第218号黒岩検閲済 2026年6月23日 発行(不定期刊/前号:6月23日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|偽の取引画面の型

投資アプリの画面で“資産”が毎日増えていくのに出金できない型を、その数字の出どころから調べた

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黒岩警戒度

専用のアプリやサイトを入れると、自分の資産が画面の中で毎日少しずつ増えていく。グラフは右肩上がり、含み益には緑色の数字。見ているだけで気分がいい。ところが、いざ引き出そうとすると、なぜかそこだけが進まない。今号は特定の業者を名指しせず、この「画面では増えているのに出金だけできない」という型を、その数字がどこから来たのかという一点から調べた。

画面の数字は、どこから来ているのか

まず押さえておきたいのは、アプリやサイトに表示される「資産」「含み益」は、運営する側が自由に書き込める表示にすぎない場合がある、ということだ。実際の市場で売り買いが成立した結果とは限らない。つまり、画面の数字を見せられても、こちら側からは裏が取れない。

国民生活センターには、こうした相談が実際に寄せられている。「マッチングアプリで知り合った人から勧められた暗号資産の投資サイトに手数料を支払ったが、出金できない」(国民生活センター 消費者トラブル解説集)という形だ。画面の中で増えていく数字と、手元に戻ってくるお金は、別物として見ておきたい。

数字でほどいてみる。仮に画面に「月利15%」と出ていたとする。1か月で1割5分。複利で1年回せば、1.15を12回かけて、元手は約5.3倍になる計算だ。そんな運用が本当に手元のアプリ一つでできるなら、人を募らずとも、黙って自分でやっているはずである。で、その利益の出どころは?――そこが説明されない数字は、まず疑ってかかっていい。

入口は「親しくなった人」からのことが多い

この型は、いきなりアプリを勧めてはこない。多くはSNSやマッチングアプリで知り合い、しばらく親身なやり取りを重ねたあとで、「自分も使っている」と画面を見せてくる。実在する金融業者の担当者を名乗ることもある。信頼が育ったころに本題、という運びだ。

こうした入口の被害は、もはや一過性ではない。警察庁の暫定値(令和7年)では、SNS型投資詐欺の認知は9,538件・被害額は約1,274.7億円に上る。国民生活センターも、「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増−いったん振込してしまうと、被害回復が困難です!−」(国民生活センター 2024)と注意を促し、恋愛感情を利用する型については「『愛してるから投資して』っておかしくない!?」(国民生活センター 2022)というチェックリストも公表している。親しさそのものが入口に使われている、という点は覚えておきたい。

なぜ「出金」だけができないのか――お金の流れで見る

画面の数字と、現実のお金の流れを分けて並べると、形が見えてくる。入金したお金は、画面に映る「運用」には回っていないことがある。最初から個人名義の口座や、聞き慣れない会社名義、あるいは暗号資産に換えて海外へ――という流れだ。画面の含み益は、その送金を続けさせるための演出にすぎない、という見方ができる。

だから、出金のときだけ話が止まる。手元に戻すお金が、そもそも運用されていないからだ。そして多くの場合、ここで「税金」「保証金」「手数料」といった名目で、さらなる入金を求められる。出金させるためと言われて払っても、また別の名目が出てくる。お金は出ていく一方になる。

こうした「個人名義口座への入金」「暗号資産での送金」は、公的にも繰り返し警告されている。国民生活センター「SNSやマッチングアプリ、友人・知人からの誘いをきっかけとした暗号資産のトラブル」(2022)金融庁「第三者への資金移動が可能な暗号資産交換業者への不正送金対策の強化について」(2024)がそれだ。送金先が個人名義や暗号資産になった時点で、一度立ち止まりたい。

画面の利益は、引き出せて初めて利益 画面の中でいくら数字が増えても、それは利益ではない。手元の口座に戻ってきて、自由に使えるようになって、はじめて利益と呼べる。「増えている」と「引き出せる」は、別のことだ。出金しようとして一度でも追加入金を求められたら、そこで止めてほしい。

本物かどうかは、画面ではなく「登録」で確かめる

では、何を見ればいいのか。きれいなアプリの画面でも、担当者の肩書きでもない。日本で金融商品の取引を扱うなら、登録が要る。金融庁は「登録業者の名を騙る無登録業者もありますので、あわせてご注意ください」と注意喚起している。実在する業者の名前が出てきても、目の前で勧誘している相手がその業者本人とは限らない、ということだ。

確かめる手段は用意されている。金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」では、こう断っている。「掲載されている無登録業者は、警告書の発出を行った時点で無登録営業を行っていることが確認できた者に限られています。」「掲載されていない者でも、無登録営業に該当する行為を行っていることがあり得ますのでご注意ください。」――つまり、リストに載っていない=安全、ではない。登録の有無そのものは、金融庁が2026年に運用を始めた「金融事業者一括検索機能」などで、自分の手で確かめられる。

迷ったとき用の一言 「登録は受けていますか。社名と登録番号を教えてください」。本当に正規の業者なら、この問いを嫌がる理由はない。言いよどんだり、話をそらしたりしたら、それはそれで一つの答えだと思う。画面のグラフより、この一問のほうが確かだ。

すでに入金してしまった方へ

もう振り込んでしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。「あと少しで出金できる」「税金を払えば戻る」と言われても、そこで止めてほしい。順序はこうなる。

  • 追加の入金は、どんな名目でもいったん止める
  • やり取りの画面・振込の記録・相手の連絡先を、消される前に残す
  • 振り込んだ銀行や決済の窓口に、できるだけ早く連絡する
  • 公的な窓口に相談する――消費者ホットライン「188」、警察相談専用電話「#9110」、金融取引なら金融庁の金融サービス利用者相談室

私には個別の解決はできない。最終的な判断は、正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

この記事のまとめ

  • アプリやサイトに映る「資産」「含み益」は、運営側が書き込める表示のことがある。引き出せて初めて利益
  • 入口はSNS・マッチングアプリで親しくなった相手からが多く、実在業者の名がかたられることもある
  • 本物かどうかは画面ではなく登録で確かめる。出金時に追加入金を求められたら、そこで止める

見るべきは右肩上がりのグラフではなく、振込先と、その数字の出どころ。確かめられないなら、その場で動かさない。