第328号黒岩検閲済 2026年7月12日 発行(不定期刊/前号:7月12日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|累計売上実績訴求×AI輸出スクール勧誘の型

生徒の累計売上を実績に掲げる「AI輸出」スクールの勧誘が、無料セミナーの先の個別相談で数十万円の契約へ進む型を、誇大広告と表示義務の規制で調べた

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黒岩警戒度

SNS広告に「AIが完全自動化」「誰でも月100万円」という文字が並び、その下に生徒たちの「累計売上」という大きな数字が実績として掲げられている。海外への商品輸出を、AIを使った仕組みで自動化するという触れ込みのスクール勧誘だ。広告から公式LINEに登録すると、まず無料のセミナー動画が届き、その先にオンラインの個別相談が用意されている。特定の事業者や案件は名指しせず、この「累計売上を掲げる広告→LINE登録→無料セミナー→個別相談→高額スクール契約」という型を、表示のルールとお金の流れで調べた。

なぜ「累計売上」が実績として使われるのか

「売上」は商品やサービスが生んだ総額であって、そこから仕入れ・広告費・人件費などの経費を引いた「利益」とは別物だ。売上の総額が大きくても、経費を差し引けば手元にほとんど残らないということは普通にある。にもかかわらず、広告では生徒の累計売上や本人の年商といった総額だけが大きく示され、利益の水準には触れられないことが多い。この見せ方について、景品表示法は「実際のものよりも著しく優良であると示す…表示」を優良誤認表示として禁止している(消費者庁所管・不当景品類及び不当表示防止法第5条)。特定商取引法にも「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない」という誇大広告等の禁止規定がある(同法第12条)。で、その「累計売上」のうち、生徒の手元に残る利益の取り分は?——広告のどこにも書かれていないなら、それ自体が確認すべき点になる。

共感→無料公開→個別相談、という段取り

広告から公式LINEに登録すると、まず「不安に寄り添う」ような無料のセミナー動画が届く。その内容自体は一般論の範囲に収まっていることが多い。話が具体的な金額や契約に近づくのは、その先のオンライン個別相談からだ。消費者庁が公表した副業サポート事業者への注意喚起では、やり取りの中で「このプランなら、月50万が当たり前になる」といった言葉が使われていた実例が示されている(消費者庁・2025年6月26日)。個別相談という一対一の場は、外部の目が入りにくく、その場で契約の是非を決めさせる圧力がかかりやすい。

この型の核 大きな累計売上を実績として先に見せ、利益の中身にも、契約金額にも触れないまま個別相談まで読者を運ぶ。核心はそこにあると私は見ている。数字が大きいことと、自分の手元に残る利益が大きいことは、別の話だ。

広告に書かれていないもの

この型の広告には、事業者名や代表者名、所在地、連絡先といった表記が見当たらないことが多い。特定商取引法は通信販売の広告に一定の事項を表示するよう義務づけており(同法第11条)、消費者庁のガイドも「法人の場合には、名称、住所及び電話番号…代表者の氏名又は…責任者の氏名を表示する必要があります」と説明している。表記がないこと自体が直ちに違法とは言えないが、法律が求める最低限の情報すら示されていない相手に、数十万円規模の契約を任せられるかどうかは、また別の問題だと思う。

「AIで自動化」の中身をどう確かめるか

「AIが自動でやってくれる」という言葉も、それ単体では中身を確認しようがない。海外への転売・輸出のノウハウ提供をめぐっては、消費者庁が「虚偽・誇大な広告・表示及び不実告知」を理由に注意喚起を行った例がある(消費者庁・2021年4月28日)。個別相談で「必ず稼げる」「今のうちに始めれば」と断定的に言われた場合、消費者契約法は将来の変動が不確実な事項について断定的判断を提供することを、契約取消しの理由になり得ると定めている(同法第4条第1項第2号)。「自動化」の技術的な中身より先に、その場の言葉が断定になっていないかを確かめたい。副業や高額塾をめぐる相談は昔から絶えず、国民生活センターも「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話」に注意を呼びかけている(国民生活センター・2018年8月2日)。

迷ったとき用の一言 「利益ベースの実績を、書面でいただけますか」。累計売上ではなく利益の数字を、その場で出せない相手であれば、それが答えだと思う。

巻き込まれないための、ゆるい行動ルール

気合いで見抜こうとすると疲れるので、私は「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思っている。一番効くのは、その場で決めないこと。そのうえで、

  • 「累計売上」「年商」と「利益」は別物だと理解した上で、利益の実額を数字で確認する
  • 広告に事業者名・代表者名・所在地・連絡先が明記されているか確認する
  • 個別相談でその場の契約を求められても、いったん持ち帰る
  • 「必ず」「誰でも」と断定された発言は、メモに残しておく

この記事のまとめ

  • 「累計売上」「年商」は利益と別物。実績表示は景品表示法・特定商取引法の誇大広告規制の対象になり得る
  • 広告→LINE登録→無料セミナー→個別相談という段取りは、外部の目が入りにくい場で契約を急がせやすい

事業者名・利益の実額・断定的な発言の有無、この3点を確かめるだけでも、契約前に立ち止まる材料になる。