第300号黒岩検閲済 2026年7月5日 発行(不定期刊/前号:7月5日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|海外未登録FX業者×出金拒否の型

SNSで見せる派手な暮らしから個別LINEへ誘い、海外の未登録FX業者に口座を作らせる勧誘の型を、登録制度と出金の壁で調べた

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黒岩警戒度

SNSで、高級車やブランド品と一緒に写る羽振りのいい暮らしぶりを見せられる。関心を持って連絡すると、親身な相談を装いながら個人のLINEへ案内され、しばらくして「海外の口座で運用しませんか」と持ちかけられる――特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れるこの型を、業者の登録制度と出金の段で何が起きるかから調べた。

なぜ“羽振りのいい暮らし”が入口に使われるのか

入口の画像そのものは、こちらからは裏を取れない。高級車の前で撮った写真も、ブランド品の並んだ棚も、借りるか借りずかは見た目では分からない。それでも「この人はうまくいっている」という空気を先につくることが、この型の狙いだと私は見ている。

警察庁は、SNS型のもうけ話について、知らないアカウントからメッセージが届く、グループチャットに勝手に招待される、投資アプリのインストールを勧められるという流れを注意例として挙げ、「無登録の事業者」による勧誘であることが多いと述べている。「誰でも簡単に稼げる」「元本保証」という言葉は、この型のどの案件でもほぼ同じ顔つきで出てくる。

「海外のライセンス」は、日本の登録の代わりにならない

ある程度話が進むと、「海外で認可を受けた正規の業者だから安心」という説明が添えられることがある。ここで確かめたいのは、その業者が日本の居住者を相手に商売をする資格を、日本の制度上も持っているかどうかだ。

金融庁は、業者の所在地が海外であっても、日本の居住者を相手方として金融商品取引業を行う場合は、日本の法令に基づく登録が必要と明記している(金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」)。海外のどこかで会社としての登録を受けていることと、日本の当局から金融商品取引業として認められていることは、別の話である。前者があるからといって、後者まであるとは限らない。

そして無登録の海外業者について、金融庁は投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず、登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高いと述べている。「海外のライセンス」という言葉だけを受け取って、日本での登録の有無を確かめないままにしていないか。そこが最初の分かれ目だ。

登録の有無は、自分で照らせる 金融庁は無登録で金融商品取引業を行っているとして警告書を発出した業者の名称等を公表している。案内された業者名を、口座を作る前にここと照らすだけで、入口で止められることがある。ただし掲載は警告書を出した時点の一覧であり、載っていないことが登録済みの証明にはならない点には注意しておきたい。

出金を申し出た段で、何が起きるか

この型の本題は、実は入金より出金の場面にある。金融庁は無登録業者との取引について、出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたり、これまで連絡が取れていたのに急に連絡が取れなくなるトラブルが多く寄せられていると挙げる。画面の中で残高が増えて見えても、出せなければ、それは手元のお金として戻ってこない。

金融庁は別の資料でも、出金の際に税金等の名目で高額な金銭を要求される、紹介者や業者と連絡が取れなくなる手口に注意を呼びかけている。名目は税金・手数料・保証金とさまざまだが、共通するのは「出金のために、さらに入金を求めてくる」という一点だ。で、その利益の出どころは?――増えて見える数字より、まずそこを確かめたい。

数字でほどく――統計に見る規模

国民生活センターは、SNSをきっかけに著名人を名乗る、あるいはつながりがあるとして勧誘される金融商品・サービスのトラブルについて、相談件数が2021年度52件から2022年度170件、2023年度は1,629件へと急増し、いったん振り込むと被害の回復が難しいと注意喚起している(2024年5月発表)。消費者庁も同様に、投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合は振り込まないでほしいと呼びかけている。個人名義の口座を挟む手口は、この種の勧誘で繰り返し確認されているパターンだ。

警察庁の確定値によれば、令和7年のSNS型投資・ロマンス詐欺(投資詐欺とロマンス詐欺を合わせた統計区分)は認知件数15,168件・被害額1,834.3億円で、いずれも前年から大きく増えている。SNS発の投資の誘いは、いまや珍しい例外ではなく、統計上も太い流れとして記録されている。

手を出す前に、自分で確かめられること

相場の知識がなくても、この型に対しては入口で確かめられることのほうが効く。順に一拍おいて見てほしい。

  • 勧誘の入口が、SNSの個人メッセージや個人のLINEではなかったか
  • 案内された業者名を、金融庁の無登録業者の公表や登録業者一覧と照らしたか
  • 「海外のライセンス」という言葉だけで、日本での登録の有無を確かめないままにしていないか
  • 出金の段で、税金・手数料・保証金などの名目で追加の入金を求められていないか
  • 入金先が、個人名義や聞いたことのない別会社名義になっていないか
迷ったとき用の一言 「本当に手堅い運用なら、こちらが登録の有無を調べる時間を嫌がらないはず」。確認を急かされたら、その急かしのほうを疑っていい。入れる前に迷ったら消費者ホットライン188へ。緊急でない相談は警察の#9110でもいい。

この記事のまとめ

  • 「海外のライセンス」は、日本の居住者を相手にする商売の登録があることを意味しない。会社としての海外登録と、金融当局からの営業許可は別の話だ
  • この型の本題は出金の段にある。税金・手数料名目の追加請求や連絡不通は、金融庁が繰り返し注意を呼びかけている定型のパターンである

羽振りのいい暮らしぶりも、海外のライセンスという言葉も、それ自体では何の裏付けにもならない。確かめられるのは、登録の有無・入金先の名義・出金時の要求内容だけだ。その場で決めず、いったん持ち帰って調べる。それで大半は防げる。