実在の投資サイトや著名人を“なりすます”勧誘の型を、お金の流れで調べた
まじめな投資情報サイトを開くと、たいてい片隅に「無断転載を禁じます」と書いてある。あらためて読むと、少し不思議な一文だ。なぜわざわざ、自分のサイトの文章や画像を「勝手に使うな」と断らなければならないのか。今号は、その一文の裏側にある「なりすまし」という勧誘の型を、お金の流れで調べた。特定の業者は名指ししない。あくまで型の話である。
なぜ「無断転載禁止」と書く投資サイトが多いのか
答えは単純で、名前やロゴ、実績の画像を勝手に持ち出して「本人のふり」をする者が、現実にいるからだ。借りられた側はたいてい被害者である。金融庁も、偽アカウントや偽広告は公式サイトの写真を無断転載して本人を名乗ることがあると注意を促している。証券会社や業界団体の名称まで持ち出した偽広告も確認されているという。
つまり「無断転載禁止」の一文は、まともなサイトが自分を守るための防波堤だ。裏を返せば、本物の名前は、それだけ騙りに使われやすい。名前やロゴが立派なことは、本物である証拠にはならない。
なりすまし勧誘の型を、順番にほどく
派手な事件に見えても、入口の運びはいつも同じ型に収まる。順番に分けてみる。
①名前と実績を借りる(無断転載)
有名な投資家の顔写真、よく知られたサイトのロゴ、「先月はこれだけ増えた」という明細風の画像。これらを集めて広告や偽アカウントを作る。国民生活センターも、著名人の名前や顔写真を無断で用いて信用させようとする勧誘トラブルが急増していると報告している。借り物の権威で、まず警戒心をゆるめにくる段階だ。
②LINEの非公開グループへ移す
広告やDMで反応すると、すぐに表の場所から個別のやり取りへ移される。多いのが、LINEの非公開グループやプライベートチャットへの誘導だ。国民生活センターは、グループへ誘導され、少額の利益を見せられて追加入金を誘われるパターンを挙げている。第三者の目が届かない場所に連れて行くこと自体が、ひとつの狙いである。
③少額の“儲け”を見せ、追加入金へ
グループの中では、サクラ役が「自分も増えた」と書き込み、成功しているそぶりを見せる。最初はこちらの口座にも少額の“利益”が振り込まれることがある。だが金融庁は、高額を入金した後に連絡が取れなくなったり、出金時に手数料や税金の名目でさらに入金を求められると説明する。預けた金を、引き出させてもらえない状態にされる、ということだ。
数字でほどく──被害の規模と、「出どころ」
このSNS型投資詐欺は、もう小さな話ではない。警察庁の集計によると、令和7年のSNS型投資詐欺の認知件数は5,604件、被害額は552.2億円(暫定値)で、前年から件数は46.5%、被害額は37.8%増えている。
割り算をしてみてほしい。552.2億円を5,604件で割ると、1件あたりおよそ985万円になる。平均で約1千万円が動いている計算だ。ここで一度、立ち止まって考えたい。本物そっくりの名前を借りてまで人を集め、少額の“配当”を先に見せる——その配当は、いったいどこから出ているのか。運用で増えた金なのか、それとも後から入ってきた人の金なのか。偽の利益を表示し、引き出しの段で手数料を求めて、やがて連絡が途絶えるという運びを見るかぎり、私は前者だとは思えない。
本物と偽物を、自分の手で見分ける
名前は借り物かもしれない、という前提で確かめれば、見分けはそれほど難しくない。気合いで見抜くのではなく、いつものクセにしてしまうのがいい。
- 名乗られた人物・サイトの公式アカウントや公式サイトで、注意喚起が出ていないかをまず確認する
- 取引相手が金融商品取引業などの登録業者か、金融庁の登録業者検索で照らし合わせる
- ロゴや「増えました」の実績画像は、こちらで裏が取れない以上、根拠として弱いと考える
- LINEの非公開グループへ誘われたら、参加する前に一拍おく
- 少額でも「お金を入れる=信頼の入口」だと意識しておく
そして、なりすましは「他人の名前や写真を勝手に使う」行為そのものでもある。文化庁も、他人の肖像や著作物の無断使用は著作権法などにより罰せられることがあると説明している(不正競争防止法上の問題になる場合もある)。本物のサイトが「無断転載禁止」と書く意味は、ここにある。
迷ったとき、あるいはすでに振り込んでしまったときは、一人で抱えないでほしい。消費者ホットライン「188(いやや)」で、最寄りの消費生活センターにつながる。投資の勧誘に絞った相談なら、金融庁の「詐欺的な投資に関する相談ダイヤル」(0570-050588)もある。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。
この記事のまとめ
- 「無断転載禁止」と書く投資サイトが多いのは、名前やロゴを騙る“なりすまし”が現実にあるから。名前が立派でも本物の証拠にはならない
- 型は「本物の名前を借りる → LINEの非公開グループへ移す → 少額の儲けを見せて追加入金させ、出金させない」
- 令和7年のSNS型投資詐欺は5,604件・552.2億円(暫定値)。1件あたり平均およそ985万円が動いている
確かめ方は結局、公式で注意喚起を見る・登録業者か照らす・配当の出どころを数字で問う。立ち止まって、迷えば188へ。