第179号黒岩検閲済 2026年6月19日 発行(不定期刊/前号:6月19日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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「無料のAIスクール体験会」から高額講座へ──“タダで学べる”の先を、お金の流れでほどく

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黒岩警戒度

「無料のAI体験会」「タダで学べるAIスクール」。SNSの広告でよく流れてくる文句だ。特定の案件を名指しするつもりはない。案件をまたいで繰り返し現れる一つの型として読んでほしい。入口は無料の体験会、次にZOOMでの個別相談、そして最後に数十万円から100万円ほどの本講座――この運びを、お金の流れでほどく。

まず確かめたいのは「無料なのはどこまでか」

無料なのは体験会と個別相談まで、ということが多い。AIの知識そのものや「稼げる力」は、その先の有料講座の側に置かれている。入口の無料と出口の有料は、別の場所に置かれているわけだ。

商売である以上、講師にも会場にも広告にも費用はかかる。受け取る側が体験会で払っていないなら、その費用はどこかから出ているはずで、多くの型では後から結ぶ高額講座のほうから出ている。撒き餌と本命、と言ってもいい。だから本当に確かめたいのは「無料の範囲はどこまでで、有料はいくらからか」――そこを申し込む前に紙で押さえておきたい。

「AIで稼げる」は、中身を確かめなくてよい目隠しになりやすい

AIは道具にすぎない。道具がAIでも、問いは同じだ。その講座を受ければ具体的に何の仕事が、いくら取れるのか。取れなかったら受講料は返るのか。そこが説明されない限り、「AIで稼げる」の一語は何も保証しない。学ぶだけなら、無料や低額の教材は世の中にいくらでもある。99万円という値が、その教材との差として何を指しているのか――そこが見えないなら、いったん立ち止まりたい。

受講料は、まず割り算でほどく

仮に本講座が総額99万円で、役務の提供期間が12か月だとする。月あたりに直せば約8万2,500円。これを取り返すには、講座をきっかけに得た副業収入が、その受講料を上回らなければならない。「誰でも月収◯◯万円」という言葉の前に、まずこの引き算が要る。

そして、もし本当に「誰でも簡単に稼げる」手法が手元にあるのなら、人を募って教えるより、黙って自分で回しているはずだ。私はそう見ている。で、その利益の出どころは?――そこが説明されない講座には、いったん近づかないでおきたい。

その勧誘、特定商取引法ではどう扱われるか

仕事や収入を得られるとうたって、有料の講座や教材を契約させ、金銭を負担させる取引を、消費者庁の特定商取引法ガイドは「業務提供誘引販売取引」と呼ぶ。この型に当たる場合、法律で決められた書面を受け取った日から数えて20日以内であれば、原則としてクーリング・オフができる、とされている。

ただし、契約の形によって扱いは変わる。SNS広告から自分で申し込めば通信販売(クーリング・オフの規定はない)、電話やZOOMで勧誘されれば電話勧誘販売、というように区分が分かれ、解約できる期間や条件も変わってくる。自分の契約がどれに当たるかの最終判断は、専門の窓口に委ねてほしい。要するに「20日以内なら必ず解約できる」と単純に決めてかからないことだ。

勧誘の言葉にも、注意したい線がある。消費者庁は令和7年6月、簡単な副業をうたって高額なサポートプランを契約させた事業者について、「初心者でも簡単に稼げる」「月50万が当たり前」「儲けが出なければ返金保証がある」などと勧誘していたとして注意喚起している。「初心者向け」「返金保証」は、安心させて契約を急がせる言葉として使われることがある。「必ず」「誰でも」と言い切る相手は、断定的判断の提供という線を、その一言でまたいでいる。

AIや副業を題材にした講座への行政処分も、すでに出ている。消費者庁は令和7年12月、SNS運用やAIを活用したビジネスのスキル習得をうたう動画コンテンツとサポートを電話勧誘で契約させた事業者に対し、特定商取引法に基づく指示処分を公表した。処分は業務停止命令ではなく「指示」だが、無料の入口から個別の連絡で高額契約へ運ぶ流れが行政の目に留まっている、という事実は記録しておきたい。

「無料体験会」「個別相談」で起きやすいこと 体験会やZOOM相談は、一対一の断りにくい場になりやすい。その場で「今日申し込めば割引」「枠は今日まで」と急かされ、手元に現金がなくても、クレジットの分割や後払いを案内される。考える時間を奪われた状態での契約は、後で「説明と違う」になりやすい。後払い決済が関係する消費生活相談自体、国民生活センターの集計で年々増えている

金額の規模も、小さくない。国民生活センターによれば、情報商材に関する相談は2022年度に約7,000件、2023年度に6,256件と高い水準が続いている。「無料で始めた」はずが、数十万円から100万円超を払う形になっている、という構図はここでも変わらない。

迷ったとき用の一言 「本当に身につくスクールなら、来週の体験会でも同じ条件で学べるはずだ」。その場の割引や緊急性を外しても価値が残るか――そこだけ見れば、たいてい足りる。急かす相手ほど、こちらが調べる時間を取ることを嫌がる。嫌がられたら、それはそれで一つの答えだと思う。

巻き込まれないための、ゆるい行動ルール

気合いで見抜こうとすると疲れる。だから「いつものクセ」にしてしまうのがいい。一番効くのは、その場で決めないこと。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにしておく。そのうえで、

  • 「無料」がどこまでで、有料はいくらからかを、申し込む前に紙で確かめる
  • 受講料は割り算でほどき、取り返すのに必要な副業収入を自分で計算してみる
  • 「必ず」「誰でも」「返金保証」の、その後ろにある条件を読む
  • クレジットの分割・後払いを勧められたら、一拍おく。その場で契約しない

この記事のまとめ

  • AIスクールの型は「無料体験会 → ZOOM個別相談 → 高額講座」の運びになりがちで、無料なのは入口だけ
  • 仕事・収入をうたって有料講座を契約させる取引は「業務提供誘引販売取引」に当たることがあり、契約の形でクーリング・オフの扱いが変わる

対策は結局、無料の範囲を確かめる・受講料を割り算する・その場で決めない。この3つに尽きる。迷ったら、まず消費者ホットライン「188」へ。