「完全無料で、誰でも月に何倍」とうたうFX自動売買の勧誘の型を、お金の流れで調べた
「完全無料」「スマホひとつで、誰でも月に何倍にも」。SNSやLINEで、FXの自動売買をうたう誘いを見かける。今号で扱いたいのは、特定のツール名ではない。名前を伏せても残る一点、つまり「無料で始められるはずなのに、その利益や運営費は、どこのお金から出ているのか」を、こちらから確かめられるかどうかだ。最初に断っておくと、私はどのサービスも名指しで「詐欺だ」とは言わない。調べるのは、案件をまたいで繰り返し現れる勧誘の“型”のほうである。
入口が「完全無料」なら、運営はどこで儲けているのか
この型は、入口がきまって「無料」だ。「登録は0円」「いまだけ無料招待」。お金の話を後ろに隠して、まず人を集める。だが、無料で配って回る相手にも、運営の費用はかかっている。では、その無料の運営費は、どこから出ているのか。たいていの場合、答えは「あとから入る、あなたのお金」である。
無料で入らせたあと、「本格的に稼ぐにはシステム導入費が必要」「上位ライセンスを買えば利益が増える」と、要求は少しずつ上がっていく。国民生活センターにも、「何もしなくてももうかる」とFX自動売買システムの購入を勧められたという相談が寄せられている。「無料」は、入口に置かれた呼び込みであって、出口ではない。そう見ておきたい。
「月に何倍」を、まず複利でほどく
この型のもう一つの目印が、利益の数字の大きさだ。「月利○%」「ほうっておくだけで資産が何倍に」。うまそうに聞こえるが、こういう数字は、いったん割り算と掛け算でほどいてみるといい。
「必ず儲かる」「確実に増える」と言い切って勧めること自体にも、問題がある。不確実なことを確実だと誤解させて勧誘する「断定的判断の提供」は、金融商品取引法(第38条第2号)で禁じられている行為だ。言い切りの強さは、安心の根拠にはならない。むしろ、言い切るほど一度立ち止まりたい。
「無料」のあとに積み上がる費用と、出金の壁
費用を払い、画面の残高が増えても、最後に出てくるのが「出金の壁」だ。いざ引き出そうとすると、今度は別の名目でお金を求められる。金融庁は、SNSやマッチングアプリ発のFX・暗号資産勧誘について、「投資したお金が引き出せない、出金の際に税金等の名目で高額な金銭を要求される、紹介者や業者と連絡が取れなくなる」といったトラブルが生じていると注意している。
導入費、ライセンス料、そして「出金には税金・手数料を先に」。名目は変わっても、流れは一方通行で、こちらから相手へお金が渡っていくだけだ。一度送ったお金は、戻ってくる保証がない。SNSをきっかけにした金融商品・サービスの相談は、国民生活センターによれば2021年度52件、2022年度170件、2023年度1,629件と急増しているという(2024年)。入口の「無料」と、出口の「戻らない」。その落差そのものが、この型の特徴だと私は見ている。
確かめられるのは「登録の有無」
当たり外れや画面の数字より先に、こちらで確かめられる事実がある。登録の有無だ。金融庁は、「日本の居住者を相手に、株取引やFX取引、暗号資産取引などの金融商品取引業・暗号資産交換業を行う者は、日本の法令に基づき、登録を受ける必要があります」としている。そして無登録業者との取引では、出金の拒否や法外な出金手数料を請求されるリスクがあると挙げている。
つまり、すすめてきた運営者やツールの提供元が、登録を受けた業者なのか。金融庁は無登録で金融商品取引業を行う者の名称等も公表している。「無料」のうちに、相手の会社名・所在地・連絡先と、この登録の有無を、自分の手でたどって確かめておきたい。立派なアプリの見た目や、丁寧な担当者の対応は、登録の裏付けを意味しない。
入れる前に、立ち止まるための確認
気合いで見抜くのは疲れる。だから、いくつかを「いつものクセ」にしておくのがいい。一番効くのは、その場で決めないことだ。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、急かしの大半はかわせる。そのうえで、
- 「完全無料」でも、後から費用が出てくる前提で、相手の身元と登録の有無を先に確かめる
- 「月に何倍」「月利○%」など、複利でほどくと成り立たない数字は、それ自体を黄信号として扱う
- 「必ず」「確実」「元本保証」と言い切る勧誘が出たら、言い切りの強さを根拠と取り違えず、一拍おく
- ツールの提供元・運営会社が、金融商品取引業などの登録を受けているかを、自分でたどって確認する
- 出金時に「税金・手数料・保証金を先に」と求められたら、それ以上は払わず、相談先に連絡する