第202号黒岩検閲済 2026年6月22日 発行(不定期刊/前号:6月22日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|なりすまし投資の型

実在する金融業者の名をかたり、出金時に税金や手数料を求める“なりすまし投資”の型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「あの有名な金融グループの特別口座です」――そう言われて見せられたのは、本物そっくりのロゴと取引画面だった。SNSやマッチングアプリで親しくなった相手が、実在する海外の金融業者の名前を借りて投資へ誘う。看板に使われる会社名は案件ごとに違っても、お金の流れだけを抜き出すと、よく似た一つの型に収まる。特定の業者は名指しせず、この「実在業者になりすます投資」の型を、数字と仕組みからほどいた。

接触から誘導までは、いつも同じ流れになる

入り口はたいていSNSのDMか、マッチングアプリでの何気ない会話だ。すぐにお金の話はしない。何週間か親密にやり取りして、相手をもう「知らない誰か」とは思わなくなったころに、投資の話がそっと差し込まれる。

警察庁の説明でも、この順序は変わらない。「SNSのダイレクトメッセージで接触後、被害者をLINEなどの他のSNSに誘導し、『株や暗号資産に投資すれば利益が得られる』などと言葉巧みに被害者を信用させ」る、と整理されている。国民生活センターも、SNSをきっかけに著名人や実在の名をかたる投資勧誘トラブルが急増していると注意を呼びかけている。人への信頼と、誰もが名前を聞いた業者への信頼が重なった瞬間、自分で裏を取る一手間が抜け落ちる。だが、看板は借りられる。

なぜ「実在する業者の名前」をかたるのか

初めて聞く社名より、一度どこかで聞いた社名のほうが安心される。だから、わざわざ実在の金融グループの名やロゴ、それらしいライセンス番号まで持ち出す。金融庁の注意喚起にも、「既存の金商業者の名称やそれらしい名称を用いて信用させて投資を促し、特定の口座に入金を要求してくる」と、この手口がはっきり書かれている。

つまり、見せられている社名や画面は「本物への信頼を借りてきた借り物」かもしれない、ということだ。社名が立派であることと、いま目の前の相手がその会社であることは、まったく別の話になる。で、その口座にお金を入れる相手は、本当にその会社なのか。

本物の名前は、本物の証明にはならない ロゴも、社名も、ライセンス番号も、画面に表示するだけなら誰でもできる。確かめるべきは「見た目が本物か」ではなく「いま入金しようとしている相手が、正規の登録業者か」だ。名前の立派さは、判断材料にしないでおきたい。

画面上の利益と、出金できない仕組みを数字でほどく

取引画面では、預けたお金が順調に増えていくように見える。最初のうちは、少額なら出金にも応じてくれる。この「一度引き出せた」という体験が、信頼を決定づける。だが、ここに型がある。金融庁は「最初のうちは出金できるが、まとまった金額を出金しようとすると理由をつけて断られ、その後出金できなくなる」と、その段階を明記している。

数字で追ってみる。仮に100万円を預け、画面上では150万円に増えたとする。いざ全額を出金しようとすると、今度は「利益にかかる税金として、先に30万円を入れてほしい」と言われる。払うと次は「セキュリティ保証金」、その次は「凍結解除の手数料」――名目を変えながら、出金させる代わりに新たな入金を求め続ける。金融庁も「出金の際に税金等の名目で高額な金銭を要求される」のがこの手口の特徴だと述べている。

では、最初に引き出せた少額の利益は、どこから出ていたのか。運用で増えた金ではなく、自分が後から入れた入金の一部が戻ってきただけ――そう考えると、つじつまが合う。画面の数字は、いくらでも表示できる。で、その利益の出どころは?

出金時に「先に払ってほしい」が来たら 本来、利益にかかる税金を、業者へ前払いで振り込む必要はない。出金の条件として追加の入金を求められた時点で、それ以上は払わないでほしい。払えば払うほど、戻る見込みではなく、入れる金額のほうが増えていく構造になっている。

無登録という時点で、すでに分かれ目を越えている

そもそも、こうした業者の多くは日本の法令に基づく登録を受けていない。金融庁は無登録業者について、「出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりするほか、これまで連絡が取れていたのに急に連絡が取れなくなるなどといったトラブルに遭ったという声が多く寄せられています」と注意している。出金できない・連絡が途絶える、という結末は、型の最後にだいたい同じ形で現れる。

確かめ方は、難しくない。名乗っている社名や名称を、金融庁が案内する金融事業者の検索機能で照らしてみる。そこに見当たらないなら、それ自体が一つの答えになる。相手から送られてきたリンクではなく、自分で公式名を検索して開く――この一手間が、借り物の看板と本物を分ける。

この記事のまとめ

  • 実在する金融業者の名やロゴを借り、SNS・マッチングアプリで親密になってから投資へ誘うのが入口の型
  • 画面上は増えて見え、少額は出金できる。だが大きな額を出そうとすると「税金・手数料・保証金」名目で追加入金を求められ、やがて連絡が途絶える

見るべきは社名やロゴの立派さではなく、相手が正規の登録業者かと、その利益の出どころ。出金のために「先に払う」が来たら、そこで止める。これが分かれ目になる。

すでに入金してしまった方へ──初動の順序

気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。配当が来ていても、出金のために追加入金を求められたら、そこで止めてほしい。順序はこうなる。

  • ①「税金」「保証金」などの名目で求められても、追加で払わない
  • ②やり取り・取引画面・振込記録のスクリーンショットを残す
  • ③振り込んだ銀行や決済元に、できるだけ早く連絡する
  • ④警察相談専用電話「#9110」や、被害は警察へ相談する

投資・金融サービスのトラブルは金融庁の金融サービス利用者相談室へ、契約や支払いの相談はどこに言えばよいか分からないときの消費者ホットライン「188」へ。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。(黒)