第178号黒岩検閲済 2026年6月19日 発行(不定期刊/前号:6月19日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
詐欺アラート研究所詐欺アラート研究所の角印

FRAUD ALERT LAB ── 投資詐欺・悪質商法 調査報

一面縮刷版・記事一覧 > 勧誘の型
調査報告|勧誘の型

「LINE登録だけで1日2万円」をうたう副業紹介──“無料の入口”の先を、お金の流れでほどく

公開 最終更新 読了 約5分
黒岩警戒度

「LINEに登録するだけで1日2万円」。広告にはそう書いてある。登録はたしかに無料で、ボタンを押すだけだ。だが、押した先で何が起きるのか。特定の案件を名指しするつもりはない。案件をまたいで何度も現れる「副業情報の紹介サービス」という一つの型として、お金の流れでほどいてみたい。

「登録無料」と「稼げる」は、同じ場所では起きていない

この型でまず確かめたいのは、無料なのは「登録」であって、「稼ぐこと」ではない、という点だ。LINEに登録すると、最初に届くのは収入そのものではなく「あなたに合う副業を紹介します」という案内になる。そして紹介された先で、有料のマニュアルやサポートプラン、ツールの契約を勧められる。つまり入口の無料と、出口の有料は、別の場所に置かれている。

消費者庁もSNSをきっかけにした「もうけ話」について「儲け話をすすめられたら、まずは疑いましょう」と注意喚起している。気前のいい入口を見たら、後ろにある出口の値段とセットで眺めたい。

では、その紹介で誰が得をするのか

無料で登録者を集め、別の有料サービスへ案内する。この紹介がただの親切でないなら、紹介した側には紹介料(成果報酬)が入る、と考えるのが自然だ。要するに、登録した人は「お客さん」であると同時に「次のサービスへ送り込まれる対象」でもある。紹介する側の利益が、紹介される商材の代金から出ているなら、勧められる中身は「あなたに最も合うもの」ではなく「最も紹介料が高いもの」に寄りやすい。で、その紹介料の出どころは?――そこを一度たどってみてほしい。

この「仕事を紹介するという口実で、結局は商品やサービスを買わせて金銭を負担させる」構造は、法律も古くから想定している。消費者庁の特定商取引法ガイドは、こうした取引を「業務提供誘引販売取引」と呼び、仕事を提供するので収入が得られるという口実で消費者を誘引し、仕事に必要だとして金銭負担を負わせる取引と説明している。「1日2万円」の前に「まず◯◯円の契約を」が来るなら、その形に近い。

「1日2万円」を、まず割り算でほどく

1日2万円が本当なら、月に20日働けば40万円、休まず続ければ年に700万円を超える。登録するだけ、スマホだけ、知識も不要——その条件でこれだけ稼げる手段が実在するなら、人を募って紹介料を取らずとも、黙って自分で回しているはずだ。私はそう見ている。広告の数字は、それを口にしている人が「自分でやらずに他人に勧めている」時点で、一度立ち止まる材料になる。

規模も小さくない。国民生活センターによれば、「スキマ時間に気軽に稼げる」等とうたう副業トラブルの相談は2023年末で3,694件に増え、2024年7月時点の平均契約購入金額は約106万円、SNSをきっかけにした割合は約70%にのぼる。「無料で始めた」はずが、平均で100万円超を払う形になっている。入口の無料と、この金額の落差そのものが設計だと思っておきたい。

「初心者でも」「返金保証あり」は、安心の根拠にならない 消費者庁は令和7年6月、簡単な副業をうたって高額なサポートプランを契約させた事業者について注意喚起を行っている。そこでは「初心者でも簡単に稼ぐことができる」「このプランなら、月50万が当たり前になる」「儲けが出なければ返金保証がある」などと勧誘していた、と指摘されている。「初心者向け」「返金保証」は、安心させて契約を急がせる言葉として使われることがある、ということだ。保証があると言われたら、その条件と、誰が・いつ・いくら返すのかを、契約の前に文字で確かめたい。

「必ず」「誰でも」と言い切る時点で、線をまたいでいる

勧誘の現場で分かりやすい線がここだ。特定商取引法は、業務提供誘引販売取引において、収入や仕事に関する重要な事項について事実を告げないことや、事実と違うことを告げること、そして利益が生じることが確実だと誤解させる「断定的判断の提供」による勧誘を禁じている。だから、まともな事業者ほど「必ず」「誰でも稼げる」とは言わない。逆に「登録するだけで確実に」「誰でも1日2万円」と言い切る相手は、その一言ですでに守るべき線をまたいでいる、と見ていい。

お金の流れは、だいたい同じ順で進む

無料・簡単・高収入の広告で関心を引く。LINE登録で連絡先を押さえる。「あなたに合う副業を紹介する」と別サービスへ案内する。そこで有料のマニュアルやサポートプランを勧める。少額や短期では「できそう」に見せ、安心したころに上位プランや追加費用を促す。そして思ったほど稼げないと分かる頃には、すでに何十万円も払い終えている。最初の無料と、最後の高額。この落差が型の正体だ。

確かめる順序 相手が誰なのかは、特定商取引法に基づく表記(事業者名・所在地・連絡先)で確認できる。表記がない、私書箱だけ、連絡手段がLINEのみ——そうした相手に、先にお金を渡さないでほしい。判断に迷ったら、契約の前に消費者ホットライン「188」で相談できる。消費者庁は「困ったときは、一人で悩まずに、消費者ホットライン188に相談を」と案内している。最寄りの消費生活センターにつながる、全国共通の3桁番号だ。

巻き込まれないための、ゆるい行動ルール

気合いで見抜こうとすると疲れる。だから「いつものクセ」にしてしまうのがいい。一番効くのは、その場で決めないことだ。「いったん持ち帰って、誰がいくらで何を売っているのかを確かめます」を口ぐせにするだけで、高額プランの大半は手前で止められる。そのうえで、

  • 「登録無料」と「稼げる」を分けて読む。無料なのは入口だけで、稼ぐ前に有料の契約が挟まらないかを先に確かめる
  • 「1日◯万円」は割り算でほどく。月いくら・年いくらになるかを計算し、その額が本当に登録だけで出るのかを疑う
  • 勧めてくる人の利益(紹介料)がどこから出ているのかを考える。あなたに合うものか、紹介料が高いものか
  • 「必ず」「誰でも」「初心者でも確実に」と言い切られたら、その一言を赤信号として扱う

この記事のまとめ

  • 「LINE登録だけで1日2万円」型は、無料の入口で人を集め、別の有料プランの契約で回収する勧誘の型
  • 「初心者でも」「返金保証」「必ず稼げる」は安心の根拠にならない。公的機関がこうした文言での勧誘を問題視している

入口の無料と出口の有料を分けて読む・「1日◯万円」を割り算でほどく・紹介料の出どころを考える。この3つを淡々と。すでに契約・入金してしまった場合は、取り戻すこと以上にこれ以上払わないことが先で、相談は消費者ホットライン「188」など正規窓口へ。