラン契約だ。最初の広告にもガイドブックにも、この金額は出ていない。

電話という、書面より先に口頭の説明が来る場は、冷静に比べる時間を奪う設計になっている。数千円で始まった話が、電話一本で桁の違う金額に変わる。この落差そのものが、この型を見分ける一番分かりやすい手がかりだ。

こうした勧誘の電話は、特定商取引法が定める「電話勧誘販売」という取引類型に当てはまりうる。

電話勧誘販売の定義 「販売業者又は役務提供事業者が、消費者に電話をかけ、又は特定の方法により電話をかけさせ、その電話において行う勧誘によって、消費者からの売買契約又は役務提供契約の申込みを(中略)受け、又は契約を締結して行う商品、権利の販売又は役務の提供」——消費者庁「特定商取引法ガイド-電話勧誘販売」より

消費者庁が、同じ型を繰り返し公表している

で、その利益の出どころは?――この型については、消費者庁がすでに何度も同じ構造の事業者を名指しして注意喚起を出している。私が個人的にそう見ているだけの話ではない。

2021年の注意喚起 「写真を貼り付けるだけの簡単な作業で儲かるとする、いわゆる副業ビジネスを紹介するLINEメッセージなどをきっかけに、最初に7,000円程度のテキスト教材を購入させた後、電話勧誘により、著しく高額な金銭を支払わせる」——消費者庁「写真を貼り付けるだけの簡単な作業で儲かる副業ビジネスを紹介するとして7,000円程度のテキスト教材を消費者に購入させ、その後に電話勧誘により著しく高額な金銭を支払わせる事業者に関する注意喚起」(2021年11月19日)より

入口の金額こそ違え、「低額の教材→電話勧誘での高額契約」という骨格は、今回調べた型とそのまま重なる。しかも、この注意喚起は一度きりではない。2025年にも、同じ骨格を持つ事例が公表されている。

2025年の注意喚起 「このプランなら、月50万が当たり前になる」「儲けが出なければ返金保証がある」などと勧誘を受け、高額なサポートプランの契約をしたが、報酬が得られなかった——消費者庁「簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者に関する注意喚起」(2025年6月26日)より

消費者庁は、こうした行為を「消費者の利益を不当に害するおそれのある行為(誇大な広告・表示、断定的判断の提供)」として扱っている。「月50万が当たり前」のような、確かめようのない収入を断定的に語る話法そのものが、行政の注意喚起の対象になっているということだ。

体験談で背中を押す、もう一つの仕掛け

金額の提示と並行して使われるのが、一部だけ抜き出した成功体験談だ。「実際にこれだけ稼げた」という声を見せられると、自分もそうなれるかもしれないという期待が先に立ち、断定的な数字への疑いが後回しになりやすい。体験談は個別の実例であって、契約者全体の平均でも保証でもない。ここも、断定的な収入提示と同じ根で捉えておきたい。

相談件数は、高止まりしたままだ

こうした高額な副業契約に関する相談は、件数として見てもかなりの規模で続いている。

情報商材の相談件数 PIO-NET登録件数(情報商材)2022年度7,000件、2023年度6,256件、2024年度4,118件——国民生活センター「情報商材(各種相談の件数や傾向)」より

件数はここ数年で減少傾向にはあるものの、なお年間数千件の水準で相談が寄せられている。「もう古い手口だから今は大丈夫」とは言えない数字だと私は見ている。

迷ったとき用の一言 数千円で始まった話のはずが、電話一本で桁が変わった。そこに気づいた時点で、いったん電話を切っていい。「いったん持ち帰って調べます」を、電話口でこそ使ってほしい。
  • 広告やガイドブックに書かれていない金額を、電話でその場で提示されていないか
  • 「月◯万円」という数字に、確かめられる根拠が添えられているか
  • 見せられた成功体験は、自分の手で裏づけを取れるものか
  • 電話の場で即決せず、契約書面を持ち帰って読む時間を取っているか
  • 家族や友人など、利害のない誰かに一度話してみる

この記事のまとめ

  • LINE登録後に数千円の副業教材を買わせ、電話勧誘で数十万〜数百万円のサポートプラン契約へ進める型がある
  • 消費者庁は、ほぼ同じ骨格の事業者について2021年・2025年と繰り返し注意喚起を出している
  • 「月◯万円が当たり前」のような断定的な収入提示は、行政が問題視してきた話法そのものだ

入口の金額と出口の金額の差が大きいと感じたら、その違和感を先に信じてほしい。(黒)