第258号黒岩検閲済 2026年6月30日 発行(不定期刊/前号:6月30日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|副業勧誘の型

「1日5分で稼げる」と誘う副業広告が、数百円の入口から高額サポートへ段階的に誘導する勧誘の型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「スマホひとつ、1日5分で高収入」。SNSの広告でそんな副業を見かけ、案内に乗ってみると、最初に求められるのは無料登録か、せいぜい数百円の教材だった——。机に届いた相談を並べていると、この入口の軽さがいくつも重なります。特定のサービス名やアプリ名を名指しで「詐欺だ」と言うつもりはありません。ただ、名前を伏せても残るこの“型”を、お金の流れの側から一度ほどいておきます。で、その「5分で入る高収入」の出どころは、どこなのか。そこを見ます。

「簡単・高収入」の入口は、なぜ無料や数百円なのか

入口は決まって軽い。「無料登録」「初回○○円」「まずは数百円の教材から」です。金額が小さいほど、人は「これくらいなら」と、財布より先に指が動きます。ここで入口を限界まで下げてあること自体に、私は意味があると見ています。

消費者庁は、SNSのアンケート副業広告をきっかけに「アフィリエイトは、初心者でも簡単に稼ぐことができる」などと勧誘し、最終的に高額なサポートプランを契約させる事業者へ注意喚起(2025年)を出しています。同じ注意喚起には「このプランなら、月50万が当たり前になる」「儲けが出なければ返金保証がある」といった誘い文句も記録されています。安い入口は、その先の高い契約へ進ませるための入口になりやすい。「無料で釣り、後から高額ツールを払わせる」型とも、入口の作り方はそっくりです。

数百円のあとに、段階的に高額サポートが現れる

入って教材を読むと、たいてい「これだけでは足りない」と感じる作りになっています。そこへ「本気で稼ぐなら上位プラン」「専属サポートを付ければ安心」と、次の段が現れる。最初の数百円は、次の数十万円・数百万円へ橋を架けるための一段目だった、という形です。

国民生活センターも、ゼロ初期投資で気軽に稼げるとうたいながら、その後に高額商品の購入へ誘導される副業トラブル(2024年)を記録しています。同じ発表では、入口として「テンプレート購入に2万2,000円」「約3,000円のマニュアル」といった少額の商品が示され、そこから高額プランへ進む例が紹介されています。最初に出す額の小ささと、案件全体の安さは、別の話だということです。

安い入口は、判断まで安くするための入口 金額が小さいと、人は「失っても数百円」と気軽に申し込みます。けれど、相手が見ているのは入口の数百円ではなく、その先で出させる数十万円のほうです。最初に払う額の小ささを、案件全体の安全と取り違えないでほしい。見るべきは入口の値段ではなく、この先いくらまで求められうるか、です。

「1日5分で稼げる」という言葉は、法律ではどう見られるか

では、あの「1日5分」「即日○万円」という言葉そのものはどうか。景品表示法は、実際のものより「著しく優良であると示すもの」で不当に客を引く表示を、優良誤認として禁じています。誰でも・必ず・短時間で、と中身以上に良く見せる言い方は、ここに触れうる表現です。

通信販売の広告にも歯止めがあります。特定商取引法第12条は、著しく事実に相違する表示や、著しく優良・有利と誤認させる表示を誇大広告として禁じています。広告の隅に小さく「個人差があります」と添えても、それで大きな約束が打ち消されるわけではありません。この点は“打消し・免責のひとこと”の型でも触れました。大きな約束と小さな言い訳が同居していたら、まず約束の側を疑いたい。

数字でほどく——相談は、年々増えている

この型は、珍しい話ではありません。国民生活センターに寄せられた副業トラブルの相談は、2020年末の1,341件から、2021年末2,398件、2022年末2,793件、2023年末3,694件と、年を追って増えています。さかのぼれば、情報商材の相談は2017年度に6,593件と、2013年度に比べ7倍超に膨らんだ年もありました(2018年)。

整理すると、この型のお金も一方通行になりがちです。入口の数百円は実際に支払われ、続く高額プランも振り込まれる。一方で、約束された「1日5分の高収入」が同じだけ戻ってくる保証は、どこにもありません。つまり、お金が出ていく回数は段階的に増えても、戻ってくる回数はゼロのまま、という構造になりやすい。では、その報酬は誰の、どんな売上から出ているのか。

確かめるのは「金額」ではなく「報酬の出どころ」 入口がいくら安くても、それは判断の材料になりません。見るべきは、紹介された仕事の報酬が誰のどんな売上から出るのか、最初に聞いた金額で本当に終わるのか、そして「簡単・必ず・短時間」という言葉に中身の説明が伴っているか。ここが曖昧なまま追加の支払いを求められたら、そこがいったん立ち止まる場所です。

申し込む前に、確かめておきたいこと

この型は、手軽さで気を緩めさせてから、財布を開かせます。だからこそ「安いうちに決めない」手順を一つ持っておくと効きます。下のどれか一つでも当てはまったら、その日は申し込まない。それくらいでちょうどいいと思います。

  • 「1日5分」「スマホだけ」「誰でも必ず」と、考える時間を削る言葉で誘われている
  • 入口は無料か数百円なのに、登録後に上位プランやサポート料の話が出てくる
  • 紹介された仕事の中身や、報酬がどこから出るのかの説明が曖昧なまま
  • 「今だけ」「先着」と、その場で契約・入金するよう急かされている
  • 「儲からなければ返金」と言われたが、条件や手続きがはっきり示されない

この記事のまとめ

  • 「無料・数百円の入口 × 段階的な高額サポート × 簡単・高収入のうたい文句」は、ワンセットで現れやすい一つの型
  • 最初に払う額の小ささは、案件全体の安全を意味しない。相手が見ているのは、その先で出させる高額のほう
  • 確かめるのは金額ではなく、報酬の出どころ・最初の金額で終わるか・うたい文句に中身が伴うか

入口が安いほど、出口は高くつくことがあります。申し込む前に迷ったら、消費者ホットライン「188(いやや)」へ。もし契約してしまっても、契約のしかたによっては一定期間内のクーリング・オフが使える場合があります。まずは188、緊急でない相談は警察相談専用「#9110」で、ひとりで抱えないでほしい。