「無料で相場情報を配信」とうたい、未登録の海外業者へ口座を作らせるFX配信の勧誘の型を、お金の流れで調べた
「無料で、プロの相場情報を配信します」。SNSやWeb広告で、そう誘うFXの情報配信を見かける。今号で扱いたいのは特定のサービス名ではない。名前を伏せても残る一点、つまり「無料で配って回る運営費は、どこの・誰のお金から出ているのか」を、こちらから確かめられるかどうかだ。配信そのものより、その先で何をさせられるか。そこを、お金の流れでたどってみたい。
この配信が「無料」で回る、その運営費はどこから出ているのか
まず、無料には運営費の出どころがある。利用者から受信料を取らないなら、運営はどこかで別のお金を受け取っているはずだ。ここを飛ばさずに問いたい。
この型でよくあるのが、配信を受け取るには「指定の業者で口座を開き、入金してください」という段取りだ。つまり運営の収益は、利用者を業者へ送り込み、口座開設や取引が成立したときに業者から支払われる紹介料――そう考えると筋が通る。要するに、利用者を業者へ流すこと自体が、この配信の商売になっている。
すると、静かに困った誘因が働く。利用者にとって有利な相手ではなく、運営に払う紹介料が大きい相手へ流したくなる。そして紹介料を厚く払えるのは、国内の規制の外にいる業者――多くは登録を受けていない海外の業者のことがある。無料の裏で、利用者と運営の利害は同じ方を向いていない。
で、その「無料」の運営費の出どころは?――そこが説明されず、答えが「まず口座を作ってください」なら、いったん立ち止まっておきたい。
「勝率90%」「大手メディア掲載」を、数字と裏取りでほどく
この型は、入口で強い数字を見せる。「勝率90%」「登録者3,500人」「大手メディアに掲載」。どれも心を動かすが、順にほどくと足元が見える。
まず勝率は、儲けとイコールではない。10回のうち9回勝っても、その9回で少しずつ得て、負けた1回で大きく失えば、合計はマイナスになりうる。勝率という一つの数字だけでは、手元にお金が残るかは決まらない。見せられた数字は、勝ち負けの「回数」であって「損益」ではない、と切り分けたい。
それに、本当に高い確率で勝てる情報なら、他人に無料で配って回る理由がない。黙って自分で建てればいいだけだ。人を募ってまで配るのは、配ること自体に別の利益があるからではないか。私はそう見ている。
「登録者3,500人」「大手メディア掲載」も、こちらからは裏が取れない演出にすぎないことが多い。ロゴは貼るだけなら誰でも貼れる。金融庁も、「必ず○○円まで値上りする」など不確かなことを確実であるかのように伝えて勧誘することは法令で禁止されていると説明する(金融庁「“オイシイ投資話”にご注意」)。断定の強さは、安心材料ではなく注意の合図として読みたい。こうしたSNS発の勧誘の相談は、国民生活センターの集計で2021年度52件・2022年度170件・2023年度1,629件と急増し、平均契約購入金額は約687万円にのぼる(2024年5月時点の集計)。
なぜ“未登録の海外業者”だと、預けた金は戻りにくいのか
送客先が「登録を受けていない海外の業者」だと、話は一段重くなる。まず制度から確認したい。金融庁は、日本の居住者を相手にFX取引などの金融商品取引業を行う者は、日本の法令に基づく登録を受ける必要があると明記している(金融庁「無登録業者との取引は要注意」)。裏を返せば、登録のない相手を日本の居住者に勧める時点で、すでに前提が崩れている。
そして、実際に問題が出るのは出金の段だ。金融庁は同じ資料で、預けた資金を出金しようとしたときに出金の拒否や法外な手数料を請求されたり、急に連絡が取れなくなるトラブルが多く寄せられていると挙げる。相手が海外にいれば、被害の回復はいっそう難しくなる。画面の残高が増えて見えても、引き出せなければ、それは自分のお金として戻ってこない。
幸い、相手が無登録かどうかは自分で確かめられる。金融庁は無登録で金融商品取引業を行っているとして警告した者の名称等を公表している(金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」)。口座を作る前に、送客先の名前をここと照らすだけで、入口で止められることがある。
手を出す前に、自分で確かめられること
難しい相場の知識はいらない。この型に対しては、入口で確かめられる項目のほうが効く。順に一拍おいて見てほしい。
- 配信元と「送客先の業者」が、金融庁の登録を受けているか(登録の有無と無登録業者の公表で照らす)
- サイトに事業者の名称・住所・電話番号(特商法の表記)があるか。通信販売では事業者の氏名(名称)・住所・電話番号などの表示が必要とされる(消費者庁)
- 「無料なのに高勝率」「今日中の人だけ」と、考える時間を奪う急かしがないか
- 口座を作らされる相手が、いつのまにか“海外の業者”になっていないか
この記事のまとめ
- 「無料配信」の型は、利用者を業者へ送り込む紹介料で回ることがある。だから紹介料の厚い“未登録の海外業者”へ流したがる誘因が働く
- 確かめるのは相場の腕ではなく、送客先の登録の有無・特商法の表記・急かしの有無。口座を作る前に、名前を金融庁の公表と照らす
無料の配信そのものより、その出口で「どこの業者に、いくら入れさせられるか」を先に見る。お金の流れをたどれば、たいていの答えは入口に出ている。