第307号黒岩検閲済 2026年7月6日 発行(不定期刊/前号:7月6日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
詐欺アラート研究所詐欺アラート研究所の角印

FRAUD ALERT LAB ── 投資詐欺・悪質商法 調査報

一面縮刷版・記事一覧 > 出金相談×アカウント凍結の型
調査報告|出金相談×アカウント凍結の型

SNSのDMから始まる投資グループで、出金を尋ねた途端にアカウントを凍結され、勧誘者と連絡が取れなくなる型を、無登録業者の実態と統計で調べた

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

「SNSで知らない人から、投資に興味ありませんか、と声をかけられた」。そんな相談をまた耳にした。今号で扱うのは特定のサービスでも会社でもない。見知らぬDMから始まり、コピートレードで実績を見せ、出金を申し出た途端に連絡が取れなくなる——この型を、無登録業者の実態と統計から調べた。

見知らぬDMから、閉じたグループへ

警察庁は「見知らぬアカウントからダイレクトメッセージが届き、投資などの儲け話を持ちかけられた場合は、詐欺を疑ってください」と呼びかけている(警察庁 SOS47)。声をかけてくる相手は、こちらの投稿への反応をきっかけに接触してくることが多い。当初の接触ツールはインスタグラムが1,481件(23.1%)、LINEが1,120件(17.5%)、フェイスブックが997件(15.5%)と、SNS経由で全体の半数以上を占める(警察庁「令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の確定値」)。最初の一言に応じると、たいてい個別のやり取りへ移り、そこから投資の話が始まる。

「コピーするだけ」が、信じさせる仕掛けになる

「プロの取引をそのままコピーするだけ。知識も経験もいらない」。この気安さが、次の一歩を後押しする。招かれた先はクローズドなグループで、複数のアカウントを使って投資が成功しているそぶりを見せ、参加者が投資を行いたくなるように仕向けるケースもある、と金融庁は説明している(金融庁「SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください」)。並ぶのは含み益の画面ばかりで、こちらが検証できる数字ではない。それでも「自分もやってみようか」という気持ちを起こさせるには、十分な演出になる。

出金を尋ねた、その瞬間に何が起きるか

少額のうちは、出金の申し出は通ることが多い。問題は、まとまった金額を出金しようとしたときだ。国民生活センターに寄せられた相談では、「500万円ほどの利益があると言われ、その後、500万円の出金をしようとしたところ、税金として160万円が必要だと言われ、お金を振り込んだが、その後も160万円を支払うよう言われ、結局500万円は出金されなかった」という例が報告されている(国民生活センター「SNS上の投資グループで勧誘される詐欺的なFX取引トラブル」2024年)。理由をつけて追加の送金を求められ、それでも出金されない。ここまでは、まだ「交渉」の余地があるように見える段階だ。

「連絡が取れなくなる」は、次の段階の話 金融庁は無登録業者にまつわるトラブルとして、「出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりするほか、これまで連絡が取れていたのに急に連絡が取れなくなるなどといったトラブルに遭ったという声が多く寄せられています」と注意を促している(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)。出金の交渉が、ある日を境に交渉ですらなくなる。アカウントは凍結され、あれほど頻繁だったメッセージが、ふっと止む。

海外の看板は、無登録の答えにはならない

連絡が取れなくなった相手を振り返ると、「海外の金融当局から認可を受けている」という説明が添えられていたことに気づく場合がある。ただ、海外の認可があるかどうかと、日本の居住者への勧誘が適法かどうかは、別の話だ。金融庁は「日本で登録を受けずに金融商品取引業を行うことは違法です」とし、「取引を行う前に取引の相手が登録を受けているか確認して、無登録の海外所在業者との取引は行わないよう、注意してください」と述べている(金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」)。海外の看板の重さを自分で測るのは難しくても、日本の登録の有無なら確かめられる。私が最初に見るのは、いつもここだ。

数字でほどく——連絡が途絶える前に、規模で見る

警察庁の確定値によれば、令和6年のSNS型投資詐欺の認知件数は6,413件(+4,142件、+182.4%)、被害額は871.1億円(+593.2億円、+213.4%)と、前年から大きく増えている(警察庁 確定値統計・令和7年5月)。消費者庁も「投資や副業といった儲け話をきっかけにした消費者トラブルが年齢を問わず依然として続いています」と総論で注意を呼びかけている(消費者庁「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください」)。連絡が取れなくなってからでは、相手を特定する手がかりはぐっと減る。

もう一つ、経験則として付け加えておきたい。連絡が取れなくなったグループが、しばらくして別の名前・別の見た目で似た誘い文句を使っているのを見かけることがある。これは私が紙面を追ってきた中での印象であって、断定できる統計があるわけではない。ただ、看板が変わっても、入り口の言葉と出金の壁はよく似ている——そこだけは、覚えておいてもらえればと思う。

  • 見知らぬアカウントからの投資の誘いは、その時点で疑ってかかる
  • クローズドなグループで見せられる含み益の画面は、自分で検証できない数字だと考える
  • 少額の出金が通ったことを、まとまった金額の出金の保証にしない
  • 「海外の認可」を見せられても、日本の居住者への勧誘には日本の登録が別途必要だと知っておく
  • やり取りの記録・入出金の履歴は、連絡が途絶える前提でこまめに保存しておく
迷ったとき用の一言 「出金の申請番号と、対応してもらえる期日を教えてください」。この一言に、日付入りで淀みなく答えられる相手とだけ、次の話をすればいい。すでに連絡が取れなくなってしまった方は、やり取りの記録・入出金履歴・公式サイトの表示をまず保存したうえで、消費生活センターや警察に相談してほしい。迷えば消費者ホットライン188へ。

この記事のまとめ

  • 出金の申し出をきっかけに連絡が取れなくなるのは、無登録業者にまつわるトラブルとして金融庁も注意を呼びかける型である
  • 海外の認可があっても、日本の居住者への勧誘には日本の登録が別途必要になる

連絡が途絶える前に、やり取りの記録を残しておく。確かめられるのは、結局そこに尽きる。