「乗るだけでAIが自動で稼ぐ」と謳う副業広告が、個人LINEでの信頼づくりを経て高額なツール契約へ進む型を、業務提供誘引販売取引の規定で調べた
「乗るだけでAIが自動で利益を出す」——そんな触れ込みの副業広告を見た、という話を聞いた。案内の先に用意されていたのは、企業の窓口ではなく個人名義のLINEアカウントだったという。今号はこれを、特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れと法律の両面から調べる。で、その利益の出どころは、広告のどこにも書かれていない。まずそこから見ていく。
断定的な数字が、まず入り口になる
広告に並ぶのは「毎日最低1万円」「毎月最低30万円」といった、具体的で断定的な数字である。しかも「乗るだけ」「AIが自動で」という言葉が添えられ、読み手の側には作業も判断も要らないように読める。ここで気になるのは、この数字の裏付けがどこにも示されていない点だ。第三者が検証できる実績の提示はなく、体験談があるとしても、それは広告主自身が用意したものにとどまることが多い。
型を三段で分解する
第一段階:断定的な数字を掲げた広告
広告そのものは「誰でも」「簡単に」という誘い文句から始まる。この段階では金銭のやり取りは発生しない。役目は、興味を持った人を次の窓口へ進ませることに絞られている、と私は見ている。
第二段階:個人名義のLINEでの信頼づくり
次に案内されるのは、企業の公式窓口ではなく、個人名義のLINEアカウントだ。ここでやり取りを重ね、悩みへの共感や日々の発信を通じて信頼を積み上げていく。個人対個人という体裁を取ることで、事業者としての実態や責任の所在がぼやける、という構造がある。
第三段階:「一括か、分割か」の選択で高額契約へ
信頼が育った頃合いで、有料サービスの案内が来る。「一括なら約20万円、分割なら3回で総額が3割ほど増える」という、支払い方法の選択という体裁の提案だ。分割を選ぶほど総支払額が膨らむ設計は珍しくないが、その場で電卓を叩いて確かめる人は多くない、というのが実務を見てきた私の感覚である。
「事業」の実態を、法律の側から確かめる
「収入が得られる」と誘い、その見返りに高額な商品・サービスの契約をさせる取引は、特定商取引法上「業務提供誘引販売取引」という枠組みで規律されている。消費者庁の特定商取引法ガイドは、この取引を〈業務提供利益が得られると相手方を誘引し、その者と特定負担を伴う取引をするもの〉と説明する(消費者庁「特定商取引法ガイド-業務提供誘引販売取引」)。個人LINEでの物販ツール契約がこの枠組みに当てはまるかどうかは契約内容ごとに確かめる必要があるが、少なくとも事業者には契約前に概要を記した書面を渡す義務があり、〈法律で決められた書面を受け取った日から数えて20日以内であれば、契約の解除をすることができます〉ともされている(同ガイド)。LINEのやり取りだけで話が進み、書面を受け取っていないと感じたら、まずこの点を確認してほしい。
個人LINEへの誘導そのものが、繰り返し注意されている型
警察庁は、SNS広告を入口に「短時間」「簡単」といった甘い言葉で興味を引き、後になって追加の費用を求めてくる副業詐欺の型を注意喚起している。〈「短時間」「簡単」などの甘言が掲載された広告が入口で、初期は儲けたように装い、のちに相手から「損失が発生した」「違約金を払え」などと言われ架空料金請求詐欺に発展します〉としている(警察庁「副業を名目とした詐欺」)。
金融庁も、SNS上の広告や個人のLINEアカウントへ誘導される手口について、〈個人のLINEアカウントやSMSに突然連絡が来るケースも確認されています〉と注意を促している(金融庁「SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください!」)。国民生活センターが2018年に公表した相談事例にも「パソコンがあればいつでもどこでも仕事ができ、みんな20万円稼いでいる」「稼げなかったら返金する」と言われ、50万円をクレジットカードで決済した、という記録が残る(国民生活センター「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!」2018年)。「誰でも稼げる」「返金保証」という言葉と、実際に支払う金額の乖離は、8年前からあまり変わっていない、と私は見ている。
- 広告の収益数字(毎日〇円・毎月〇円)に、確認できる裏付けがあるか
- 案内される窓口が、企業の公式アカウントか個人名義のアカウントかを確かめたか
- 契約前に、概要書面・契約書面を受け取っているか
- 分割払いを選んだ場合の総支払額を、自分で計算したか
- その場で契約せず、いったん持ち帰って確認する時間を取ったか
この記事のまとめ
- 「乗るだけでAIが自動で稼ぐ」という断定的な数字は、消費者契約法上の「断定的判断の提供」に触れうる
- 個人LINEでの信頼構築を経て高額契約に進む型は、特定商取引法の業務提供誘引販売取引として書面交付・クーリング・オフの対象になりうる
個人対個人に見えるやり取りの先にも、事業者としての義務は残る。急かされたら、まず持ち帰って確かめてほしい。