第357号黒岩検閲済 2026年7月18日 発行(不定期刊/前号:7月18日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|少額入口×電話勧誘移行の型

「AIの判断に乗るだけ」という少額の入口から、電話勧誘を経て数十万円規模のオンライン講座契約に進む型を、特定商取引法・消費者契約法の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

SNSの広告から登録した公式LINEで、「100円だけ用意すれば、あとはAIの判断に乗るだけ」という趣旨の案内を見た、という声がある。最初は確かに少額で、考えないでいい、悩まないでいい、という言葉が続く。だがそのあと動画講座や無料相談の案内を経て、担当者から電話がかかってくる段階になると、話は数十万円規模のオンライン講座契約に変わっていた——という相談も見かける。今号は、個別の案件名は伏せたうえで、この「少額の入口から、電話一本で高額契約に進む」という型を、特定商取引法・消費者契約法・国民生活センターの一次情報で調べた。(黒)

「少額」の入口から、電話勧誘へと切り替わる流れ

この型の入口はたいてい、金額の小ささを強調するところから始まる。「100円から」「数百円で試せる」といった言葉で、まず心理的なハードルを下げる。そこから公式LINEへの登録を促し、動画講座や「無料相談はこちら」という案内が続く。ここまではメッセージのやり取りだけで完結するので、読者は自分のペースで確かめているつもりでいられる。ところが、無料相談に申し込んだ時点で連絡先の電話番号を渡すことになり、しばらくすると担当者を名乗る相手から電話がかかってくる。ここで初めて、金額の桁が変わる。

国民生活センターは、SNSや動画広告をきっかけに副業サイトへたどり着き、メッセージアプリの友だち登録を経て契約に進む相談が増えていると報告している。「SNSや動画広告、インターネット検索等で見つけた副業サイトで『いいね』を押すだけ」「スタンプを送るだけ」等の簡単な作業で稼げるという副業に応募した」というのが、報告に挙がる典型的な入口の一つだ(国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル!」2024年9月4日)。「AIに乗るだけ」という言い回しは、この「作業は簡単」という入口の言葉が、AIという語に置き換わった形だと私は見ている。

電話一本で高額契約に進める勧誘は、法律上どう扱われるか

チャットでのやり取りから電話へ切り替わった時点で、この勧誘は特定商取引法上の「電話勧誘販売」にあたりうる。同法は、電話をかけた側にまず名乗る義務を課している。消費者庁の解説は、事業者に対し「その勧誘を行う者の氏名並びに商品若しくは権利又は役務の種類並びにその電話が売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げなければならない」としている(消費者庁「特定商取引法及び同法施行令の解説」2018年)。電話の冒頭で、社名も勧誘目的もはっきり名乗らない相手には、この時点で一つ疑ってよい理由がある。

「必ず増える」という口頭の説明は、不実告知にあたりうる

同じ解説は、勧誘の際に「不実のことを告げる行為」を禁じる条文についても触れている(同解説)。電話口で「AIが自動で判断するので確実に増える」といった説明を受けた場合、その内容次第では、この不実告知の禁止に触れる論点になりうる。加えて、契約の申込みを受けた事業者には「遅滞なく」申込み内容を記載した書面を交付する義務があるとも説明されている(同解説)。電話だけで契約を完結させ、書面をなかなか渡さない進め方は、この義務が守られていない可能性を疑う材料になる。

電話勧誘販売で契約してしまった場合でも、後から取り消せる制度がある。消費者庁は「法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、消費者は事業者に対して、書面又は電磁的記録により申込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)をすることができます」と説明している(消費者庁「特定商取引法ガイド-電話勧誘販売」)。8日を過ぎていなければ、電話一本で決めた契約でも解除できる余地が残っている。この期限は、書面を受け取った日から数えるという点も覚えておきたい。

「AIの判断に乗るだけ」という説明の位置づけ

「AIに乗るだけで増える」という言い方は、将来の利益を断定しているように聞こえる。消費者契約法は、こうした説明を受けて契約した場合の取消権を定めており、「将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること」を、契約取消しの対象となる行為の一つに挙げている(消費者庁「逐条解説 消費者契約法」2023年12月改訂)。つまり、増えるかどうかは本来「不確実な事項」であり、それを言い切ってしまうこと自体が制度上の問題になりうる。

実際、消費者庁は別の副業勧誘の事例を検討した際、報酬を得られるかどうかは実質的に不確実なものだったとして、「消費者のアフィリエイトの成功報酬に左右される不確実なものでした(断定的判断の提供)」と整理している(消費者庁「簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者に関する注意喚起」2025年6月26日)。「AIが判断するから確実」という説明も、その中身を分解すれば、結局は不確実な将来の話を確実であるかのように語っている点で、同じ構造だと私は見ている。では、その「確実」の根拠は、いったい誰がどう検証したものなのか。

数字で見る、副業トラブルの急増ぶり 国民生活センターによると、「簡単なタスクを行う副業」に関する相談件数は2020年度の1,341件から2023年度は3,694件に増え、そのうちSNSがきっかけとなった割合は23.0%から63.4%へ拡大した。平均契約購入金額も、同じ期間で279,519円から763,117円まで上がっている(前掲・国民生活センター資料)。入口の金額は小さくても、最終的な契約金額はむしろ大きくなっている。

講座代を借りてまで払う、という選択肢は一度止めてほしい

電話勧誘の先で高額な契約を切り出された際、手持ちの資金が足りないことを理由に、消費者金融からの借入れを勧められるケースも報告されている。前掲の消費者庁資料は、ある事業者の手口として「サポートプランの契約に充てるために消費者金融業者から借入れをするように勧め、指定の口座に送金させます」という進め方があったと記している。すべての案件がここまで進むわけではないが、この型の勧誘は、もともと少額の話だったはずが、最終的に借金にまで手を伸ばさせる方向に力が働きやすい、という点は覚えておいてほしい。その場で借りてまで払うかどうかを決める必要は、本来どこにもない。

で、その利益の出どころは? AIという言葉が入ると、仕組みを検証せずに納得してしまいやすい。だが電話口の担当者に聞くべきことは一つだ。「その判断の精度は、誰が、いつ、どうやって確かめたものですか」。ここに具体的に答えられないなら、少額の入口だったことは、もう理由にならない。
  • チャットでのやり取りから電話に切り替わった時点で、相手が社名・勧誘目的を名乗ったか確認する
  • 契約内容を記した書面を受け取ったか、受け取った日を控えておく(クーリング・オフは書面受領日から8日以内)
  • 「AIが自動で増やす」等の説明は、断定的判断の提供にあたらないか一度疑う
  • 手持ち資金が足りないことを理由に借入れを勧められても、その場では応じない

この記事のまとめ

  • 「AIに乗るだけ」という少額の入口は、電話勧誘に切り替わった段階で数十万円規模の契約案内に変わる型がある
  • 電話勧誘には特定商取引法上、氏名等の明示義務・書面交付義務・8日間のクーリング・オフが定められている
  • 「必ず増える」という説明は、消費者契約法上の断定的判断の提供にあたりうる論点として整理されている

少額で始まった話ほど、電話がかかってきた先の金額を先に確かめてほしい。