「自動売買で誰でも稼げる」とうたいながら、運営者も特商法の表記も確かめられない勧誘の型を、お金の流れで調べた
SNSの広告や知人からの紹介で「FXの自動売買システムを使えば、知識がなくても自動で稼げる」と誘われ、LINEに登録する。そこから「システム導入費」「ライセンス料」といった名目で、最初のお金を求められる――。よく見かける流れだ。今号で扱いたいのは、特定のサービス名ではない。名前を伏せても残る一点、つまり「その費用を、誰に・何の名目で払っているのか」を、こちらから確かめられるかどうか。そこをお金の流れの側から淡々と見ていく。
払う相手の名前を、確かめられるか
この型でまず引っかかるのは、お金を払う相手の正体が、いつまでも輪郭を結ばない点だ。やり取りはLINEの担当者や「サポート」だけ。会社名や運営者の氏名、所在地、連絡先がはっきりしない。あるいは書いてはあるが、登記や登録を当ててみると裏が取れない。インターネットで商品やサービスを売る通信販売には、特定商取引法に基づいて事業者名・所在地・連絡先などの表記が求められるが、その表記そのものが欠けている、というケースも少なくない。
そもそも、FXや暗号資産の取引・投資の助言や運用を業として行うには、日本では登録が要る。金融庁は、SNSなどで知り合った相手からの勧誘について「取引する業者が日本で登録を受けていない違法な業者であったり、詐欺等をしているおそれもあります」と注意を促している(金融庁、2023年)。同じく金融庁は、「日本で登録を受けずに金融商品取引業や暗号資産交換業を行うことは違法です」とも明記する(金融庁、2024年更新)。勧められたサービスの運営者名が、これらの登録に見当たらない。それだけで、距離を取る理由になる。
「必ず儲かる」「月利○%」という言い方そのものが、立ち止まる理由
勧誘の入口では、たいてい大きな数字が出てくる。「ほったらかしで月利数十%」「誰でも必ず増える」。まず、割り算をしてみてほしい。仮に「ひと月で資産が三倍」なら、その調子で半年複利で回すと元手は七百倍を超える計算になる(3を6回かけると729)。そんな運用が本当に手元にあるなら、人を募って導入費を集める必要はなく、黙って自分で回しているはずだ。で、その利益の出どころはどこなのか。
「必ず儲かる」という断定の言い方は、法律の側から見ても引っかかる。消費者庁の逐条解説によれば、消費者契約法は「将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること」を勧誘時の問題行為として挙げており、それで誤認して契約した消費者は意思表示を取り消すことができると定めている(消費者庁「消費者契約法逐条解説」第4条、2023年)。投資の利益は本来「不確実」なものだ。それを「必ず」と言い切る時点で、説明として無理がある、と私は見ている。
お金の流れで見ると、入口は費用、出口でまた費用
整理すると、お金は〈SNS・LINE → 導入費・ライセンス料を払う → システムで利益が出たように見える → 出金しようとすると、また費用を求められる〉という向きに流れる。最初の少額は出金できることもある。だが額を増やしてから引き出そうとすると、手数料・税金・保証金といった名目で、出金の前にさらに入金を求められる――この出口の形は、相談現場でも繰り返し記録されている。金融庁は、無登録業者などとの取引で「出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりする」リスクを挙げている(金融庁、2024年更新)。国民生活センターにも、利益が出たので引き出したいと伝えたところ「税金や保証金を立て続けに請求され、合計約170万円をクレジットカードで支払った」という相談が記録されている(国民生活センター、2022年)。
規模も小さくない。消費者庁は、SNSなどを通じた投資・副業の「もうけ話」について、相談件数が前年度に比べて大きく増えていると注意を呼びかけている(消費者庁、2024年)。つまり「出金の段でまた費用を求められる」のは、特定の一社の事故ではなく、この型に共通して観測される出口の形だということだ。お金が増えて見えても、現金として戻ってくる経路がそもそも作られていなければ、それは投資ではなく、ただの一方通行の送金になる。
払う前にできる、確認の手順
気合いで見抜こうとすると疲れる。確かめられる事実だけを、順番に当てていけばいい。
- 運営者名・会社名・所在地・連絡先と、特定商取引法に基づく表記が示されているかを確認する
- その名称が、金融庁の登録(暗号資産交換業/金融商品取引業)に載っているかを照らす。無登録で金融商品取引業を行う者の名称も公表されている
- 「必ず」「誰でも」「月利○%」といった断定の言い方が出たら、利益が不確実である前提と矛盾していないかを疑う
- 導入費・出金手数料を急かされたら、その場で決めず、利害のない第三者に一度話す
この記事のまとめ
- 払う相手の身元と登録が確かめられないなら、それだけで距離を取る理由になる
- 入口で導入費、出口でまた費用――この一方通行の流れは、この型に共通する出口の形
確かめるのは二つだけ。運営者が確認できる登録業者か、そして残高を条件なしで引き出せるか。どちらかが欠けたら、払う前に止まる。