「即日5万円」「月収70万円」と“稼げる金額”を断定する副業広告の型を、お金の流れで調べた
「1日5分でOK」「即日5万円」「月収70万円アップ」。スマホの広告でそんな副業を見かけ、案内に乗ると、最初に出てくるのは数百円の“教材”だった――。特定のサービス名を名指しで「詐欺だ」と言うつもりはない。私が調べたいのは、名前を伏せても残るこの“型”を、お金の流れの側から見るとどうなるか、という一点だ。とくに気になるのは、広告が「稼げるかもしれない」ではなく「いくら稼げる」と、金額そのものを言い切ってくることだ。
この広告は、どんな言葉で始まるのか
まず、入り口の言葉を並べてみる。だいたい決まっている。「簡単」「すぐ」、そして具体的な金額。消費者庁は簡単な副業をうたい高額なサポートプランを契約させる事業者への注意喚起(消費者庁・2025年)で、「このプランなら、月50万が当たり前になる」「儲けが出なければ返金保証がある」「初心者でも簡単に稼ぐことができる」といった勧誘文句を、注意すべき手口として具体的に挙げている。
こうした言葉は、いま入り口でよく使われている。国民生活センターはスキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル(国民生活センター・2024年)で、勧誘に「『簡単に稼げる』『気軽に稼げる』といった表現」が使われると整理し、相談が「2020年末1,341件」から「2023年末3,694件」へ増えたと記録している。さらにSNS経由で相談に至った割合は「2020年末23%」から2024年7月末で「70.1%」に上がっているという。声をかけてくる経路も、入口の言葉も、年々はっきりしてきている。
で、その「即日5万円」は、どこから出るのか――数字でほどく
広告が見せる金額と、こちらが実際に動かすお金は、向きが逆になりやすい。ここを数字で考えてみたい。
入り口は、たいてい軽い。数百円の教材や「トライガイド」を買わせ、そこから先で本題が出てくる。国民生活センターは「簡単にもうかる」という情報商材とサポートプラン契約(国民生活センター・2021年)で、「初めから高額契約を勧誘するのではなく、無料や少額の情報商材を販売してから高額契約を勧誘する事例がある」と記す。少額の教材は、利益を生む商品というより、次の高額契約への“呼び水”になっている、ということだ。
その高額契約が、いくらになるのか。先ほどの国民生活センターの集計(2024年)では、平均契約購入金額が「2020年末279,519円」から「2024年7月末1,059,658円」へと上がっている。入り口は数百円なのに、出口は平均で100万円を超える。「即日5万円」が入ってくる前に、それを大きく上回る額が先に出ていく構図になりやすい。で、その「月収70万円」の出どころは?――広告の数字ではなく、自分が払う側の金額を先に並べてみてほしい。
“稼げる金額の断定”は、広告としてどう扱われるか
収入額を言い切る広告は、表示のルールの面でも問題になりやすい。消費者庁の特定商取引法ガイド「通信販売」(消費者庁)は、通信販売の広告について「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止している、と説明している。実際には条件しだいで届かない金額を、誰でも届くかのように見せる表示は、この線に触れうるということだ。
そして、ネットで申し込む多くは通信販売にあたる。同じ消費者庁のガイドは、通信販売には法定のクーリング・オフ制度がなく、返品の可否は事業者の特約しだいだとする。つまり「気軽に始めて、ダメなら解約すればいい」という前提が、そもそも崩れていることがある。契約後に取り消せるとはかぎらない以上、確かめるのは入る前だ。(電話や対面でのサポート契約など、勧誘の態様によっては別の扱いになる場合もある。最終的な判断は窓口に確認してほしい。)
入り口は、たいていSNSとLINE
声がかかる場所も、だいたい同じだ。消費者庁はSNSなどを通じた「もうけ話」への注意(消費者庁)で、SNSをきっかけに副業や投資の話をすすめられる相談が寄せられているとし、「儲け話をすすめられたら、まずは疑いましょう」と呼びかけている。広告からLINE登録へ、登録すると「○万円プレゼント」――この“特典”は、連絡先を渡させて勧誘の土俵に乗せるための入り口になっていることが少なくない。プレゼントや「選ぶだけ」で始まる型は、別稿(「選ぶだけで即日◯万円プレゼント」とうたう副業オファーの型)でも扱った。
すでに申し込んでしまった方へ
もし、もう数百円の教材を買ってしまっていたら。あるいは、その先の契約を勧められて迷っているなら。まず一つだけ。「もう少し払えば取り返せる」と言われても、そこで止めてほしい。支払い能力を超える契約のために借入をさせる手口もある(国民生活センターは借金をさせる副業・投資勧誘への注意(2023年)を出している)。順番はこうなる。
- 高額サポートや追加費用を求められても、それ以上は払わない
- 消費者金融などから借りてまで契約しない
- 広告・申込画面・やり取り(チャット、振込記録)を消さずに残す
- 支払った決済元(銀行・カード会社)と、正規の窓口に連絡する
迷ったときは、消費者ホットライン188(いやや)、緊急でない相談は警察#9110。私には個別の解決はできない。最終的な判断は、正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。
この記事のまとめ
- 「即日5万円」「月収70万円」と“稼げる金額”を言い切る広告は、消費者庁・国民生活センターが手口として記録している
- 入り口は数百円の教材でも、出口の平均契約額は100万円超。お金は広告の数字と逆向きに、先に出ていく
- 収入額の断定は表示ルールに触れうる。通信販売にクーリング・オフはなく、確かめるのは入る前
金額を言い切られたら、その数字の根拠と、自分が先に払う総額を並べてみる。すでに払っていても、まず「これ以上払わない」。記録を残し、決済元と正規の窓口へ。