第183号黒岩検閲済 2026年6月20日 発行(不定期刊/前号:6月19日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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3問で“あなたに合う副業”が分かる診断──誰が答えても同じ結果になる仕組みを、お金の流れでほどく

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黒岩警戒度

「3つの質問に答えるだけで、あなたに合う副業が分かる」。SNSでそんな広告を見かけて、軽い気持ちで答えてみる。性別を選び、ふだん使うSNSを選び、自分の性格を選ぶ。それだけで「あなたにぴったりの副業はこちら」と結果が出る、という触れ込みだ。だが、どの選択肢を選んでも最後に出てくるのは同じ案内だった、という話を何度か見た。特定の案件は名指ししない。案件をまたいで現れる一つの型として、この「診断」の先を、お金の流れでほどいてみたい。

診断は、本当に答えを測っているのか

本来、診断とは答えによって結果が変わるものだ。質問に対して別の選択をすれば、別の結論が返ってくる。それが診断という言葉の意味になる。だが、どの選択肢を選んでも同じ結論にたどり着くなら、それは答えを測っていない。

では、質問は何のために置かれているのか。私はこう見ている。質問は、答えを分けるためではなく、答えさせること自体のために置かれている。3問という短さも、ここに合う。長ければ途中でやめてしまう。短く、誰でも数秒で終わり、最後に「あなたの結果はこちら」とLINE登録へ進ませる。つまり診断の体裁は、登録までの助走にすぎない、という形になる。

公的な相談の記録にも、似た運びが残っている。国民生活センターは情報商材に関する相談事例として、「SNSの広告をきっかけにWEB上で診断や支援サービスを受けることになり、その後サポート契約などをすすめられる」という形を挙げている。診断や支援という入口の言葉と、その後に来るサポート契約。順番は、だいたい決まっている。

で、その診断は何のために無料なのか

まず確かめたいのは「無料なのはどこまでか」だ。無料なのは診断とLINE登録までで、本命は後ろに置かれた有料のマニュアルやサポートプランであることが多い。入口の無料と出口の有料は、別の場所に置かれている。

商売である以上、広告にも人手にも費用はかかる。診断を受けた側がそこで一円も払っていないなら、その費用はどこかで回収されている。後で結ぶ有料の契約から、ということになる。撒き餌と本命だ。消費者庁もSNSの「もうけ話」について「儲け話をすすめられたら、まずは疑いましょう」と注意喚起している

この運びは、行政の注意喚起のなかにも具体的な形で出てくる。消費者庁は令和7年6月、アンケートに答える副業の広告から複数のLINEアカウントに誘導し、ガイドブックを買わせたうえで電話で高額なサポートプランを契約させた事業者について、「初心者でも簡単に稼げる」「このプランなら、月50万が当たり前になる」「儲けが出なければ返金保証がある」などと勧誘していたとして注意喚起した。アンケートや診断という入口、LINEへの誘導、そして電話での高額契約。入口の見た目が違っても、お金の流れは同じところへ向かう。

「誰でも・簡単に」という言葉

結果の画面や、その後のやり取りで使われやすいのが「初心者でも簡単に」「誰でも稼げる」「返金保証がある」という言葉だ。安心させて、契約を急がせる役目を持っている。だが、本当に誰でも簡単に稼げるなら、人を募らずとも黙って自分でやっているはずだ。「必ず」「誰でも」と言い切る相手は、その一言で多くを引き受けている。私はそこを一度立ち止まって見るようにしている。

数字でほどく──「無料」のはずが、平均いくら払っているか

無料で始めたはずの副業が、最後にいくらの支払いになっているか。これは数字で確かめられる。国民生活センターによれば、スキマ時間に気軽に稼げるとうたう副業トラブルの相談は2020年度末1,341件から2023年度末3,694件へ増え、SNSをきっかけとした割合は同じ期間に23%から2024年7月時点で70.1%まで高まっている。そして同じ資料で、平均契約購入金額は2020年度末の約28万円から、2024年7月時点で約106万円に上がっている。

つまり「無料で始めた」はずの人が、平均すると100万円を超える金額を払う形になっている、ということだ。診断は無料でも、その先の道のりは無料では終わっていない。撒き餌が無料であることと、本命が安いことは、別の話だ。

払えないと言ったら、どうなるか

「今は手元にお金がない」と伝えても、そこで話が終わるとは限らない。消費者庁は令和6年2月、副業のサポートプランを勧めたうえで、遠隔操作アプリでスマートフォンの画面を共有させながら、消費者金融業者から高額な借入れをさせていた事業者について注意喚起している。手元にお金がないという事情が、契約を止める理由にならず、むしろ借金の入口にされてしまう。お金がない人ほど狙われる、という逆の構造がここにある。

「診断」で立ち止まりたい3つの合図 一つ、どの選択肢を選んでも結果が同じになる。二つ、結果を見るだけのはずがLINE登録を求められる。三つ、その先で有料のマニュアルやサポートプランが出てくる。この三つがそろったら、診断そのものより「そのあとに何があるか」を先に見ておきたい。

巻き込まれないための、ゆるい確かめ方

気合いで見抜こうとすると疲れる。だから「いつものクセ」にしてしまうのがいい。診断や占い感覚のものほど、軽い気持ちで先へ進みやすいので、最初の一拍を置くことだけ決めておく。

  • 結果を見る前にLINE登録を求められたら、いったん手を止める
  • 「あなたに合う」と言われた中身が、有料の契約に変わる場所を探す
  • 会社名・連絡先を、ページ末尾の「特定商取引法に基づく表記」で確かめる
  • その場で決めない。「持ち帰って調べます」を口ぐせにする
迷ったとき用の一言 本当にこちらを見て選んだ結果なら、登録や契約の前に中身を説明できるはずだ。説明より先に登録や支払いを急がせるなら、それはそれで一つの答えだと思う。

すでにLINE登録やガイドブックの購入まで進んでしまった方へ。気持ちは分かるが、まず一つだけ。お金を取り戻すこと以上に、これ以上払わないことが先だ。借入れや追加の支払いを求められたら、そこで止めてほしい。判断に迷うときは、消費者ホットライン「188」、副業をめぐる被害の相談は警察相談専用「#9110」へ。私には個別の解決はできない。最終的な判断は、正規の窓口に委ねてほしい。

この記事のまとめ

  • どの答えでも結果が同じ「診断」は、答えを測っていない。答えさせてLINE登録へ進ませるための助走になりやすい
  • 無料なのは診断と登録まで。本命は後ろに置かれた有料のサポートプランで、相談者の平均契約購入金額は約106万円

確かめ方は、結果の前の登録で一拍おく・有料に変わる場所を探す・その場で決めない。で、その利益の出どころは?──そこが説明されない話には、いったん近づかないでおきたい。(黒)