LINEに誘い込み、無登録の“FX取引所”アプリで含み益を見せる勧誘の型を、お金の流れで調べた
「LINEのグループに入れば、プロのトレーダーが手取り足取り教えてくれる」。SNSの広告やダイレクトメッセージからそう誘われ、案内された“FX取引所”のアプリに入金すると、画面の残高はみるみる増えていく——。特定のサービス名を名指しで「詐欺だ」と言うつもりはない。私が調べたいのは、名前を伏せても残るこの“型”を、お金の流れの側から見るとどうなるか、という一点だ。
この勧誘は、どう動くのか
まず、入り口から出口まで流れを並べてみる。順番はだいたい決まっている。
SNSの広告やDMで接触し、そこからLINEへ移す。警察庁はSNS型投資詐欺(警察庁・SOS47)の手口として「SNSのダイレクトメッセージで接触後、被害者をLINEなどの他のSNSに誘導し」と説明している。グループに入れられ、講師役や“先輩会員”の成功談を浴びるうちに、少額から始める運びになる。
最初は、儲かったように見える。国民生活センターも著名人なりすまし投資勧誘の急増(国民生活センター・2024年)として「最初は儲かったように見せかけ、追加入金を促す」型を記録している。画面の含み益は増え、出金もできる——少額のうちは。
問題は、まとまった額を出そうとしたときだ。警察庁の同じ資料は、出金の段になって「『保証金が必要です』『この手続きには税金として●%の額がかかります』などと言われ、指定された口座に複数回にわたって振り込んでしまいます」と記す。払っても、次の名目が出てくる。出金できない理由として「システムエラー」「復旧費用」が持ち出される型は、別稿(偽の取引所アプリの型)でも扱った。
で、その“FX取引所”は、登録業者か
ここがいちばん確かめやすい。日本でFXや株、暗号資産の取引を業として扱うには、登録がいる。金融庁は無登録業者との取引は高リスク(金融庁)で「日本の居住者を相手に、株取引やFX取引、暗号資産取引などの金融商品取引業・暗号資産交換業を行う者は、日本の法令に基づき、登録を受ける必要があります」と明記している。
そして、無登録の相手で起きるトラブルは、先ほどの“出口”とぴたりと重なる。同じ金融庁のページは「預けた資金を出金しようとしたときに……出金の拒否や法外な出金手数料を請求されたりするほか……急に連絡が取れなくなる」と書く。アプリの画面がどれだけ精巧でも、登録がなければ、この型の入り口に立っていることになる。
登録の有無は、自分で調べられる。金融庁は無登録で金融商品取引業を行う者の名称等(金融庁)を公表していて、警告を出した業者の名称が一覧で載っている。逆に、正規の登録業者は金融庁の登録業者一覧で逆引きできる。アプリを入れる前に、その運営者の名前で一度だけ照合する。これだけで入り口の多くは塞げる。
画面の含み益は、誰の金から出ているのか——数字でほどく
アプリに表示される利益は、本当に市場で生まれたものなのか。ここを数字で考えてみたい。
仮に「毎月10%増える」と見せられたとする。1か月で1割。複利で回すなら、1.1を12回かける——1年でおよそ3.1倍になる計算だ。そんな運用が誰にでもできるなら、人を募らずとも黙って自分で回しているはずだ。では、その配当の原資はどこから来るのか。新しく入った人の入金を、先に入った人の“含み益”に見せているだけなら、出どころは運用益ではない。
規模も小さくない。警察庁の集計によると、令和7年のSNS型投資詐欺は認知件数・被害額の確定値(警察庁・PDF)で認知9,523件、被害総額は約1,288億円、既遂1件あたり平均はおよそ1,358万円と公表されている。入り口はネット広告とDMが大半で、近年は振込だけでなく暗号資産で送らせる形が前年の約2.5倍に増えたともある。送金経路が暗号資産に変わっても、型そのものは変わらない。
で、その利益の出どころは?——画面の数字ではなく、お金の流れで一度たどってみてほしい。
「必ず儲かる」「元本保証」という言葉そのものが信号
最後に、言葉の話をしておく。金融庁は詐欺的な投資勧誘等にご注意ください(金融庁)で、「上場確実ですので、必ず儲かります! 元本も保証します!」という言い回しを、詐欺的商法の典型例として挙げている。
これは単なる誇張ではない。先行きの不確実なことについて「必ず上がる」と断定して勧誘する行為は、金融商品取引法の禁止行為(断定的判断の提供)にあたる。消費者庁もSNSの「もうけ話」にご注意(消費者庁)として、SNS経由の投資・副業話に注意を呼びかけている。「必ず」「元本保証」は、安心の根拠ではなく、むしろ近づかないための目印だと考えていい。
すでに入金してしまった方へ
もし、もう振り込んでしまっていたら。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。「あと少し払えば出金できる」と言われても、そこで止めてほしい。順番はこうなる。
- 追加入金を求められても、それ以上は払わない
- やり取り(チャット・送金記録・アプリの画面)を消さずに残す
- 振り込んだ銀行・カード会社など、決済元に連絡する
- 警察・消費生活センターなど、正規の窓口に相談する
迷ったときは、消費者ホットライン188(いやや)、緊急でない相談は警察#9110。私には個別の解決はできない。最終的な判断は、正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。
この記事のまとめ
- 入り口(広告・DM)→LINEグループ→“FX取引所”アプリ→出金時に手数料・税金で止まる、が一つの型
- FX・株・暗号資産の取引業には登録が必要。運営者名で無登録業者リストを照合すれば、入金前に確かめられる
- 画面の含み益より、配当の出どころを追う。「必ず」「元本保証」は近づかないための目印
すでに入金していても、まず「これ以上払わない」。記録を残し、決済元と正規の窓口へ。順番を間違えないことが先だ。