「効果には個人差があります」「投資は自己責任」と隅に小さく添える“打消し・免責のひとこと”の型を、お金の流れで調べた
「誰でも」「必ず」「月利○%」と大きく打ち出した広告の、画面の隅や脚注に、小さな文字でこう添えてある――「※あくまで個人の感想です」「※効果・成果には個人差があります」「※投資は自己責任でお願いします」。投資や副業、情報商材の勧誘でよく見かける“打消し・免責のひとこと”だ。特定の事業者やサービスは名指ししない。私が調べたいのは、この小さな注記を見て読者が抱く「自己責任と書いてあるなら、何かあっても運営は責任を負わないのだろう」という受け取りが、本当に正しいのか、という一点だ。お金の流れと、責任の所在の側から見ていきたい。
なぜ大きく打ち出して、隅に小さく添えるのか
広告は、目を引く言葉で関心を集めて、登録や購入まで運ぶことを目的に作られている。だから効果や利益のうたい文句は大きく、目立つ位置に置かれる。一方で、その言葉どおりにならなかったときに備える“逃げ道”も要る。そこで、効果を打ち消す注記や免責の文言を、本文より小さく、目に入りにくい場所に添える。読む側は、大きな見出しで気持ちが動いたあとなので、隅の小さな文字までは確かめない。「大きな期待」と「小さな打消し」は、同じ広告の中でわざと非対称に置かれていることがある。
この非対称は、いまは公的に問題視されている。消費者庁の打消し表示に関する実態調査報告書(消費者庁・2017年)は、「強調表示と打消し表示とが矛盾するような場合は、一般消費者に誤認され、景品表示法上問題となるおそれがある」としている。つまり、小さく断り書きを入れさえすれば何を大きくうたってもよい、というわけではない。
「個人の感想です」「個人差があります」は、受け取りをどれだけ変えるか
体験談に「※個人の感想です。効果には個人差があります」と添える型は、とくに多い。だが、その一言で読者の受け取りが本当に変わるのかは、別の話だ。消費者庁の打消し表示に関する実態調査報告書のまとめ(消費者庁・2018年)は、こうした打消し表示に「気付いたとしても、体験談から受ける『大体の人』が効果、性能を得られるという認識が変容することはほとんどないと考えられる」としている。
同じ資料は、「体験談をねつ造する場合や一部の都合の良い体験談のみを引用する場合等、体験談を不適切に使用する場合は、不当表示に当たるおそれがある」とも述べている。ここでいう「不当表示」とは何か。消費者庁は、実際よりも著しく優良であると示す表示(優良誤認/消費者庁)や、取引条件が実際より著しく有利だと誤認させる表示(有利誤認/消費者庁)を、景品表示法で規制している。「個人の感想です」と小さく添えても、肝心の効果に裏づけがなければ、注記のほうが読者を守ってくれるわけではない。
「投資は自己責任」と書けば、運営は本当に責任を負わないのか
ここが、この型のいちばんの誤解だと思う。「投資は自己責任」「当方は一切の責任を負いません」と書いてあると、読者は「契約したこちらが全部かぶるのだ」と受け取ってしまう。だが、事業者が消費者と結ぶ契約では、責任を全部なかったことにする条項は、書いてあっても通らない場合がある。
消費者庁の消費者契約法逐条解説 第8条(消費者庁・2023年)は、無効となる条項として「事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項」を挙げている。事業者の不法行為による損害についても、責任の全部を免除する条項は同様に無効とされている。条文そのものは消費者契約法(e-Gov法令検索)で確認できる。「自己責任」と一言添えても、運営側の故意や過失による損害まで一律に消せる、というものではない。
その小さな打消しは、「必ず儲かる」とセットで現れやすい
免責のひとことは、たいてい強い断定とセットで現れる。金融庁は、詐欺的な投資勧誘の典型例として「上場確実ですので、必ず儲かります!元本も保証します!」といった文言を挙げ、入金後に連絡が取れなくなる例もあるとして取引を見合わせるよう注意喚起(詐欺的な投資勧誘等にご注意ください/金融庁)している。確実性や元本保証を強くうたうほど、「効果には個人差」「自己責任」という打消しが隣に必要になる――その組み合わせ自体が、お金の流れを考える合図だと思っている。
こうした「もうけ話」をきっかけにしたトラブルは、いまも続いている。消費者庁は、投資や副業といった「もうけ話」にご注意ください(消費者庁・2024年)として、年齢を問わず相談が寄せられていると説明する。国民生活センターも、SNSをきっかけに著名人をかたる金融商品の相談が2021年度52件から2023年度1,629件へ急増し、平均契約購入金額は687万円に上ると報告している(2024年)。大きなうたい文句で集めて、小さな打消しで逃げ道を作る型は、特定の誰かの工夫ではなく、広く出回っている定型だ。
登録・契約の前に、自分で確かめておきたいこと
気合いで見抜こうとすると疲れる。私は、いくつかの「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。一番効くのは、その場で決めないこと。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、大半は防げる。そのうえで、
- 大きなうたい文句と、隅の小さな打消しが矛盾していないか(「誰でも」と「個人差があります」が同居していないか)
- 「※個人の感想です」の体験談に、こちらで裏の取れる効果の根拠が添えられているか
- 「自己責任」「一切責任を負わない」を理由に、運営の連絡先や事業者情報があいまいになっていないか
- 「必ず」「元本保証」など、確実性をうたう断定が併記されていないか
この記事のまとめ
- 「誰でも」「必ず」を大きく、「個人の感想です」「個人差があります」「自己責任」を小さく――この非対称な打消し・免責のひとことは、書いた側の逃げ道として置かれていることがある
- 小さな打消しに気づいても大きなうたい文句の印象はほとんど変わらず、「自己責任」と書いても運営の責任が一律に消えるわけではない(景品表示法・消費者契約法第8条)
確かめるのは注記の有無ではなく、うたい文句と打消しの矛盾・効果の根拠・事業者情報・断定の併記だ。だからこそ「登録する前」「契約する前」が勝負になる。大きな期待に乗って契約してしまった、解約できない――そんなときは、一人で抱えず、お住まいの地域の消費生活センターへ。消費者庁は全国共通の番号として消費者ホットライン188(いやや!)を案内している。私には個別の解決はできない。判断は、正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。