第212号黒岩検閲済 2026年6月23日 発行(不定期刊/前号:6月22日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|AI銘柄リストの型

「投資の推奨ではありません」と免責しつつAIが選んだ銘柄リストを見せるサイトの型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「AIが市場・ニュース・決算を総合的に分析して選んだ、今週の注目10銘柄です」――そう並べて見せる株情報サイトがある。そして決まって、画面のすみか末尾に小さく「掲載は分析であり、投資の推奨ではありません」と添えてある。銘柄の顔ぶれもサイトの名も案件ごとに違っても、お金の流れだけを抜き出すと、よく似た一つの型に収まる。特定の事業者は名指しせず、この「AIで信用させ、免責で責任を外し、会員登録で囲い込む」型を、数字と仕組みからほどいた。

なぜ「AIが選んだ」と「推奨ではない」が、同じ画面に並ぶのか

この二つは、矛盾しているようでいて、役割が分かれている。前者は信用をつくり、後者は責任を外す。買わせる力は「AI」が担い、責められたときの逃げ道は「免責」が用意する。一枚の画面で、攻めと守りを同時にやっている、という見方を私はしている。

人がすすめると「あなたが言ったから買った」と問われる。ところが「AIが自動で分析しただけ」「あくまで情報提供」と言い換えると、疑う相手が機械や免責文にすり替わり、最後は読者の自己責任ということにされてしまう。金融庁は「AI診断を謳い文句にウェブサイトへ誘い込み、SNSへ誘導して投資話を持ち掛ける」手口を注意喚起している。「AIが選んだ」という看板は、客観性の証明ではなく、信用を肩代わりさせる装置として置かれていることが少なくない。

そして「必ず上がる」「絶対に儲かる」とまでは書かないのも、この型の慎重なところだ。だが言葉をやわらげても、見せ方で「上がりそう」と思わせれば結果は同じになる。念のため言えば、金融庁は「『元本保証』『絶対に儲かる』などと説明して勧誘することは禁じられています」と明示している。断定をほのめかす見せ方には、それだけで一拍おいて構えていい。

お金の流れでほどく――無料のリストの先で、誰の財布が動くのか

まず、ひとつだけ落ち着いて考えたい。銘柄を分析するサイトを作り、毎週更新し、人を集める――これには手間も費用もかかる。その費用は、どこかで必ず回収される。銘柄リストを「無料」で配れるのは、回収する場所が後ろにあるからだ。で、その利益の出どころは?

たいてい、入口の無料リストは「続き」への入口になっている。全部を見るには会員登録を、より詳しい売買タイミングや個別の助言には有料プランを、という具合だ。無料の段で差し出させるのは、まずメールアドレスや連絡先――次の勧誘を届けるための住所である。お金より先に、つながりを取りに来ている。

金額の上がり方も、たいてい階段状だ。はじめは無料、次に数千円から数万円の「会員プラン」、さらに数十万円の「個別サポート」や「特別な銘柄情報」へと進む。被害の規模は数字のうえでも軽くない。警察庁の確定値では、令和6年のSNS型投資・ロマンス詐欺は10,237件・約1,271.9億円(前年比約2.8倍)に達している。最初に見せられた「無料」と、後から積み上がる総額のあいだには、大きな開きがあることが多い。

「無料の銘柄」で利益が出たあとが、本番のことがある やっかいなのは、最初のうちは本当に当たって見えることだ。金融庁は「しばらくは利益が出て出金もできるかのように装いながら、追加で高額な入金をさせる」手口を注意喚起している。小さな成功で信用が育ったころに、高額のプランや「ここだけの情報」へ進ませる。当たったから次も、と思った時点が、いちばん財布をゆるめている。

「情報提供にすぎない」という免責は、相手の責任を消すのか

免責文があるからといって、相手が何をしてもいいわけではない。お金を払って個別の助言や売買の指示を受ける段になれば、それは「情報の閲覧」ではなく投資助言の領域に入っていく。

そこで効いてくるのが、相手の素性だ。金融庁は、日本の居住者を相手に株取引などの金融商品取引業を行う者は登録を受ける必要があるとし、無登録業者との取引はリスクが高いと注意喚起している。「あくまで情報提供」と免責を掲げていても、有償で助言や運用に踏み込めば、登録の要否という問題は残る。読者の側からは、相手が登録を受けているかを先に確かめられる。金融庁は、無登録で金融商品取引業を行う者の名称等を一覧で公表しており、気になる相手の名がそこに載っていないかを照合できる。

もう一つ、運営者の正体も確かめたい。お金を払う相手なら、どこの誰かは分かって当然だ。消費者庁の特定商取引法ガイドは、通信販売では事業者の氏名・住所・電話番号の表示が必要で、「通称や屋号、サイト名のみを表示することは認められません」と明記している。サイト名とAIの名ばかりが大きく、運営者の正式名称や連絡先が見当たらない――それ自体が、確かめるべき手がかりになる。

登録・課金の前に、ひとつだけ 免責文の有無ではなく、相手の正式な名称・住所・電話番号と、金融商品取引業の登録の有無を先に探してみてほしい。見当たらないなら、銘柄リストがどれほど魅力的でも、いったん持ち帰って調べる。健全な相手なら、こちらが素性を確かめる時間を嫌がったりはしない。

登録や課金の前に、確かめておきたいこと

  • 「AIが選んだ」という看板の裏に、運営者の正式名称・住所・電話番号が示されているか(屋号やサイト名だけになっていないか)
  • 無料リストの先が、会員登録や有料プランへの入口になっていないか
  • 有償で助言を受ける相手が、金融商品取引業の登録を受けているか(無登録業者の一覧と照合したか)
  • 「投資の推奨ではない」と書きつつ、見せ方で「上がりそう」と思わせていないか
  • 最初に当たったあとで、高額プランや「特別な情報」へ急がされていないか

もう登録・課金してしまった人へ

すでに会員登録し、有料プランにお金を払ってしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。「次の銘柄で取り返せる」「特別枠だから今だけ」という話を求められたら、そこで止めてほしい。順序はこうなる。

  • ① 追加で払わない(「あと少しで回収できる」という話に乗らない)
  • ② LINEやメール、サイトのやり取りや決済の記録を消さずに残す(相手から削除を求められても、証拠は保全する)
  • ③ 振り込んだ決済元(カード会社・銀行・収納代行)に連絡する
  • 消費者ホットライン「188」、または警察相談専用電話「#9110」に相談する

私には個別の解決はできない。判断は正規の窓口に委ねてほしい。それが一番確かだ。消費者庁も、SNSなどを通じた投資や副業といった「もうけ話」に注意するよう促している。一人で抱え込まず、利害のない誰かに一度話すだけでも、見え方は変わる。

この記事のまとめ

  • 「AIが選んだ」は信用づくり、「投資の推奨ではない」は責任外し――役割の違う二つが同じ画面に並ぶ
  • 無料のAI銘柄リストは、会員登録(連絡先)と有料プランへの入口になりがちで、運営費は後ろで回収される
  • 免責文の有無より、運営者の正式名称・連絡先と、金融商品取引業の登録の有無を先に確かめたい

見るべきは「AIが選んだ」「推奨ではない」という看板ではなく、料金の総額と、お金を払う相手の素性。確かめられないなら、その場で決めない。