第259号黒岩検閲済 2026年6月30日 発行(不定期刊/前号:6月30日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
詐欺アラート研究所詐欺アラート研究所の角印

FRAUD ALERT LAB ── 投資詐欺・悪質商法 調査報

一面縮刷版・記事一覧 > 暗号資産の型
調査報告|暗号資産の型

「上場前の今だけ入れる」新トークン勧誘の型を、お金の流れで調べた

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

「まだ上場していない新しい暗号資産(トークン)に、今のうちだけ入れる」——そんな誘いを、最近またよく見かけます。案件名は伏せますが、入りの言葉から最後の場面まで、流れがどれも不思議なくらい似ています。個別の良し悪しを言う前に、まずお金がどこへ向かうのかだけ、淡々と追ってみます。

「必ず上場する」「◯倍になる」──ICO型勧誘に出てくる言葉

新規トークンの勧誘で判で押したように出てくるのが、「上場予定」「先着限定」「今だけ」、そして桁外れの利回りです。これは私の感想ではなく、行政の注意喚起にも同じ言い回しが事例として載っています。

金融庁・消費者庁・警察庁の3省庁が連名で出した暗号資産に関するトラブルにご注意ください!(2021年更新)には、相談事例としてこうあります。「資産を40倍に増やすことができる、必ず上場する暗号資産への投資話がメッセージアプリを通じて届いた。」——「必ず上場」「40倍」。誘い文句のほうが先にテンプレ化している、ということです。

この型に共通する3点セット ①まだ世に出ていない(=こちらが価値を検証できない)/②期限と枠で急かす/③利回りが現実離れしている。この3つがそろったら、中身を調べる前に、まず一拍おく場面だと考えています。

入口はSNS・マッチングアプリ──“知り合った相手”から、という型

声がかかる場所も似ています。国民生活センターのSNSやマッチングアプリ、友人・知人からの誘いをきっかけとした暗号資産のトラブル(2022年)は、こう注意しています。「最近の相談事例をみると『SNSやマッチングアプリで知り合った相手に勧誘されて送金したが、出金できなくなった』など、SNSやマッチングアプリをきっかけとしたトラブルが目立っています」。

厄介なのは、その相手が誰なのか、こちらからは確かめようがないことです。同じ資料は「SNSやマッチングアプリのみでやり取りをしている場合、相手の本人確認をすることは難しく、トラブルになった際の対応が困難になることもあります」とも書いています。親身に見える相手ほど、後から連絡が取れなくなる——そこまで含めて“型”だと思っておいたほうがいいです。

で、その利益の出どころは?

私がいつも最初に止まるのはここです。毎月何%という配当を払い続けるには、その原資がどこかから来ていないといけません。新しいトークンは、まだ事業も市場もありません。では誰が払うのか。多くの場合、答えは「あとから入ってきた人の入金」です。新規の入金で先に入った人へ配る——回り続けるあいだは成り立ちますが、入金が止まれば一瞬で崩れます。

3省庁の同じ資料には、「セミナーやSNS等を通じて『絶対にもうかる』等と持ち掛けられて投資をしたが、返金されない・出金できない等トラブルになっているケース」も挙げられています。「絶対にもうかる」と言い切れる根拠は、突き詰めると“次の入金者がいる前提”だったりします。出どころの説明がふわっとしている時点で、利回りの数字は信じる材料になりません。

数字でほどく:「毎月20%」が一年でどうなるか

たとえば「毎月20%」をそのまま受け取って計算してみます。100万円を月利20%の複利で回せたとすると、1年後はおよそ891万円。元手の約8.9倍です。これがもし本当なら、世界中の資金が一瞬で集まり、誰も働かなくなります。そうなっていない時点で、その利回りは「払えない約束」だと考えるのが自然です。

画面の残高が増えていくのを見せられても、それは“数字が表示されている”だけで、引き出せるお金とは限りません。検証できない高利回りは、根拠としてはかなり弱い——ここは前にも書いたとおりです。

出金しようとすると始まる「追加入金」

そして、この型の出口はだいたい同じ場面で詰まります。国民生活センターの資料はこう述べています。「暗号資産の取引口座やアプリ上では利益が出ているように見えていても、出金しようとすると『手数料』『税金』『保証金』などの名目で請求されるケースもみられます」。

3省庁の注意喚起にも、「出金するための追加費用を請求され、トラブルになっているケース」「知人にもうかるからと暗号資産を勧められ振込んだが、出金するために追加の支払いが必要だといわれた」とあります。利益を引き出すために、さらにお金を入れさせる——これは回収というより、もう一段の入金を引き出す動きです。

出金時の合言葉に注意 「あと少し払えば全額出せます」は、最も警戒すべき一言です。本当に自分のお金なら、引き出すために追加で払う必要はありません。追加入金を求められた時点で、それ以上は入れずに記録を残し、下の窓口に相談してください。

登録の有無を、自分の手で確かめる

感情の前に、事実で一つ確認できることがあります。登録です。金融庁の暗号資産の利用者のみなさまへによれば、「平成29年4月1日から、『暗号資産』に関する新しい制度が開始され、国内で暗号資産と法定通貨との交換サービスを行うには、暗号資産交換業の登録が必要となりました」。つまり資金決済法に基づく登録制です。

登録がない相手はどうか。金融庁は無登録業者との取引は要注意!!(2024年更新)で、「登録を受けていない『無登録業者』は、投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず、登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高いと考えられます」としています。相手の名前を金融庁の登録一覧で引けるかどうか——これは誰でも、入金前にできる確認です。

入金の前に、この4つだけ

  • その利回りの「出どころ」を、相手が具体的に説明できるか(できなければ見送る)
  • 業者名が金融庁の暗号資産交換業の登録一覧にあるかを、自分で確認する
  • 「今だけ」「先着」で急かされたら、その場で決めずに一度持ち帰る
  • 出金時に手数料・税金・保証金など“追加入金”を求められたら、払わずに記録して相談する
困ったときの相談先 ひとりで抱えないでください。3省庁の案内では、金融サービス利用者相談室(金融庁・0570-016811)、消費者ホットライン(局番なしの188)、警察相談専用電話(#9110)が挙げられています。警察庁によれば「#9110」は発信地を管轄する警察本部の総合窓口につながります。

この記事のまとめ

  • ICO・新トークン勧誘は「上場予定 → SNSで接触 → 高利回り → 残高が増えて見える → 出金時に追加入金」という流れになりがち
  • 高利回りの“出どころ”が説明できず、業者が無登録なら、入金は見送る

確かめられるのは結局、利回りの出どころ・金融庁の登録・急かしの有無。この3点です。迷ったら、入れる前に公的窓口へ。