実在の登録制度を名乗る投資勧誘が、出金拒否のあとに“被害回復”名目の二次請求へ進む型を、金融庁の検索制度で確かめた
SNSで何度かやり取りを重ねて、話がLINEに移ったころ、「関東財務局に登録している投資助言業者です」と、登録番号まで添えて名乗られる。ここまで具体的だと、つい安心してしまう。だが、その番号は自分で確かめられるし、確かめるための制度まで公的に用意されている。特定の事業者は名指しせず、実在の登録制度の名前を借りて信頼を演出する勧誘の型を、金融庁の検索制度と公的機関の注意喚起から調べた。
型を、勧誘の流れから分解する
SNS(X・Instagram・Threads等)で親身な投稿やコメントを重ねて信頼関係をつくり、LINEへ誘導する——この導入部分は、以前SNSの投資勧誘DM、来る言葉がだいたい同じだったので5つにまとめたで見た「勧誘テンプレ」の型に近い。今回はその先、LINEに移ったあとに置かれる「実在の登録制度を騙る一文」に焦点を当てる。
共感からLINEへ、というおなじみの導線
最初は投資の話をしない。悩みへの共感や雑談から始まり、やり取りが個別のLINEに移ったころに、初めて「投資助言」の話が持ち出される。ここまでは、これまで何度も調べてきた勧誘テンプレと変わらない。
「登録番号第〇号」という、具体的すぎる安心材料
変わるのはここからだ。「関東財務局に登録済み、登録番号は第〇号」というように、実在する制度の名称と番号らしき数字を添えてくる。数字が具体的であるほど、根拠があるように見えてしまう——そこが狙いだろう、と私は見ている。
そもそも、投資助言を業とするには登録が要る
まず、名乗っている制度そのものを確認しておく。「投資助言・代理業を行うには、金融商品取引法第29条に基づく登録を受ける必要があります。」(財務省関東財務局)とある通り、投資の助言を業として行うこと自体が、法律上の登録要件を伴う行為だ。金融庁の「投資運用業等 登録手続ガイドブック」も、金融商品取引業には「第一種金融商品取引業」「第二種金融商品取引業」「投資運用業」「投資助言・代理業」の4種別があると説明している。つまり「登録番号を名乗る」という行為自体は、この制度が存在するからこそ成立する話だ。
登録番号は、自分で確かめられる——金融庁の検索制度
では、名乗られた番号をどう確かめるか。金融庁は「無登録業者が関与する詐欺的な投資勧誘等の被害から身を守るため、お取引の相手方の事業者が、登録等を受けている金融事業者かどうか確認する際などにご活用いただけます。」(「金融事業者一括検索機能」の運用開始について)として、業者名や登録番号を横断して検索できる制度を案内している。財務省関東財務局も「金融商品取引を行うにあたっては、まず、業者の登録の有無を確認してください。」(悪質な投資勧誘にご注意下さい!)と、取引の前に確認する行動そのものを呼びかけている。
「登録業者の名を騙る」——検索しても、油断できない理由
ここで確認しておきたい一文がある。「また、登録業者の名を騙る無登録業者もありますので、あわせてご注意ください。」(詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!/金融庁)。財務省関東財務局も同様に「登録を詐称している悪質な業者(無登録)もいますので、くれぐれもご注意ください。」と付け加えている。検索の仕方を知っていることと、検索結果を最後まで自分の目で照合することは別だ。実在する登録業者の名称や番号を、そのまま自分の名乗りとして流用する型がある以上、「名前と番号が一致していた」だけで安心せず、連絡先や所在地まで公表情報と突き合わせる姿勢が要る。
出金を止められたあとに来る、「被害回復」名目の二次請求
入金したあと、実際に何が起きるのか。「出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりするほか、これまで連絡が取れていたのに急に連絡が取れなくなるなどといったトラブルに遭った」(無登録業者との取引は要注意!!/金融庁)という報告がある。ここまでは、これまで何度も見てきた「出金拒否」の型と同じだ。
今回、特に確認しておきたいのはその先だ。消費者庁は「被害回復を謳った二次被害にあう可能性もありますので、併せてご注意ください。」(SNSなどを通じた投資や副業といった「もうけ話」にご注意ください!)と明示している。出金を止められて困っているところへ、「手数料や税金を払えば被害を取り戻せる」という体裁で、さらなる入金を求める二次請求が来る型だ。国民生活センターの相談事例には「出金手数料900万円と、運用している海外の株式市場に税金1,300万円を支払わないと出金できないと言われた」(国民生活センター)という、金額そのものが一次入金を大きく上回るケースも記録されている。同資料によれば、この種のSNSきっかけの相談件数は2022年度と比べて約9.6倍と急増しているという。
確認しておきたい3つのこと
名乗り方の巧拙を見抜こうとする必要はない。確かめたいのは、番号の実在と、請求の積み増しがないかの2点だ。
確認1:登録番号を、検索で自分の目で確かめたか
相手から聞いた番号や名称を、金融庁の検索制度で自分で調べる。連絡先・所在地まで公表情報と一致するかを見ておきたい。
確認2:出金の条件を、あとから追加されていないか
最初は説明のなかった手数料・税金・保証金といった名目が、出金の段になって急に加わっていないか。条件があとから増える時点で、いったん立ち止まっていい。
確認3:「返金・被害回復」を名目にした二次請求が来ていないか
出金できずに困っているところへ、「取り戻せる」と持ちかける連絡が別ルートから来ていないか。困っているタイミングを狙われやすい、ということ自体を覚えておいてほしい。
すでに入金してしまった方へ
すでに登録・入金し、出金を止められている、あるいは「被害回復」名目の連絡を受けている方へ。まず一つだけ確認してほしい。
- 追加の入金・追加の借入れをいったん止める
- 登録番号のやり取り・出金画面・請求の連絡はスクリーンショットで保全する
- 入金に使った銀行・クレジットカード会社・決済代行事業者に、被害の相談として連絡する
- 消費者ホットライン「188」や最寄りの消費生活センターに相談する
この記事のまとめ
- 投資助言業を名乗る勧誘には、実在する財務局への登録番号を添えて信頼を演出する型があるが、登録業者の名を騙る無登録業者もいると金融庁・財務局が明示している
- 登録番号は金融庁の検索制度で自分で確かめられ、名称・連絡先まで公表情報と照合することが確認の核になる
- 出金拒否のあとに「被害回復」を名目とした二次請求が来る型があり、関連する相談件数は2022年度比で約9.6倍に急増している(国民生活センター)
確かめるべきは、名乗り方の丁寧さではなく、登録番号の実在と、請求が後から積み増されていないかだ。