第214号黒岩検閲済 2026年6月23日 発行(不定期刊/前号:6月23日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|指数連動の型

日経平均やS&P500に「連動」とうたう投資勧誘の型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「S&P500に連動するAIで年利30%」「日経平均が上がる局面だから今が買い時」「VIX(恐怖指数)で相場の急変を先読みできる独自ツール」――誰もが名前だけは知っている株価指数を看板に掲げる勧誘がある。指数の名そのものは公的で、客観的な響きを持つ。だからこそ、その名前を借りると、話の中身まで確かなものに見えてくる。サイトの名も、約束する利回りも案件ごとに違っても、お金の流れだけを抜き出すと、よく似た一つの型に収まる。特定の事業者は名指しせず、この「有名な指数の名で信用させ、その先で保証や有料サービスへ進ませる」型を、数字と仕組みからほどいた。

先に、立場をはっきりさせておきたい。日経平均株価やS&P500そのものを疑っているわけではない。指数は市場の値動きを測るものさしであって、それ自体は中立だ。問題は、その中立なものさしを「必ず増える」という保証や、素性の分からない有料サービスに接続させる、つなぎ方のほうにある。ものさしは正しくても、それを持っている人が信用できるとは限らない。

なぜ「指数の名前」が看板に使われるのか

理由は単純で、誰でも知っているからだ。日経平均もS&P500も、ニュースで毎日聞く。名前に聞き覚えがあると、人は「よく分からないもの」とは感じにくくなる。勧誘する側は、この「知っている安心感」を借りてくる。自分の素性を説明する代わりに、有名な指数の名を前に置く――そういう構図になっている。

そして、誰かになりすます手口は数字にも表れている。警察庁の確定値によれば、令和6年のSNS型投資詐欺で被疑者が詐称した職業は「投資家」が2,204件・34.4%で最も多い。著名人を装う例も12.0%ある。有名な肩書きや名前を借りて信用をつくる、というのは、指数名を借りるのと同じ発想だと私は見ている。

数字でほどく:「指数連動で必ず増える」を割り算する

「S&P500連動だから安心」と「年利30%を保証」が同じ広告に並んでいたら、まず立ち止まりたい。この二つは、よく考えると噛み合っていないからだ。

本物の株価指数は、上がる年もあれば下がる年もある。だからこそVIX(恐怖指数)のような「下落への警戒」を測る指標まで用意されている。指数は上下するものだ、というのが大前提なのである。にもかかわらず「その指数に連動して、必ず、毎年30%増える」と言うなら、それは指数の性質そのものと矛盾している。連動するなら、指数が下がった年には一緒に下がるはずだ。

利回りの数字も、割り算で見ておきたい。仮に「年利30%を確実に」が本当なら、100万円は複利で10年後にどうなるか。1.3を10回かける計算で、約13.8倍――1,380万円になる。そんな運用を本当に持っている人が、見知らぬ相手をSNSで募る理由は何か。黙って自分の金で回し、銀行から借りてでも増やすほうが早い。金融庁も「"必ず儲かる"、"安心・安全"と思わせるフレーズを並べて、投資したい気持ちを煽る」勧誘に注意を促している。で、その利益の出どころは?――指数が中立でも、この問いの答えは別に用意してもらわなければならない。

指数名と「保証」が同居していたら 有名な指数の名は「客観的で確か」という印象を運んでくる。その印象を、利回りの保証や「絶対に減らない」という約束に横滑りさせるのが、この型の入口だ。金融庁は「上場確実ですので、必ず儲かります! 元本も保証します!」といった断定的な勧誘文句を、詐欺的な投資勧誘の典型として挙げている。指数名で安心させ、保証で背中を押す。その二段構えに気づけたら、それだけで一拍おける。

見るべきは指数名ではなく「お金を払う相手」

指数の値そのものは、誰でも無料で確かめられる。日経平均もS&P500も、検索すれば今の値が出てくる。だから「うちなら指数を見せられます」ということ自体には、ほとんど価値がない。確かめるべきは指数ではなく、その先でお金を払う相手が何者かのほうだ。

株式やFX、暗号資産の取引・助言を仕事として行うには、登録がいる。金融庁は「日本の居住者を相手に、株取引やFX取引、暗号資産取引などの金融商品取引業・暗号資産交換業を行う者は、日本の法令に基づき、登録を受ける必要があります」と明示している。登録のない相手は、利用者保護の態勢が当局でも確認できない。有償で「この指数に連動した運用を」と踏み込んでくる相手が登録業者かどうかは、金融庁の無登録業者の名称一覧で照らし合わせられる。

被害の規模も、見ておきたい。警察庁の確定値では、令和6年のSNS型投資詐欺は認知6,413件・被害額871.1億円で、被害額は前年の約3倍に増えた。しかも500万円を超える被害が総額の93.3%を占める。少額で始めても、出口は高額になりやすい――数字はそう語っている。看板の指数名ではなく、料金の総額と、相手の素性を見るほうがいい。

もし勧誘を受けたら、立ち止まるための順番

気合いで見抜こうとすると疲れる。指数名が出てきたら、決まった手順に当てはめてしまうのがいい。一番効くのは、その場で決めないことだ。

  • 「連動」と「保証・必ず増える」が同じ話に同居していないか、一度ばらして見る
  • 約束された利回りを、自分の手で複利の割り算にかけてみる(1年で○倍になる計算か)
  • 指数の値ではなく、お金を払う相手が登録業者かを名称一覧で確かめる
  • 利害のない家族や友人に、一度そのまま話してみる
迷ったとき用の一言 有名な指数の名前は、本物だ。だが、その名前を口にしている相手まで本物とは限らない。名前を確かめる先を、指数からその人へ一つずらす。それだけで、見え方がだいぶ変わる。急かされたら、「一度、ゆっくり、しっかり考えて、慎重・冷静に判断」でいい。

この記事のまとめ

  • 有名な株価指数の名は中立で確か。問題は、それを「保証」や無登録の有償サービスに接続させるつなぎ方にある
  • 「指数連動」と「必ず増える」は性質が矛盾する。指数は下がる年もあるから、連動するなら一緒に下がる
  • 確かめるのは指数の値(無料で見られる)ではなく、お金を払う相手が登録業者かどうか

看板の名前ではなく、料金の総額と相手の素性を見る。迷ったら、その場で決めずに消費者ホットライン「188」に相談してほしい。