「無料で学べて、稼げる」という副業の入口を、お金の出どころでほどく
「無料でスキルが学べて、しかも稼げる」。SNSの広告でよく流れてくる文句だ。特定の案件を名指しするつもりはない。案件をまたいで繰り返し現れる一つの型として読んでほしい。私が現場で覚えたのは、こういう話に出会ったときの一次質問はいつも同じだということだ。で、その「無料」は、誰が払っているのか。
「無料」には、必ず原資がある
商売である以上、講座を開いて教える側にも人件費や広告費はかかる。それでも受講料を取らないなら、その費用はどこかから出ているはずだ。出どころは大きく二つに分かれる。
一つは、受講者を企業に紹介したり、受講者の労働を企業へ受託として回したりして、その対価を得る形。つまり受講者は「客」ではなく、教える側にとっての「商品」や「労働力」に近い位置に立つ。もう一つは、入口は無料にしておいて、後から高額な有料プランやサポート契約を契約させる形だ。どちらが悪いという話ではない。ただ、「無料」の一語だけを見て飛び込むと、自分がどちらの立場で参加しているのかを見落とす。要するに、無料の正体は「後で何を求められるか」とセットで見ないと意味がない。
後から有料へ――数字でほどく
後者の型については、公的機関が具体的な手口を記録している。消費者庁は2025年6月、簡単な副業をうたって高額なサポートプランを契約させる事業者について注意喚起を発出した。「初心者でも簡単に稼げる」「このプランなら月◯◯万が当たり前」「儲けが出なければ返金保証」といった言葉で勧誘し、高額なプランを契約させたものの報酬は得られなかった、という相談が各地の消費生活センターに数多く寄せられている、という内容だ。
金額は小さくない。国民生活センターによると、スキマ時間に稼げるとうたう副業トラブルの平均契約購入金額は、2022年度の約53万円から2023年度には約76万円へ上がっている。同じ集計で、相談のきっかけが「SNS」だった割合は2023年度で63.4%。つまり、SNSで見た「無料」の入口が、平均して数十万円の支払いにつながっている例が現実にある、ということだ。情報商材に関する相談自体も、2022年度は約7,000件、2023年度は6,256件と高い水準が続いている。
「保証」という言葉の読み方
「月収◯◯万円保証」「稼げなければ返金」。安心させるための言葉だが、ここも一度立ち止まりたい。保証には必ず条件が付く。所定の作業時間をこなすこと、指定のプランを契約していること、決められた手順を守ること――その条件を一つでも外せば「保証の対象外」になる、という設計はめずらしくない。
だから見るべきは「保証」の二文字ではなく、その後ろに小さく書かれた条件のほうだ。誰が、どういう条件を満たしたときに、いくらを、いつまでに払うのか。そこが具体的に書面で説明されない「保証」は、根拠としては弱い。見せられた数字は、自分で条件を確かめられないかぎり、当てにしないでおきたい。
契約してしまっても、解除できる場合がある
すでに契約してしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つ。仕事を提供するという口実で勧誘し、その仕事に必要だとして商品やサービスを買わせる取引は、特定商取引法では「業務提供誘引販売取引」にあたる場合がある。この取引では、消費者庁の説明によれば、法律で定められた書面を受け取った日から20日以内であれば、書面または電磁的記録で契約を解除(クーリング・オフ)できるとされている。解除に伴い、業者は違約金や損害賠償を求めることはできない。
もっとも、これは契約の中身が一定の要件を満たす場合の話で、純粋な情報コンテンツの通信販売などには当てはまらないこともある。当てはまるかどうかの最終判断は、私ではなく正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。順序はこうなる。
- 追加の支払いを求められても、まずそこで止める
- 契約書面・広告・やり取りのメッセージを、消さずに残す
- クレジットや決済の元へ、状況を連絡する
- 消費者ホットライン「188」、または警察相談専用窓口「#9110」へ相談する
この記事のまとめ
- 「無料」には必ず原資がある。受講者を企業へ回して稼ぐ型か、後から高額契約を求める型か、自分がどちらの立場かを見る
- 「保証」は二文字ではなく後ろの条件を読む。SNS発の副業トラブルは平均契約額が約76万円(2023年度・国民生活センター)まで上がっている
- 契約後でも、業務提供誘引販売取引にあたれば書面受領から20日のクーリング・オフが使える場合がある。判断は正規窓口へ
結局のところ、その場で決めない・条件を書面で確かめる・利害のない誰かに一度話す。この3つに尽きる。