「無料の副業診断」がLINE登録から高額契約に変わる勧誘の型を、お金の流れで調べた
「いくつかの質問に答えるだけで、あなたにぴったりの副業が無料で分かります」――そう案内する診断サイトがある。診断そのものは無料で、答えるのも数分だ。だが、結果が出たと思ったら、その先はLINEの友だち登録になっている。診断の中身も、誘い先の名も案件ごとに違っても、お金の流れだけを抜き出すと、よく似た一つの型に収まる。特定の事業者は名指しせず、この「無料診断を入口にして、その先で課金させる」型を、数字と仕組みからほどいた。
なぜ「診断」という入口を使うのか
診断は、手軽で、断りにくい。占いに近い気軽さで質問に答えていくうちに、こちらの状況――いくら稼ぎたいか、いま貯金はどれくらいか、家庭の事情はどうか――を少しずつ差し出してしまう。集めているのは、相性のいい仕事ではなく、勧誘の材料のほうだ。
そして、よく観察すると、回答の中身にかかわらず行き着く先は同じLINE登録になっていることが多い。本当に人を選んで仕事を割り振るなら、結果は人によって変わるはずだ。だが入口の「診断」は、ふるい分けというより、登録へ進ませるための手続きとして置かれている。消費者庁も、SNSなどを通じた投資や副業といった「もうけ話」に注意するよう促している。診断という装いは、その入口を柔らかく見せる工夫にすぎない、と私は見ている。
お金の流れでほどく――無料の先で、誰の財布が動くのか
まず、ひとつだけ落ち着いて考えたい。診断サイトを作り、広告を出し、LINEで人を待ち構える――これには手間も費用もかかる。その費用は、どこかで必ず回収される。「無料」と言い切れるのは、回収する場所が後ろにあるからだ。で、その利益の出どころは?
公的機関が確認した典型例の流れは、驚くほど段階的だ。消費者庁の注意喚起によれば、広告をタップして読み進めるとLINEの友だち登録を求められ、興味を持つとさらに「別のLINEアカウントを友だち追加するなどします」と、窓口が次々に切り替わっていく。入口で接した相手と、最後にお金を求める相手が同じとは限らない。引き渡されていく過程で、金額の話は少しずつ後ろへずらされる。
金額の上がり方も、たいてい階段状だ。はじめは数千円から数万円の「教材」や「初期費用」。次に数十万円の「サポートプラン」。消費者庁は、「簡単に稼げる」とうたう広告から勧誘され、高額なサポート契約を締結させられる事例を注意喚起している。仮に月数万円のプランが続けば、年間では数十万円。最初に見せられた「無料」と、後から積み上がる総額のあいだには、大きな開きがある。
「診断」を名乗る相手の素性を、先に確かめる
仕事を任せる、あるいはお金を払う相手なら、どこの誰かは分かっていて当然だ。ところが、この型の入口では、運営者の名前も電話番号も見当たらず、連絡手段はメールやLINEだけ、ということが少なくない。
これは「不親切」では済まない。ネット上で商品やサービスを売る通信販売には、表示の義務がある。消費者庁の特定商取引法ガイドは、個人事業者なら戸籍上の氏名か登記簿上の商号を、法人なら登記簿上の名称を記載することを要し、「通称や屋号、サイト名のみを表示することは認められません」と明記している。事業者の氏名(名称)・住所・電話番号は、広告に表示すべき必須事項とされている。つまり、屋号やサイト名しか出てこない、電話がつながらない、というのは、それ自体が確かめるべき手がかりになる。
登録や支払いの前に、確かめておきたいこと
- 診断結果に関わらず、行き先がLINE登録一つに集約されていないか
- 運営者の正式名称・住所・電話番号が示されているか(屋号やサイト名だけになっていないか)
- 「無料」のあとに出てくる料金の総額が、契約前にはっきり示されているか
- 「借りてでも」「今日中だけ」と、支払いや決断を急がされていないか
- やり取りの画面は、消さずに残してあるか
もう登録・契約してしまった人へ
すでに登録し、お金を払ってしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。追加のプランや「借りて払う」話を求められたら、そこで止めてほしい。順序はこうなる。
- ① 追加で払わない(「あと少しで回収できる」という話に乗らない)
- ② LINEやメールのやり取り、振込の記録を消さずに残す(相手から削除を求められても、証拠は保全する)
- ③ 振り込んだ決済元(カード会社・銀行・収納代行)に連絡する
- ④ 消費者ホットライン「188」、または警察相談専用電話「#9110」に相談する
私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。国民生活センターも、手軽に稼げるとうたう副業トラブルについて、詐欺に遭わないよう注意を呼びかけている。一人で抱え込まず、利害のない誰かに一度話すだけでも、見え方は変わる。
この記事のまとめ
- 無料の「副業診断」は、相性を見るより、勧誘の材料を集めLINE登録へ進ませる入口になりがち
- お金の流れは「無料 → 数万円 → 数十万円」と段階状に上がり、無料の入口の費用は後ろで回収される
- 運営者の名称・住所・電話番号が示されない時点で、確かめるべき手がかりだと考えていい
見るべきは「無料」「ぴったり」という看板ではなく、料金の総額と、お金を払う相手の素性。確かめられないなら、その場で決めない。