第194号黒岩検閲済 2026年6月21日 発行(不定期刊/前号:6月21日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|マイニング投資の型

「マイニングに投資すれば配当」が紹介報酬とセットで広がる型を、お金の流れで調べた

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黒岩警戒度

「暗号資産のマイニング工場に投資すれば、何もしなくても毎日ビットコインの配当が入る」と誘われる。さらに「友人や知人を紹介すれば、その人の出資額に応じて紹介料も入る」とくる。プランは数百ドルから一万ドル超まで何段階かに分かれていて、上のプランほど配当も紹介料も増える――そういう相談が各地の消費生活センターに寄せられている。特定の事業者は名指しせず、案件をまたいで現れる一つの型として、その「配当」と「紹介料」がどこから出ているのか、運営している会社はどこにいるのかを、お金の流れと公的データから調べた。

なぜ「マイニング工場への投資」という形をとるのか

この型がマイニングを持ち出すのには、理由がある。マイニング(採掘)は、専用の機械を動かして暗号資産を得る作業で、ふつうの人には中身が見えにくい。「海外に大きな工場があって、最新の機械が休まず動いている」と言われても、こちらからその工場を確かめるすべはない。見えないからこそ、「だから毎日配当が出るのだ」という説明がそのまま通ってしまう。

国民生活センターには、こうしたマイニングを名目にした相談が現に寄せられている。同センターは、AIで動く暗号資産のマイニングにより利益が得られるとしたシステムで、実際には利益が出ず、追加投資を要求された事例を紹介している。画面に表示される「配当」は運営する側がいくらでも書けるもので、本当に採掘で得た利益なのか、利用者の側から裏を取る方法はない。で、その配当の出どころは?――工場が生み出した利益ではなく、後から入ってくる人の出資金を、先に入った人へ「配当」として回しているだけなら、それは増えているのではなく、順番に配り直しているにすぎない。

「紹介すれば報酬」が組み込まれると、何が変わるか

この型のもう一つの軸が、紹介報酬だ。「友人を誘えば紹介料が入る」「下に人がつくほど取り分が増える」と言われると、出資した本人が次の出資者を探す側に回る。広告費をかけなくても、会員が会員を呼ぶ形で組織がねずみ算式に広がっていく。勧誘してくるのが見知らぬ業者ではなく、自分の友人や知人であることも多く、それゆえ警戒しにくい。

ここで知っておきたいのが、「紹介すれば報酬」という仕組みは、法律上の位置づけを持つという点だ。消費者庁は、こうした取引を連鎖販売取引と呼び、個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるという形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う取引のことと説明している。さらに同庁は、「他の人を勧誘して入会させると紹介料がもらえます」などと言って勧誘し、取引のための条件として1円以上の負担をさせる場合は連鎖販売取引に該当するとしている。出資を伴うマイニング案件で「紹介料」が約束されているなら、それはこの枠に入ってくる。連鎖販売そのものが直ちに違法というわけではないが、勧誘時の説明義務や書面交付など、事業者が守るべきルールが法律で定められている、という前提で見たほうがいい。

そして、紹介で広がる仕組みには構造上の限界がある。新しく入る人がいる間は上の人に報酬が回るが、勧誘が止まれば原資も止まる。早く入った一部の人の「もうかった」という声が、後から入る大勢を呼び込む燃料になっている、と見たほうが実態に近い。

運営会社の所在国が変わる・実態がつかめない

この型でとくに警戒したいのが、運営している会社の正体がつかみにくいことだ。本社が海外にあるとされ、しかも途中で別の国へ移ったと説明されることもある。会社の登記や資本の規模、誰が責任者なのかといった基本的な情報が、出資する側からはほとんど確認できない。何かあったときに、誰に、どこへ言えばいいのかが分からないまま、お金だけが先に動く。

相手が海外の事業者だと、トラブルになってからの回収は格段に難しくなる。国民生活センターは、暗号資産のもうけ話について、海外事業者との連絡が取れない、海外事業者による詐欺的行為で本人から返金請求された場合の責任関係が不明確、といった問題点を挙げている。出金しようとした段になって初めて壁が現れることも多い。金融庁は、出金時に高額な手数料や税金の支払いといった名目の口座入金を要求され、入金した直後に連絡が取れなくなることもあると注意喚起している。配当は画面の中で毎日増えているのに、いざ引き出そうとすると追加の入金を求められ、応じても引き出せない――そこまで来て、初めて相手の所在が分からないことに気づく、という順番になりやすい。

被害は小さくない。警察庁によれば、令和7年のSNS型投資詐欺の認知件数は9,538件、被害額は1,274.7億円にのぼる(暫定値)。出資する前に、その業者が暗号資産交換業や金融商品取引業の登録を受けているか、金融庁は取引をする業者が登録等を受けているかを確認するよう促している。名前すら正確に出てこない相手に、確かめる手立てがないこと自体が、一つの答えだ。

この型に共通する一点 マイニング、AI、海外工場――見えないものを根拠に「毎日配当」を約束し、「紹介すれば報酬」で会員を増やす。入口の言葉がどれだけ変わっても、配当と紹介料の原資が「後から入る人のお金」に行き着くなら、それは投資ではなく、順番に配り直しているだけだ。友人からの誘いでも、出どころを確かめられないなら、いったん財布を閉じていい。

預ける前に、確かめられること

幸い、お金を入れてしまう前なら、自分の手でできることがいくつかある。一つは、配当と紹介料の出どころを言葉にしてみること。「この配当は、何が生み出した利益なのか」「自分の紹介料は、誰のどのお金から出るのか」。説明が「とにかく工場が動いているから」「上の人がそう言っているから」で止まるなら、根拠としては弱い。

もう一つは、運営会社を確かめること。会社名・所在地・登録の有無が出てこない、出てきても海外で確認しようがない、というだけで、十分に立ち止まる理由になる。そして、その場で決めないこと。「いったん持ち帰って調べます」と言って急かされるなら、それ自体が答えだ。判断に迷ったら、消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すれば、身近な消費生活センターにつないでもらえる。出資の前でも後でも、相談は早いほどいい。

迷ったとき用の一言 「本当に毎日配当が出る仕組みなら、わざわざ他人を勧誘して紹介料を配る必要はないはず」。紹介で人を増やし続けないと回らない時点で、その配当は工場ではなく、次に入る人のお金から出ている可能性が高い。誘ってきたのが友人でも、出どころが確かめられないなら、ゼロから判断していい。
  • 「毎日配当」の画面の数字は、運営側が書き換えられる。自分で裏を取れないかぎり根拠にしない
  • 「紹介すれば報酬」は連鎖販売取引に当たり得る。友人からの誘いでも仕組みは同じだと意識する
  • 運営会社の名前・所在地・登録の有無が確認できないなら、その時点で立ち止まる
  • 出金時に税金・手数料・保証金など追加の入金を求められたら、応じる前に188へ相談する

この記事のまとめ

  • 「マイニング工場への投資で毎日配当」は中身が見えにくく、配当の出どころを確かめられない
  • 「紹介すれば報酬」は連鎖販売取引に当たり得る仕組みで、原資は後から入る人のお金に行き着きやすい
  • 運営会社が海外・実態不明だと、出金停止やトラブル後の返金は極めて難しくなる

配当と紹介料の出どころ、そして運営会社の正体。この二つを確かめられないなら、その場で決めない。それだけで、この型の多くは防げる。