第345号黒岩検閲済 2026年7月15日 発行(不定期刊/前号:7月15日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|無料セミナー×高額サポートプラン契約の型

無料セミナーの電話番号入力から、AIで完全自動化と謳う物販ノウハウ紹介を経て高額サポートプラン契約へ進む型を、消費者庁と特定商取引法の一次情報で調べた

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黒岩警戒度

特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、お金の流れで調べた。無料のセミナーに登録すると、まず名前とメールアドレス、それから電話番号の入力を求められる。セミナーの中身は、AIが物販や転売の作業を「完全に自動化する」という説明が中心になる。参加した後、しばらくして届くのは、数十万円から百万円規模のサポートプラン、あるいはコミュニティへの案内だ。

「無料」の先に、何が置かれているか

セミナー自体は無料だ。ただ、無料で得られるのは情報というより、こちらの連絡先だと考えたほうがいい。名前・メール・電話番号の三点は、この先の個別のやり取りへ進むための鍵として使われる。

国民生活センターには、SNSや動画広告、検索で見つけた副業サイトで「簡単な作業で稼げる」とうたう案件に応募したところ、その先で高額な契約に進んだという相談が寄せられている(国民生活センター「スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル!」)。同センターの集計では、こうした副業サイトに関する相談件数は2020年度の1,341件から2023年度には3,694件へ増え、平均の契約購入金額も27万9,519円から105万9,658円へと膨らんでいる。SNSがきっかけとなった割合も23.0%から70.1%に上がった(同・報道発表資料)。

「AIが完全に自動化する」という言葉の重み

AIという言葉自体は、いまや珍しくない。ただ、「完全に自動化する」「誰がやっても同じ結果になる」という言い切りは、また別の話になる。

消費者庁は特定商取引法の誇大広告等の禁止について、「著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない」と説明し、具体例として「確実に収入が得られる保証がないにもかかわらず、『月収○○万円は確実』といった広告表示は本条に違反する」と示している(消費者庁「特定商取引法第54条(誇大広告等の禁止)逐条解説」)。「完全に自動化」という表現も、根拠を示せないまま結果を保証する言い方なら、同じ理屈の範囲にあると私は見ている。

同法は、利益を生ずることが確実だと誤解させる断定的な判断を示して勧誘することも、行政指示の対象になる禁止行為として挙げている(消費者庁「特定商取引法第56条(指示)逐条解説」)。つまり、AIという言葉を主語にしていても、「必ずこうなる」と言い切っている時点で、確かめるべき対象になる。

セミナーの先にあるのは「仕事」ではなく「契約」

この型の勧誘は「仕事を提供します」という体裁を取る。だが、消費者庁が示す業務提供誘引販売取引の定義は、そこを一段掘り下げている。「『仕事を提供するので収入が得られる』という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引」だという(消費者庁「特定商取引法ガイド・業務提供誘引販売取引」)。仕事の提供が先にあるように見えて、実際に発生するのは契約と支払いのほうだ。

消費者庁は2025年、簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者について注意喚起を出し、勧誘時の言葉として「アフィリエイトは、初心者でも簡単に稼ぐことができる」「このプランなら、月50万が当たり前になる」といった表現を挙げたうえで、高額なサポートプランの契約をしたが報酬が得られなかったという相談が各地の消費生活センター等に数多く寄せられていると述べている(消費者庁「簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者に関する注意喚起」)。AIや自動化という看板が変わっても、この構図自体は同じ型に収まる。

電話番号を渡した先で起きること

セミナー登録の時点で電話番号まで求められるのは、この先に個別の電話・LINEでのやり取りが控えているからだ。特定商取引法は、業務提供誘引販売業を行う者が「契約を締結させ、又は契約の解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない」と明確に禁じている(消費者庁「特定商取引法第52条(禁止行為)逐条解説」)。裏を返せば、こうした条文がわざわざ置かれているのは、それだけ執拗な勧誘が現実に起きてきたからだと考えていい。

この型の核 「AIが完全に自動化する」という言葉と、「仕事を提供する」という約束は、どちらも中身を確かめないまま信じるものではない。無料の入り口は、その先の契約へ進むための最初の一歩にすぎない。

契約してしまっても、20日間の扉は残っている

すでに契約書面を受け取ってしまった場合でも、すぐに手詰まりというわけではない。特定商取引法は、業務提供誘引販売取引について「法第55条第2項の書面を受領した日から起算して20日を経過するまでは、業務提供誘引販売取引の相手方は、書面によりその契約の解除を行うことができる」と定めている(消費者庁「特定商取引法第58条(クーリング・オフ)逐条解説」)。書面を受け取った日から20日以内なら、理由を問わず契約を解除できる、という制度がある。ここは覚えておいて損はない。

  • セミナーで電話番号を求められた時点で、その先に個別の勧誘があると想定しておく
  • 「AIが完全に自動化する」という説明を、誰がどう検証したものか自分に問う
  • 「仕事を提供する」という約束と、実際に求められる契約金額を切り離して考える
  • その場で契約せず、いったん持ち帰って家族や第三者に話してみる
  • 契約してしまっても、書面受領から20日以内ならクーリング・オフができることを覚えておく
迷ったとき用の一言 「その自動化、金額まで含めて見せてもらえますか」。答えられないなら、それはそれで一つの答えだと思う。(黒)

この記事のまとめ

  • 無料セミナーは、多くの場合その先の個別勧誘へ進むための入り口にすぎない
  • 「AIが完全に自動化する」という言い切りは、誇大広告・断定的判断の禁止に触れうる表現
  • 高額サポートプラン契約は業務提供誘引販売取引に当たりうる型で、書面受領から20日間のクーリング・オフが使える
  • 電話番号を渡した後の威迫的な勧誘は、特定商取引法で明確に禁止されている

無料であることは、その先の契約が適正である保証にはならない。金額と根拠を、まず自分の言葉で確かめてほしい。