「自動で稼ぐFXツール」を初期費用で買わせ、出金の段でさらに費用を求める勧誘の型を、お金の流れで調べた
SNSやLINEで「ほうっておくだけで自動で増えるFXのツールがある」と誘われ、システム使用料やライセンス料の名目で数万円を払う。最初は画面の残高が増えていく。ところが、いざ出金しようとすると「手数料を先に」「税金を払えば解除される」と追加を求められ、やがて連絡が取れなくなる――。こういう相談が届く。特定のサービス名を名指しで「詐欺だ」と言うつもりはない。私が調べたいのは、名前を伏せても残るこの“型”を、お金の流れの側から見るとどうなるか、という一点だ。
入口は「無料」、最初に出てくる費用は「ツール代」だ
流れはだいたい決まっている。まずSNSの広告やLINEで「初心者でも簡単」「完全自動」と声をかけ、無料登録へ誘う。距離が縮まったころに、「このツールを動かすには使用料がいる」と、ライセンス料やシステム導入費の名目で初めて費用が出てくる。本来、自動売買のソフトそのものは無料や低額で出回っているものが多い。にもかかわらず、数万円から数十万円を先に求められる時点で、一度立ち止まりたい。
件数も記録されている。国民生活センターは、SNSなどをきっかけに「簡単に稼げる」とうたう副業の相談について、2020年末の1,341件から2023年末には3,694件へ増え、平均契約購入金額も約27万円から約106万円へ上がったと注意喚起している(2024年)。少額の入口から、最終的にまとまった金額の契約へ進む――この二段構えがよく見える数字だ。
で、その「自動で増えていく利益」の出どころは?
この型でいちばん人を信じさせるのは、入金後しばらく「儲かって見える」ことだ。ツールが動いているように見え、画面の数字は増える。だが、ここで一度考えたい。
その残高は、ツールが市場で実際に生んだ利益なのか。それとも、運営側の用意した画面にそう表示されているだけなのか。専用アプリやサイトの中の数字は、運営側がいくらでも書き換えられる。つまり、自分の口座へ引き出せて初めて「ある」と言える金で、画面の中の数字は、まだ何の保証にもならない。
“出金”の段で、お金の向きが逆になる
この型がいちばんはっきり姿を見せるのは、出金しようとした瞬間だ。これまで小さく出金できていたのに、まとまった額を引き出そうとすると、急に条件が増える。「保証金が必要」「税金として何%かかる」「先に手数料を入れれば解除される」。つまり、引き出すために、また入れさせる。お金の向きが、出る側から入る側へ逆になるわけだ。
国民生活センターも、SNS上の投資グループで勧誘されるFX取引のトラブルとして、「利益が出たように見えても出金できない、追加の税金や手数料を求められる、業者と連絡が取れなくなる」事例を記録している(2024年)。金融庁も、無登録業者との取引で「出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりする」リスクを挙げている。最初に払うツール代だけで終わらず、「もう少し投資すれば成功する」と追加を重ねさせるのも、同じ流れの一部だ。「出金するために、さらに払ってください」と言われたら、そこが型の正体が出る場所だ。そこからは、一円も追加しないことを先に決めてほしい。
確かめられるのは、まず「登録の有無」だ
相手の実態を一つずつ調べるのは難しい。だが、専門でない人でもその場で確かめられる入口がある。登録の有無だ。
他人の資金を預かってFXなどの取引を行ったり、投資の助言や運用を業として行ったりするには、金融商品取引業の登録が必要になる。金融庁は、登録を受けずにこうした勧誘を行う業者について「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」として、警告した業者の名称一覧を公表している。すすめられたツールの運営者名が、この無登録業者の一覧に載っていないか。これは費用を払う前に、自分で照らし合わせられる。
もう一つ。運営会社の住所も連絡先もはっきりしない相手や、海外に置かれた無登録の業者とのトラブルは、日本の窓口から手が届きにくく、資金の回収が極めて難しい。「自動で増えるツール」だと言いながら、誰がどの登録のもとで運営しているのかが説明されない――そう感じたら、それ自体が一つの答えだと思っている。で、そのツールが生むという利益は、結局どこから来るのか。そこが語られない話には、いったん近づかないでおきたい。
もし、すでに払ってしまっていたら
すでにツール代や追加費用を払ってしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。「出金には税金が」と言われても、そこで止めてほしい。順序はこうなる。
困ったときの正規の窓口ははっきりしている。消費者庁はSNSなどを通じた投資・副業の「もうけ話」への注意と、消費者ホットライン「188」を案内している。緊急でない相談は、警察相談専用電話「#9110」が使える。
費用を払う前に、立ち止まって確かめたいこと
- 運営者名が、金融庁の無登録業者の一覧に載っていないか(FX・投資助言・運用は登録が必要)
- 残高は画面の数字だけか、自分の口座へ実際に引き出せているか
- 「完全自動」「必ず増える」「初心者でも簡単」と、考える時間を奪う言葉が混ざっていないか
- 「ツールを動かすために」「出金するために」と、先に払うことを求められていないか
- 運営会社の住所・連絡先・運営者の素性をたどれるか
この記事のまとめ
- 無料登録→「ツール代・使用料」で初期費用→「最初は儲かって見える」→出金時に手数料・税金で追加、が一つの型
- 確かめる入口は「登録の有無」。出金のために追加で払えと言われたら、そこで止めて正規窓口へ
本当に自動で増える仕組みなら、わざわざ初期費用をとって他人に売る理由がない。出どころと登録を、払う前に確かめておきたい。