第299号黒岩検閲済 2026年7月5日 発行(不定期刊/前号:7月5日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
詐欺アラート研究所詐欺アラート研究所の角印

FRAUD ALERT LAB ── 投資詐欺・悪質商法 調査報

一面縮刷版・記事一覧 > AIツール講座×連絡先不記載の型
調査報告|AIツール講座×連絡先不記載の型

「AIが自動でやってくれる」と謳う無在庫物販講座が、価格も運営者の連絡先も明かさないまま個別相談へ進む型を、特商法の表示義務で調べた

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

「動画を最後まで見ると、個別相談の案内が届く」。今号に寄せられた相談は、そんな一文から始まった。「在庫ゼロ」「AIツールが自動で商品を選んでくれる」と謳う物販講座のセミナー動画を見た、という話である。仕組みの説明は丁寧で、画面には仕入れ・出品・売上の推移とおぼしきグラフも映る。ただ、広告のページをどれだけ読み返しても、受講にいくらかかるのかが、どこにも書いていない。運営している会社の住所も、電話番号も見当たらない。今号で扱うのは、特定の講座や人物ではない。AIツールという言葉で技術を前面に立てながら、価格も運営者の連絡先も広告には明かさず、個別相談でだけそれを伝える――この、物販講座勧誘の型である。

この型の骨格――「技術の説明」が先、「金額と連絡先」は後

広告や動画で語られるのは、たいてい仕組みの話だ。AIがどう商品を選ぶか、在庫を持たずにどう出品するか。専門用語こそ少ないが、説明は具体的で、素人目には「よく考えられている」ように映る。ところが、価格の話になると、急に情報が消える。「詳しくは個別相談で」という一文だけが、そこに置かれている。運営している事業者の名前で検索しても、住所や電話番号は出てこない。技術の説明を丁寧にすればするほど、価格と連絡先の不在は目立たなくなる。私はそこに、この型の設計思想を見ている。

広告に価格がないのは合法か――特定商取引法の表示義務で調べる

通信販売の広告には、そもそも表示すべき事項が法律で決まっている。消費者庁の解説によれば、事業者の名称は「個人事業者の場合には戸籍上の氏名又は商業登記簿に記載された商号を、法人の場合には登記簿上の名称を記載することが必要であり、通称や屋号、サイト名は認められません」とされる(消費者庁「通信販売|特定商取引法ガイド」)。価格についても「基本的に当該商品等そのものの販売価格や当該役務そのものの対価を表示することとなります」「代金の支払方法(銀行振込、クレジット、代金引換等)を全て表示することが必要です」と明記されている(消費者庁「通信販売広告について|特定商取引法ガイド」)。事業者名も住所も電話番号も、価格も、広告の時点で示されるのが本来の姿だ。「個別相談で初めて分かる」という設計そのものが、私にはこの原則からかなり外れて見える。

「価格が書いていない」は、それ自体が確認ポイント 広告や動画のページを開いたら、価格・支払方法・事業者の住所と電話番号が書いてあるかどうかを、まず確かめてみてほしい。どれか一つでも欠けているなら、それは「まだ聞いていないだけ」ではなく、「意図的に伏せられている」可能性がある、と私は見ている。

「在庫ゼロで誰でも稼げる」を、公的な注意喚起で照らす

「在庫を持たずに、AIが選んだ商品で稼げる」という触れ込みについても、公的な見解がある。消費者庁は令和3年、無在庫転売ビジネスをめぐって「一般の消費者が、短時間・片手間で無在庫での転売ビジネスで稼げるということはまずあり得ません」と注意を呼びかけた。さらに「これらの事業者が紹介する無在庫での転売は大手通販サイトでは禁止されており、サイトの運営事業者に発見された場合には警告・アカウント停止といった措置がとられることから、そもそもビジネスとして成立しません」とも明記している(消費者庁「無在庫での転売ビジネスのノウハウを提供するなどとうたい、多額の金銭を支払わせる事業者に関する注意喚起」令和3年4月28日)。「AI」という言葉が新しく聞こえても、無在庫転売という中身自体の制約は変わらない。利用予定のプラットフォームの規約に触れないかどうかは、契約前に自分で確認できることの一つだ。

「稼げた」という声を、自分で検索してみる

個別相談の場面では、当然「受講生がこれだけ稼いだ」という話を聞かされる。ただ、この手の副業・物販講座をめぐって、消費者庁は令和7年6月、類似の勧誘に対し断定的判断の提供を理由とした注意喚起を行っている(消費者庁「簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者に関する注意喚起」令和7年6月26日)。将来の利益について断定的な判断を示し、それによって誤認して契約した場合は、消費者契約法第4条第1項第2号により契約を取り消せることがある(消費者契約法(e-Gov法令検索))。体験談の熱量ではなく、契約前に、運営者を介さない第三者の発信で「稼げた」報告を確認できるかどうかを見てほしい。検索しても出てこない、ということ自体が、一つの答えになる。

情報商材・副業トラブルの相談は、今も途切れていない

国民生活センターの集計では、情報商材に関する相談は2022年度7,000件、2023年度6,256件、2024年度4,118件と減少傾向にある。ただ、2025年度分は同年5月31日までの集計で早くも262件にのぼっており(国民生活センター「情報商材(各種相談の件数や傾向)」)、年度の序盤であることを踏まえれば、この種の相談が消えたわけではない。件数の増減よりも、「価格を隠す」「連絡先を隠す」という型そのものが、道具(情報商材からAIツールへ)を変えながら生き続けていることのほうを、私は気にしている。

巻き込まれないための確認ポイント

予防の側でやることは、技術の説明を疑うことではない。価格と連絡先が、契約前にどこまで開示されるかを確かめることだ。

  • 広告・動画のページに、価格・支払方法・事業者の名称・住所・電話番号がすべて書かれているかを確認する
  • 「個別相談で」とだけ案内され、総額がその場まで分からない設計そのものを、判断材料に数える
  • 「在庫ゼロで誰でも稼げる」という説明が、利用予定のプラットフォームの規約に反していないかを確認する
  • 「稼げた」という声を、運営者を介さない第三者の発信で確認できるか調べる
  • その場では決めず、家族や利害のない第三者に一度話してから判断する

すでに契約し、支払ってしまった方へ。まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上支払いを増やさないことが先だ。順序はこうなる。①追加の契約・上位プランの勧誘に応じない ②広告・動画・契約書・やり取りの記録を残す ③特定商取引法の表示義務違反にあたるかを確認する ④消費者ホットライン「188」に相談する。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

迷ったとき用の一言 「価格の総額と、御社の住所・電話番号を、この場で教えてください」。この一問に淀みなく答えられる相手とだけ、次の話をすればいい。話をはぐらかされたら、それはそれで答えだと思う。

この記事のまとめ

  • AIツールという技術の説明を前面に立てながら、価格も事業者の住所・電話番号も広告に示さず、個別相談でだけ明かすのが、この型の骨格である
  • 通信販売広告には価格・支払方法・事業者情報の表示義務があり、「在庫ゼロで誰でも稼げる」という触れ込みには消費者庁が繰り返し注意を促している

確かめるのは技術の中身ではなく、価格と連絡先が契約前にどこまで開示されるかだ。迷えば188へ。それが一番確かだ。