「スマホだけでできる」と誘う副業広告が、LINE登録を重ねさせた先で有料マニュアルへ誘導する型を、業務提供誘引販売取引の規制で調べた
「スマホだけでできる」「誰でもできる」。SNSの広告に、そんな言葉が並ぶ副業案内を見かけた。タップして読み進めると、まずLINEアカウントの友だち登録を求められる。友だち追加をすると、そこから今度は別のLINEアカウントへの登録を促され、たどり着いた先で「副業に必要なガイドブック」の購入を持ちかけられる——という流れだ。今号で扱うのは特定のサービスでも記事でもない。抽象的な広告文言から始まり、LINE登録を重ねさせた先で有料の手引きへ誘導する副業勧誘——この型を、行政の注意喚起と法律の枠組みの両面から調べた。
「LINE登録だけ」の先で、何が起きているか
「スマートフォンでSNS等を見ていると、1日数回の簡単なアンケートに回答するとお金を稼ぐことができる、などといった広告が表示されます」。消費者庁はこの手口の入口をそう説明する。「広告をタップして読み進めていくと、LINEアカウントの友だち登録を要求される」。友だち追加をした先で、消費者は「当該LINEアカウントから指示され、別のLINEアカウントを友だち追加するなどします」。そして「当該別のLINEアカウントからアンケート副業に必要なガイドブックの購入を求められます」(消費者庁「簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者に関する注意喚起」令和7年6月26日)。一度の登録では終わらず、LINEアカウントを乗り換えさせながら段階を踏ませる——ここが、この型の最初の特徴だ。
ガイドブック購入のあとに、何が来るか
消費者庁は今年、この型の具体例として、ある事業者を名指しで注意喚起している。「当社が案内する副業はアフィリエイトである。この副業をサポートする。アフィリエイトは、初心者でも簡単に稼ぐことができる」「このプランなら、月50万が当たり前になる」「儲けが出なければ返金保証がある」——こうした言葉で、ガイドブック購入の先にある高額な「サポートプラン」契約へ誘引され、「報酬が得られなかった」という相談が消費生活センター等に「数多く寄せられています」という(同注意喚起)。ガイドブックそのものの価格は入口にすぎず、その先に高額契約が控えている構図が、行政の公表資料からも読み取れる。
この売り方は、法律上どう位置づけられるか
「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、仕事に必要だとして商品等を購入させ金銭負担を負わせる取引を、消費者庁は「内職商法」「副業商法」と呼び、特定商取引法上の業務提供誘引販売取引の規制対象になりうるとしている。条文はこう定める。「業務提供利益を収受し得ることをもって相手方を誘引し、その者と特定負担……を伴うその商品の販売若しくはそのあつせん……をするものをいう」(e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律」第51条)。平たく言えば、「稼げる仕事を紹介する」ことを誘い文句に、その仕事に必要だとして有料の教材やサポートを買わせる取引には、法律上の規制がかかる、ということだ。これは他人を勧誘して報酬を得る「連鎖販売取引」(いわゆるマルチ商法)とは要件が異なる。今回のように個人が副業マニュアルを購入するだけの型は、業務提供誘引販売取引の枠組みで見るのが法的に正確だ、という点は覚えておきたい。
数字でほどく——統計に見る規模
警察庁の確定値によれば、令和7年の「副業詐欺」——副業を名目に現金等をだまし取る手口——の認知件数は2,071件・被害額35.8億円で、特殊詐欺全体の認知件数に占める割合は7.4%に上る。ただし副業詐欺は「令和7年から統計を開始している」(同資料脚注)ため、前年との増減を比べる数字はまだ存在しない。あわせて、情報商材全般に関する消費生活相談は国民生活センターの集計で2022年度7,000件・2023年度6,256件・2024年度4,118件と続いており(こちらは副業マニュアルに限らない広義の集計だが)、件数の規模感としては参考になる。
広告に出会ったときの確認ポイント
- 「スマホだけ」「誰でもできる」という抽象的な文言だけで、仕事の中身を判断しない
- LINE登録を求められた時点で、その場で友だち追加をせず持ち帰る
- 友だち追加の先で「別のLINEアカウントへの登録」を促されたら、その乗り換え自体を警戒する
- ガイドブックや教材の購入を勧められたら、それが業務提供誘引販売取引に当たりうる取引だと知っておく
- 返金保証・月◯万円などの断定的な数字は、契約前に書面で確認する
この記事のまとめ
- 「スマホだけ」「誰でもできる」という広告からLINE登録を重ねさせ、有料ガイドブックへ誘導する型は、消費者庁が事業者名を公表するほど実例が確認されている
- この売り方は特定商取引法上の「業務提供誘引販売取引」の規制対象になりうる
確かめられるのは、LINE登録を重ねさせる導線そのものと、購入の前に仕事の中身を説明できるかどうかだ。「スマホだけ」という気安さは、その代わりにはならない。