第199号黒岩検閲済 2026年6月21日 発行(不定期刊/前号:6月21日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
詐欺アラート研究所詐欺アラート研究所の角印

FRAUD ALERT LAB ── 投資詐欺・悪質商法 調査報

一面縮刷版・記事一覧 > ニセ取引所サイト
調査報告|ニセ取引所サイト

「本物そっくりの取引所」へ誘うニセ暗号資産サイトの型を、お金の流れで調べた

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

「有名な取引所だから安心ですよ」。そう言われて案内された先が、名前もロゴも本物そっくりの、しかし本物ではないサイトだった――。今回はこの「ニセ取引所サイトへ誘い込む型」を、特定の案件を名指しせず、お金の流れから調べた。きっかけはマッチングアプリやSNSでの何気ない会話であることが多い。だからこそ、入口の段階で気づける形に噛みくだいておきたい。

まず、お金の流れを一本の線で見る

この型は、たいてい三つの段階に分かれている。順番に並べると、骨格が見えてくる。

第一に、出会い。マッチングアプリやSNSで知り合い、しばらく親しいやり取りを重ねる。第二に、誘導。「自分は投資で増やしている」と相手が切り出し、ある取引サイトを勧めてくる。第三に、入金。案内されたサイトの口座へ暗号資産や日本円を移す。

問題は第三段階だ。案内された先が、世界的に名の知られた取引所に似せて作られた「別物のサイト」であることがある。本物のドメインとよく似たアドレスで、画面も本物に寄せてある。つまり、入金した先は本物の取引所ではない、という形になる。で、その金はどこへ行くのか。金融庁も「既存の金融事業者を騙ったウェブサイト」への注意を呼びかけている。本物の名を借りた、別の器に流れていると見るのが自然だ。

なぜ「本物そっくり」がこれほど効くのか

うまい話には、毎回ちゃんと理由がある。この型が効くのは、二つの安心を同時に借りているからだ。

一つは、相手への安心。何週間もやり取りした相手を、人はもう「知らない誰か」とは思わない。もう一つは、看板への安心。誰もが名前を聞いたことのある取引所なら、自分で裏を取らずとも「大丈夫だろう」と感じてしまう。人への信頼と、看板への信頼。この二つが重なった瞬間、自分でアドレスを確かめる一手間が、すっぽり抜け落ちる。

けれど、看板は借りられる。名前もロゴも画面も、そっくりに作ることはできる。だから「有名だから安心」は、この型に対してはほとんど効かない。確かめるべきは名前ではなく、いま自分が入金しようとしている器が、正規の登録を受けた本物かどうか、である。

「そっくり」だけでは見分けられない 画面の作り込みや知名度では、本物と偽物を区別できない。金融庁は「日本の居住者を相手に暗号資産取引などを行う者は、日本の法令に基づき登録を受ける必要がある」とし、取引前に相手が登録業者か、無登録業者として警告を受けていないかを確認するよう求めている。見るべきは見た目ではなく、登録の有無だ。

数字でほどく――規模と「出金できない」構造

印象論ではなく、数字で置いておきたい。警察庁の集計(令和6年確定値)によれば、SNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は10,237件、被害額は1,271.9億円にのぼる。これはあくまで警察に届いた分だけの数字だ。

割り算をしてみる。1,271.9億円を10,237件で割ると、1件あたりおよそ1,242万円。届け出のあった一件ごとに、それだけのお金が動いている計算になる。母数の大きさが、この型の現実味を物語っている。

そして、この型にはもう一つ特徴がある。入金したあとだ。国民生活センターの越境消費者センターには「恋愛感情を持った相手から海外サイトを紹介され投資したが、出金できなくなった」「出金しようとすると手数料等さまざまな名目で追加の支払いを求められ、結局出金できなくなる」という相談が寄せられている。画面上の残高は増えていく。だが、引き出そうとすると別の名目の支払いを迫られる。預けた金を、引き出させてもらえない状態に置かれる、ということだ。では、その増えた残高は、誰の金から来ているのか。

確かめ方は、看板ではなく登録 本物かどうかは、知名度ではなく登録で確かめられる。金融庁の登録業者検索で、案内された業者名・サイトが正規の登録を受けているかを自分の手で照合してほしい。アドレスは相手から送られたリンクではなく、自分で公式名を検索して開く。この一手間が、看板を借りた偽物との分かれ道になる。

もし誘われたら/もう入金してしまったら

気合いで見抜こうとすると疲れる。だから、いつものクセにしてしまうのがいい。誘われた段階では、次の四つだけ頭に置いてほしい。

  • 取引サイトは相手のリンクから開かず、自分で公式名を検索して開く
  • 「有名だから」で済ませず、登録業者かどうかを金融庁の一覧で確かめる
  • 本物の取引所とアドレス(ドメイン)が一字一句同じかを見比べる
  • 急かされたら、その場で決めずいったん持ち帰る。利害のない誰かに一度話す

すでに入金してしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。残高が増えて見えても、出金のために追加入金を求められたら、そこで止めてほしい。順序はこうなる。

  • ① 出金手数料・税金などの名目でも、追加では払わない
  • ② やり取り・振込明細・サイトの画面を記録として残す
  • ③ 振り込んだ決済元(銀行・カード・取引所)に連絡する
  • ④ 警察・消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談する

私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

この記事のまとめ

  • この型は「出会い → 有名取引所そっくりの偽サイトへ誘導 → 入金」の三段階で動く
  • 人への信頼と看板への信頼が重なると、アドレスを自分で確かめる一手間が抜け落ちる
  • 見るべきは見た目や知名度ではなく、金融庁の登録を受けた本物かどうか

確かめ方は単純だ。相手のリンクではなく自分で公式名を検索し、登録の有無を照合する。急かされたら持ち帰る。この二つで、看板を借りた偽物の多くは入口で止められる。