第207号黒岩検閲済 2026年6月22日 発行(不定期刊/前号:6月22日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|未公開コイン勧誘の型

「次のビットコイン、いずれ必ず上場する」未公開コインを紹介報酬で広げる勧誘の型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「これは次のビットコインです」「いずれ必ず上場して、何十倍にもなります」――そんな言葉とともに、まだ市場に出ていない独自のコインを買わないかと誘われる。看板のコイン名や運営会社は案件ごとに違っても、お金の流れだけを抜き出すと、よく似た一つの型に収まる。特定の案件は名指しせず、この「未公開コインを、紹介報酬を付けて広げる勧誘」の型を、数字と仕組みからほどいた。見るべきはコインの名前ではなく、その値上がりと配当が、いったいどこから出てくるのかだ。

入口の型――「上場して値上がり」と「紹介で報酬」の二段重ね

入りの言葉は、たいてい二段構えになっている。前半は「次のビットコイン」「いずれ上場する」という将来の値上がりの約束。後半は「あなたが人を紹介すれば、その人の購入額の何割かが報酬として入る」という、紹介で稼げるという誘いだ。値上がりへの期待と、すぐ手に入る紹介料。この二つが重なると、コインそのものの中身を確かめる前に、話が前に進んでしまう。

SNSやマッチングアプリ、友人・知人からこの種の話が持ち込まれる例について、国民生活センターは「必ず値上がりする」「人を紹介すれば紹介料が入る」といった文句で暗号資産を勧誘されるトラブルに注意を呼びかけている。親しい人から「あなただけに」と渡される話ほど、断りにくく、確かめにくい。

二段重ねが狙うもの 値上がりの約束は「将来の夢」を、紹介報酬は「いますぐの利益」を見せる。どちらも、コインの実体を一度も確かめないまま財布を開かせるための装置だと、私は見ている。話の主語が「このコインは」ではなく「あなたが紹介すれば」に移った時点で、一拍おいてほしい。

広げ方の型――紹介報酬で連鎖していく仕組み

購入した人が次の人を誘い、その人がまた次を誘う。紹介するたびに報酬が乗るこの広げ方は、商品を売る事業の体裁を取りながら、人を増やすこと自体が目的化しやすい。法律にも、この形を指す言葉がある。消費者庁は、再販売や販売のあっせんをする人を「特定利益(紹介料など)が得られる」と誘い、「特定負担(入会金や商品購入など)」を伴わせる取引を、特定商取引法上の連鎖販売取引と定めている。いわゆるマルチ商法だ。連鎖販売取引そのものは違法ではないが、勧誘の入口で利益を断定したり、不利な事実を伏せたりする行為には規制がかかっている。

ここで一度、お金の流れを割り算で追ってみたい。仮に「紹介すれば購入額の5割が報酬」だとする。10万円分のコインを買った人を一人紹介すれば、5万円が紹介者に渡る計算になる。では、その5万円はどこから出ているのか。コインが何かを生み出して稼いだお金ではない。新しく入ってきた人が払った10万円の、半分がそのまま回っているだけだ。配当や報酬の原資が、運用益ではなく後から入った人の購入代金になっている――この一点に気づけるかどうかが、分かれ目になる。で、その報酬の出どころは、いったい誰の金なのか。

「いずれ上場」の出どころを確かめる

この型の背骨は「いずれ必ず上場する」という一言にある。だが、上場の予定は誰が決めているのか、その根拠はどこにあるのかを、買い手の側から確かめる手段はたいてい無い。国内でコインと円などを交換するサービスを業として行うには、制度上の登録が要る。金融庁は「国内で暗号資産と法定通貨との交換サービスを行うには、暗号資産交換業の登録が必要となりました」と説明している。登録を受けた業者の一覧は公開されていて、誰でも照合できる。

裏を返せば、登録された取引所で扱われていない独自コインは、買えても売る(換金する)窓口がない、ということが起こりうる。「上場すれば換金できる」と言われても、その上場が来なければ、手元のコインは数字のまま動かない。金融庁は無登録の業者との取引はトラブルになっても救済が難しく、高いリスクがあると注意を促している。まず確かめたいのは将来の上場予定ではなく、いま現在、その相手が登録された業者なのか、そのコインが正規の取引所で売れるのか、のほうだ。

数字でほどく――この型は、どれくらい起きているか

暗号資産をめぐる相談は、いまも高い水準で続いている。国民生活センターの集計では、暗号資産に関する相談は2022年度に5,625件、2023年度に8,496件、2024年度に7,227件(2025年5月末時点)と、毎年数千件の規模で寄せられている。派手な事件として報じられないものも含めれば、この型は決して珍しいものではない。

被害の中身も、入口の手軽さとは裏腹だ。先の国民生活センターの注意喚起には、決済で支払ったあとに暗号資産の出金ができなくなり、さらに追加の支払いを求められた、という相談例も挙げられている。「少額から」で始まり、増額や追加入金へ進んだころには、引き出せない状態になっている。入るときは簡単で、出るときだけ難しい。お金の流れが一方通行になっていないか、そこを見てほしい。

「必ず上がる」が引っかかる理由――法のものさし

「いずれ必ず上場する」「絶対に値上がりする」。この言い切りは、聞こえがいいだけでなく、法律のものさしに照らしても引っかかる。金融商品取引法は、不確実な事項について「断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて」勧誘する行為を禁じている(第38条)。将来の価格は、本来だれにも断定できない。それを「必ず」と言い切ること自体が、踏み込んではいけない線を越えている、ということだ。

仮に、その断定を信じて契約してしまったあとでも、打つ手はある。将来の不確実なことについて断定的な説明を受け、それを真に受けて結んだ契約は、消費者契約法のもとで取り消せる場合がある。ただし、個別の事情で結論は変わる。自分で抱え込まず、確かめられる窓口に渡してほしい。

迷ったとき用の一言 「本当に必ず上がって、必ず上場するコインなら、なぜ人を募ってまで先に分けようとするのか」。黙って自分で持っていれば、何十倍にもなるはずだ。人を集めることが目的に見えたら、その時点で立ち止まっていい。

巻き込まれないための、ゆるい確認手順

気合いで見抜こうとすると疲れる。いくつかを「いつものクセ」にしてしまうほうが続く。とくに、紹介報酬の話が出た時点で一度持ち帰る、これだけで大半は防げる。そのうえで、

  • 「上場予定」「必ず値上がり」と言われたら、その根拠を自分で確かめられるかを基準にする
  • そのコインが、登録された正規の取引所で実際に売れる(換金できる)かを先に調べる
  • 勧誘してきた相手や運営が、金融庁の登録業者一覧に載っているかを照合する
  • 「紹介すれば報酬」の話が出たら、その報酬の出どころが新規入金でないかを疑う
  • 少額でも「お金を入れる=紹介の連鎖に入る入口」だと意識して、一拍おく

この記事のまとめ

  • 未公開コイン勧誘の型は「いずれ上場・必ず値上がり」+「紹介で報酬」の二段重ねで広がる
  • 紹介報酬の原資は運用益ではなく後から入った人の購入代金になっていないか、お金の流れで確かめる
  • 確かめるべきは将来の上場予定ではなく、いま換金できるか・相手が登録業者かのほう

「必ず上がる」という断定は、聞こえのよさとは裏腹に、法のものさしでも踏み込んではいけない線を越えている。急がず、その場で決めず、正規の窓口に渡してほしい。