「自動売買で勝てるFX」をうたう投資勧誘の型を、その勝率と送金先から調べた
「自動売買のソフトを入れておくだけで、FXが勝手に勝ってくれる」「うちのサイン配信どおりに売り買いすれば、勝率は高い」。為替の値動きを題材に、そう誘ってくる話がある。今号は特定の業者を名指しせず、この「自動売買・サイン配信で勝てるFX」をうたう勧誘の型を、その“勝てる”という数字がどこから来たのか、そして払ったお金がどこへ行くのか、という二点から調べた。
「勝てるFX」の数字は、どこから来ているのか
まず、見せられる「勝率90%」「先月もこれだけ増えた」という数字は、勧誘する側が自由に作れる表示にすぎないことがある。実際の取引明細とは限らないし、こちらからは裏が取れない。画像はいくらでも作れる。検証できない数字は、根拠としてはかなり弱いと考えていい。
そもそも、価格が「必ず上がる・必ず下がる」と言い切る勧誘は、法律で禁じられている。証券取引等監視委員会も、不確実な事項について断定的判断を提供して勧誘する行為は金融商品取引法で禁止されている、と説明している。条文そのものは金融商品取引法 第38条(e-Gov法令検索)にある。つまり「必ず勝てる」「高勝率で確実」と言ってくる時点で、その言い方自体が一つの黄信号になる。
数字でほどいてみる。仮に「自動売買で月利20%」と見せられたとする。1か月で2割。複利で1年回せば、1.2を12回かけて、元手は約8.9倍になる計算だ。そんな仕掛けが本当にソフト一つで動くなら、人を募って手数料を取らずとも、黙って自分で回しているはずである。で、その利益の出どころは?――そこが説明されない数字は、まず疑ってかかっていい。
入口は「親しくなった人」や「無料グループ」からのことが多い
この型は、いきなり振込を求めてはこない。多くはSNSやマッチングアプリで知り合い、しばらく親身なやり取りを重ねたあとで、「自分も使っている」とFXの自動売買やサイン配信のグループへ誘ってくる。投資の先生や、実在する金融業者の関係者を名乗ることもある。信頼が育ったころに本題、という運びだ。
こうした入口の被害は、もはや一過性ではない。国民生活センターは「SNSをきっかけとして著名人を名乗る・つながりを示唆するなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増している」と注意を促している(2024年)。FXに絞った見守り情報でも、「SNS上の投資グループ内で勧誘されるFX取引に注意」(国民生活センター 2024年)として、グループ内で勧められるまま送金してしまう相談が紹介されている。親しさやグループの一体感そのものが、入口に使われている。
「自動売買(EA)」「放置で増える」という言葉の、どこが問題か
「ソフトに任せれば、寝ている間も勝ってくれる」。耳に心地よい言葉だが、金融庁はこの手の誘い文句を名指しで挙げて注意している。金融庁「FX取引・暗号資産投資の勧誘にご注意」(2023年)では、「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」などと勧誘し、後に紹介者や業者と連絡が取れなくなる事例が示されている。手放しで増え続ける運用というものは、まず存在しないと見ておきたい。
そもそもFXは、放置で安全に増えるような商品ではない。金融庁は、外国為替証拠金取引について「相場が急激に変動したときは、証拠金の額を上回る損失が生じることがあります」と説明している。預けた以上のお金を失うこともある、ということだ。少ない元手で大きな取引を動かす仕掛け――借りた金を上乗せして、勝っても負けても振れ幅を大きくする仕組み――が前提にあるからである。それを「放置で勝てる」と言い換える時点で、仕組みの説明をひとつ飛ばしている。
本物かどうかは、勝率ではなく「登録」で確かめる
では、何を見ればいいのか。きれいな取引画面でも、先生の肩書きでも、見せられた勝率でもない。日本でFX(外国為替証拠金取引)を扱うには、登録が要る。金融庁は「外国為替証拠金取引は、金融商品取引法の登録を受けた業者でなければ行うことができません」と明記している。登録のない相手とのFX取引は、その時点で前提が崩れている。
とりわけ、海外にあるとされる無登録の業者には注意したい。金融庁は「無登録業者は、投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず、登録を受けている業者と同等の態勢が整っていない可能性が高い」と説明している(2023年)。確かめる手段は用意されている。相手が名乗る社名や登録番号は、金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」で、自分の手で照らし合わせられる。実在する業者の名が出てきても、目の前で勧誘している相手がその業者本人とは限らない。社名ではなく、登録の有無そのものを確かめたい。
すでに送金してしまった方へ
もう振り込んでしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。「あと少しで出金できる」「税金を払えば戻る」「もう一度入金すれば凍結が解ける」と言われても、そこで止めてほしい。順序はこうなる。
- 追加の入金は、どんな名目でもいったん止める
- やり取りの画面・振込の記録・相手の連絡先や口座名義を、消される前に残す
- 振り込んだ銀行や決済の窓口に、できるだけ早く連絡する
- 公的な窓口に相談する――消費者ホットライン「188」、警察相談専用電話「#9110」、FXなど金融取引なら金融庁の金融サービス利用者相談室
私には個別の解決はできない。最終的な判断は、正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。
この記事のまとめ
- 「勝率90%」「自動で増える」といった数字は勧誘側が作れる表示のことがあり、検証できない。「必ず勝てる」と言い切る勧誘自体が法律で禁じられている
- 入口はSNS・マッチングアプリで親しくなった相手や「無料グループ」からが多く、実在業者の名がかたられることもある
- 本物かどうかは勝率ではなく登録で確かめる。日本でFXを扱うには登録が必要で、無登録の海外業者は高リスク。出金時に追加入金を求められたら、そこで止める
見るべきは右肩上がりのチャートでも勝率でもなく、振込先と、その数字の出どころ。確かめられないなら、その場で動かさない。