第217号黒岩検閲済 2026年6月23日 発行(不定期刊/前号:6月23日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
詐欺アラート研究所詐欺アラート研究所の角印

FRAUD ALERT LAB ── 投資詐欺・悪質商法 調査報

一面縮刷版・記事一覧 > テーマ株便乗の型
調査報告|テーマ株便乗の型

「次に来るテーマ株を教えます」と“旬のテーマ”で誘う型を、お金の流れで調べた

公開 最終更新 読了 約6分
黒岩警戒度

「AI」「半導体」「宇宙」「データセンター」――そのときどきで“旬”とされるテーマ株を、ニュースまとめのように並べて見せるサイトや投稿がある。最近は記事そのものを自動で生成し、銘柄と「市場への影響」を機械的に要約して載せるものも増えた。問題はその先だ。「ここに載っていない、次に来るテーマ株を特別に教えます」と、別の場所へ誘う流れがしばしばくっついている。今号は特定のサイトや人物を名指しするのではなく、この“旬のテーマ”を入口にして「次の銘柄を教える」と誘う動きが、お金の流れで見るとどういう型なのかを淡々と調べてみた。

まず、「テーマ株まとめ」という入口の役割を見ておく

テーマ株のニュースを集めて並べること自体は、悪いことではない。情報を整理するのは便利だ。ただ、こうしたまとめが「入口」として使われるとき、役割が一つ変わる。読者に「自分はもう乗り遅れている」「みんなが買っているらしい」という焦りを持たせる装置になりやすいのである。

旬のテーマは、すでに値が動いたあとで話題になることが多い。つまり、まとめを見て「これから買おう」と思った時点で、早い人はもう仕込み終えている。そこへ「載っていない次の銘柄を教える」という誘いが重なると、構図はこうなる。先に知っている誰かがいて、後から知った人がその情報を欲しがる。お金がどちらへ流れる設計になっているかを、まず一度見ておきたい。

「次に来るテーマを教える」を、お金の流れで分解する

この調査報がいつも立ち止まる問いは一つだ。で、その利益の出どころは? 本当に「次に必ず上がる銘柄」を言い当てられる人がいるなら、その人は他人に教えず、黙って自分の資金で買えばいい。わざわざ大勢に教える理由があるとすれば、教えること自体、あるいは教わりに来た人の動きそのものが、その人の利益になっているからだ。

典型的には二つに分かれる。一つは、銘柄を教える対価として情報料・サロン会費・「特別な口座」への入金を求める形。もう一つは、自分が先に仕込んだ銘柄を大勢に買わせ、値が上がったところで売り抜ける形だ。どちらも、後から来た人の資金が先にいた人の利益に変わる点は同じである。新しい価値が生まれて全員が豊かになるのではなく、ただ移っているだけではないか――そこをまず疑いたい。同じ「銘柄を教える」入口については、別号で「無料で注目銘柄を教えます」という株情報サイトの勧誘の型も調べている。看板のテーマが変わっても、骨組みはよく似ている。

この型に共通する三点 旬のテーマ名がAIでも半導体でも、誘いの流れは似ている。①「今が旬」「乗り遅れるな」と銘柄の中身より時間で急がせる ②「ここに載っていない次を特別に教える」と限定感で別の場所へ連れていく ③そこで会費・情報料・指定口座への入金を求める。この三つがそろっていたら、テーマが何であれ、いったん手を止めたい。

そもそも「教える側」に、教える資格はあるか

見落とされがちだが、ここがいちばん大事だと私は見ている。日本の居住者を相手に、報酬を得て「この銘柄は上がる」と助言したり、資金を預かって運用したりするには、登録が要る。金融庁は「日本で登録を受けずに金融商品取引業や暗号資産交換業を行うことは違法です」とはっきり書いている(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)。つまり、無登録のまま有料で銘柄を指南する行為は、それだけで制度の線を越えている可能性がある。

「相手は海外にいるから日本の登録は関係ない」という説明にも、線が引かれている。金融庁は、業者の所在地が海外であっても、日本の居住者を相手に金融商品取引を業として行う場合は日本での登録が必要だと説明している(金融庁「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!」)。教えてくれる相手が登録業者かどうかは、確かめられる。「で、あなたは登録を受けていますか」と一度聞いてみる。それだけで、相手の反応が一つの答えになる。

登録の有無を、自分で確かめる 無登録で営業しているとして金融庁が警告した相手の名称は、無登録で金融商品取引業を行う者の名称等についてで公表されている。まずはここに名前がないかを見ておきたい。ただし同庁も断っているとおり、これは確認できた相手に限られ、「警告一覧に載っていない=安全」ではない。あくまで確認の入口として使いたい。

「旬のテーマ」を入口にした勧誘は、いま実際に多い

こうした入口を含むSNS型の投資勧誘は、被害として大きくなっている。警察庁の暫定値によると、SNS型投資詐欺の認知件数は9,538件、被害額は約1,274.7億円で、いずれも前年から増えている(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」)。1件あたりに直すと、およそ1,300万円を超える計算になる。旬のテーマは、見知らぬ相手から話しかける口実として使いやすい、という事情もあるのだろう。

相談の現場でも、この種のトラブルは急に増えている。国民生活センターは、SNSをきっかけに著名人を名乗る者などから勧誘される金融商品・サービスの相談が前年度の約9.6倍に増えたとして注意を呼びかけ、「必ずもうかると言われても、うのみにしないようにしましょう」と助言している(国民生活センター「SNSをきっかけとして……金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」)。投資に「必ず」はない。「次に必ず来るテーマ」という言い方そのものが、まず立ち止まる合図だと思う。

巻き込まれないための、ゆるい確認手順

気合いで見抜こうとすると疲れる。だから「いつものクセ」にしてしまうのがいい。いちばん効くのは、その場で買わないこと。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、旬のテーマに飛び乗る失敗の大半は防げる。そのうえで、次の点を確かめてほしい。

  • 「今が旬」「次に必ず来る」と急かされたら、銘柄の中身より、急がせる理由のほうを疑う
  • 「ここに載っていない銘柄を特別に教える」と別の場所へ誘われたら、一拍おく
  • 教えてくれる相手に「登録を受けているか」を確かめ、答えをはぐらかされたら近づかない
  • 会費・情報料・指定口座への入金を求められたら、そこで止める

すでに会費を払ってしまった方、あるいは指定された口座に振り込んでしまった方へ。気持ちは分かるが、順序だけ先に置く。取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。①追加で払わない ②やり取りや振込の記録を残す ③振り込んだ決済元に連絡する ④警察相談専用電話「#9110」や消費者ホットライン「188」に相談する。私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。

迷ったとき用の一言 本当に確かな機会なら、こちらが数日考え、相手が登録を受けているかを調べる時間を取ることを、相手は嫌がったりはしない。「今が旬」「あなただけ」と急かされたり、調べようとして不機嫌にされたら、それはそれで一つの答えだと思う。

この記事のまとめ

  • “旬のテーマ株まとめ”は便利だが、「次に来る銘柄を教える」と別の場所へ誘う入口にもなる。後から来た人の資金が、先にいた人の利益に変わる構図に注意したい
  • 有料で銘柄を指南するには登録が要る。海外業者でも日本の登録が必要。「で、あなたは登録を受けていますか」と一度聞く。SNS型投資勧誘の相談・被害は実際に急増している

結局のところ、その場で買わない・教える相手の登録を確かめる・会費や指定口座への入金はしない。この3つに尽きる。