第209号黒岩検閲済 2026年6月22日 発行(不定期刊/前号:6月22日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|AI投資勧誘の型

「AIが選んだ銘柄」「AI半導体で必ず上がる」という投資勧誘の型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「最新のAIが選んだ注目株です」「AI半導体の波に乗れば、まず負けません」。SNSのタイムラインやDMで届く、こういう誘い文句をいくつか並べて読んでいました。すすめてくる銘柄も、運営の名前も案内ごとに違うのですが、お金の流れだけを抜き出すと、よく似た一つの型に収まります。特定の事業者やコインは名指しせず、この「AIという言葉で信用を肩代わりさせる」型を、数字と仕組みでほどいてみます。

どうして勧誘は「AI」を看板に掲げるのか

AIは、いま最も「賢くて、間違えなさそうな」響きを持つ言葉です。人がすすめると「本当に儲かるの?」と疑われるところを、「AIが分析した結果です」と言い換えると、判断の主体が見えない機械にすり替わる。疑う相手が消えるので、こちらの警戒心がゆるみやすい——たぶん、この看板にはそういう狙いがあるんだと思います。半導体やAIといった、実際に値動きのある旬のテーマと結びつけられると、「世の中の流れとして本当らしい」と感じてしまうのも、人情として分かります。

ただ、入口が新しくても、その先で起きていることは目新しくありません。金融庁は、「AI診断を謳い文句にウェブサイトへ誘い込み、分析レポートを配信すると偽ってSNSへ誘導し、投資話を持ち掛ける」手口を、具体的な勧誘例として注意喚起しています。「AIが選ぶ」という言葉そのものが、すでに勧誘の常套句として記録されている、ということです。

その被害は、いま実際にどれくらい起きているのか

「自分は引っかからない」と思いたくなりますが、SNSをきっかけにした投資勧誘の被害は、数字のうえで急に膨らんでいます。警察庁の確定値によると、令和6年(2024年)のSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は10,237件、被害額は約1,271.9億円にのぼり、前年からおよそ2.8倍に増えています。1日あたりにならすと、3億円を超えるお金が動いている計算になります。AIや半導体という旬の看板は、この大きな流れの「いまの入口」として使われている、と見ておくのが落ち着いた読み方だと思います。

「必ず上がる」「元本保証」――その言い切りが、実はサインです

この型の案内には、たいてい強い言葉が並びます。「必ず上がる」「AIだから損はしない」「元本は保証します」。読むと安心したくなるのですが、相場に「必ず」はありません。そして、ここがいちばん大事なところなのですが、こういう言い切りは、安心の材料ではなく、むしろ赤信号です。

これは気分の問題ではなく、ルールの問題でもあります。金融庁は、「『元本保証』『絶対に儲かる』などと説明して勧誘することは、禁じられています」と明示しています。投資の値動きという不確実なことについて「必ず」「絶対」と確実であるかのように告げて勧誘する行為——いわゆる断定的判断の提供——は、金融商品取引法で禁止されている行為です。AIが選ぼうが半導体だろうが、「必ず上がる」と言い切った時点で、そのルールに反しているか、ルールを知らずに語っているか、のどちらかだと考えていいと思います。

「AIが選ぶ」の中身を、お金の流れで見る この型では「AIが分析した」「独自アルゴリズムが選定」という言葉が信用の核になります。けれど、そのAIが何のデータを・どう処理して・なぜその銘柄に行き着いたのか、を確かめられる形で見せてくれることは、まずありません。確かめられないAIは、神様や占いと同じで、結論だけを信じさせる装置になります。見るべきは「AIが選んだ」という肩書きではなく、その利益が誰の・どのお金から出てくるのか、です。

誰に、いくら払うのか――相手の素性を見える事実で確かめる

もう一つ気になるのが、お金を預ける相手の素性です。「AI自動売買ツール」の運営や、紹介された取引口座が、どこの誰なのかがはっきりしない。代表者の名前も、会社の所在地も、AIの華やかな説明の陰でぼやけている、というのはよくある光景です。

ここでも、確かめる足場はあります。金融庁は、「日本で登録を受けずに金融商品取引業や暗号資産交換業を行うことは違法です」とし、取引の前に相手が登録を受けているか、無登録業者として警告を受けていないかを確認するよう促しています。登録のない相手にお金を預けると、調子よく「含み益」が増えていくのに、いざ出金しようとすると税金や手数料を理由に応じない、連絡が取れなくなる——という流れに入りやすい。金融庁は無登録で勧誘を行う業者の名称を一覧で公表していますから、AIの説明に感心する前に、まず相手の名前をこの一覧と照らしてみるのが順番です。

迷ったとき用の一言 「本当に良いAIの分析なら、こちらが出どころや会社を調べる時間を取ることを嫌がらないはず」。AIという言葉で急かしたり、即決を求めたりするなら、それはそれで一つの答えだと思います。賢いのはAIで、急いでいるのは相手なのだ、と一度引いて眺めてみてください。

巻き込まれないための、ゆるい行動ルール

気合いで見抜こうとすると疲れるので、いくつかを「いつものクセ」にしてしまうのがいいと思います。一番効くのは、その場で決めないこと。「AIの中身と、運営会社の情報を持ち帰って調べます」と言えるだけで、大半は防げます。

  • 「AIが選んだ」は、何のデータを・どう処理した結果かを聞いてみる(答えられないなら飾りと見る)
  • 「必ず上がる」「元本保証」という言い切りが出たら、それ自体を赤信号として扱う
  • お金を預ける相手が金融商品取引業の登録を受けているか、無登録業者リストに載っていないかを照らす
  • 「含み益」が画面で増えても、実際に少額を出金できるかで相手を測る
  • 無料のAIレポートやグループへの参加だけでも、一拍おいて、利害のない人に話してから決める

この記事のまとめ

  • この型は「AIという権威で信用を肩代わり → 旬の半導体テーマで本当らしく → 必ず上がると言い切る → 無登録の相手にお金を預けさせる」流れになりがち
  • 「AI診断でSNSへ誘導」する手口は金融庁が注意喚起済みで、「必ず・元本保証」の言い切りは金融商品取引法で禁じられている

見るべきは「AIが選んだ」という看板ではなく、その利益の出どころと、お金を預ける相手の素性です。確かめられないなら、その場で決めず消費者ホットライン「188」に相談してください。