第208号黒岩検閲済 2026年6月22日 発行(不定期刊/前号:6月22日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|SNS運用スクールの型

「好きと気遣いが収入になる」主婦向けSNS運用代行スクールが、無料セミナーから高額契約に変わる型を、お金の流れで調べた

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

「あなたの気遣いや“好き”が、そのまま収入になります」。主婦や、これから何か始めたい人に向けて、そう語りかけるSNS運用代行スクールの案内をいくつか並べて読んでいました。看板の講座名や運営会社は案内ごとに違うのですが、お金の流れだけを抜き出すと、よく似た一つの型に収まります。特定の事業者は名指しせず、この「やさしい言葉で誘って、料金は最後に出てくる」型を、数字と仕組みでほどいてみます。

どうしてこの型は“やさしい言葉”から始まるのか

入口でお金や仕事の難しさを見せると、人は身構えます。そこでまず、「家事で培った気遣いが武器になる」「好きなことを発信するだけ」と、こちらの自己肯定感に寄り添ってくる。警戒心がゆるんで「私にもできそう」と思ったころに、本題の講座へ案内する——たぶん、この順番には理由があるんだと思います。

そして、この入口はいま現実に増えています。国民生活センターによると、副業に関する相談で「SNSがきっかけ」と答えた割合は2020年度末の約23%から2024年7月時点で70.1%へ上がり、相談件数も2020年度末1,341件から2023年度3,694件へ増えています。やさしい言葉でSNSから入ってくる、というのは気のせいではなく、件数として表れている流れのようです。消費者庁も、SNSで「もうけ話」をすすめられたら「まずは疑いましょう」と呼びかけています

「9割が成功」「月収7桁」――その数字は誰が確かめたのか

この型の案内には、たいてい大きな数字が並びます。「参加者の9割が成果を出した」「月収7桁も可能」。読むと心が動くのですが、その数字の出どころ——誰を、いつ、どう数えたのか——は、たいてい書かれていません。検証できない数字は、根拠としてはかなり弱いと考えていいと思います。

これは気分の問題ではなく、ルールの問題でもあります。景品表示法は、実際よりも著しく優良だと示して消費者の合理的な選択を妨げる「優良誤認表示」を禁じています。広告に出した効果や数字は、求められれば根拠資料で示せることが前提です。特定商取引法でも、こうした「仕事を提供するので収入が得られる」と誘う取引について、著しく事実と違う表示や、著しく優良・有利と誤認させる誇大広告を禁じています。つまり「9割」「月収7桁」を出すなら、本来は根拠を示せるはずなのです。示されないなら、その数字は飾りだと思って読むくらいでちょうどいい。

料金が面談まで出てこない、という設計

この型でいちばん引っかかるのは、料金の出し方です。無料セミナーや無料相談には進めるのに、肝心の受講料は、個別面談の終盤になって初めて提示される。何十万円という金額が、他社と比べる時間も、持ち帰って考える時間もないまま、その場で目の前に出てくる。価格を最後まで伏せておくこと自体が、比較させないための設計になっているように見えます。

「仕事を紹介するので、そのために必要な講座を受けてください」という形で受講料を払わせる取引は、特定商取引法の「業務提供誘引販売取引」に当たることがあります。これに当たる場合、事業者は契約内容を書いた書面を渡す義務があり、その書面を受け取った日から20日以内ならクーリング・オフで契約を解除できます。さらに「必ず利益が出る」と確実だと誤解させる断定的判断の提供も禁じられています。8日ではなく20日であること、そして「必ず稼げる」という言い切り自体がルール違反になりうることは、覚えておいて損はありません。

「お仕事マッチング保証」の中身を、お金の流れで見る この型には「卒業後はお仕事を保証します」「マッチング保証つき」という言葉がよく添えられます。けれど、どんな企業と・どんな条件で・いくらの仕事が・どれだけの期間つながるのか、が書かれていないことが多い。条件の書かれていない“保証”は、受講料を払う理由にはなっても、あなたの収入を約束してはくれません。確かめるべきは「保証」という言葉ではなく、その仕事が誰から・いくらで来るのか、です。

会社の素性を、見える事実で確かめる

もう一つ気になるのが、運営会社の素性です。設立して数か月の新しい会社で、これまでの実績が確認できない。代表者の氏名や電話番号が、サイトのどこにも見当たらない。実績の写真や受講生の声はたくさんあるのに、運営の輪郭だけがぼやけている、というのはよくある光景です。

ここでも、確かめる足場はあります。前に触れた業務提供誘引販売取引では、勧誘の際に事業者の氏名(名称)・住所・電話番号などを記した書面を渡すことが義務づけられています。本来は開示が前提の情報が見当たらないなら、それ自体が一つのサインです。そして、最近のこの種の被害は軽くありません。国民生活センターは2026年にも、「簡単に稼げる」とうたう副業トラブルで相談者の半数近くが50万円以上の損失を出していると注意を呼びかけています。やさしい入口の先に、これだけの金額が動いている、ということです。

迷ったとき用の一言 「本当に良い講座なら、料金も会社の素性も、こちらが調べる時間を取ることを嫌がらないはず」。値段を最後まで伏せたり、その場での即決を急かしたりするなら、それはそれで一つの答えだと思います。

巻き込まれないための、ゆるい行動ルール

気合いで見抜こうとすると疲れるので、いくつかを「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思います。一番効くのは、その場で決めないこと。「料金と会社の情報を持ち帰って調べます」と言えるだけで、大半は防げます。

  • 受講料の総額が、面談前に文章で確認できるかを基準にする
  • 「9割成功」「月収7桁」は、誰が・いつ・どう数えた数字かを聞いてみる
  • 「お仕事保証」は、相手企業・条件・金額・期間まで書面で確かめる
  • 運営会社の代表者名・住所・電話番号が開示されているかを見る
  • 無料セミナーへの参加だけでも、一拍おいて、利害のない人に話してから決める

この記事のまとめ

  • この型は「やさしい言葉 → 大きな数字 → 料金は面談で後出し → 条件不明の“保証”」の流れになりがち
  • 誇大な収入表示・料金後出し・断定的な約束には、景品表示法や特商法(業務提供誘引販売取引)のルールがある

見るべきは講師の実績や「保証」の言葉ではなく、料金の出し方と、その収入の出どころです。確かめられないなら、その場で決めず消費者ホットライン「188」に相談してください。