第172号黒岩検閲済 2026年6月19日 発行(不定期刊/前号:6月19日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|高勝率の型

「AIが自動で運用、勝率は毎月100%」という投資話を、割り算でほどく

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黒岩警戒度

「最新のAIが自動で運用するので、知識のない人でも増やせる」。そこに「1日の回収率が高い」「月の勝率は100%」といった、景気のいい数字が添えられている。こういう案内を見たという話が、ときどき耳に入る。今号は特定の商品やシステムを名指しせず、案件をまたいで繰り返し現れる一つの型として、この「AIが自動で、ほぼ負けずに増やす」という入口をほどいた。新しいのは「AI」という言葉だけで、約束されている数字の作りは、昔からある高利回りの話と変わらない。まず、その数字を割り算してみたい。

その「数字」を、まず割り算してみる

派手な実績画像や体験談は、こちらからは裏が取れない。だから印象ではなく、約束されている利回りそのものを数字でほどく。たとえば「1日で元手が1.5倍になる」という回収率を例にとる。これを30日くり返すなら、1.5を30回かけることになる。

電卓で確かめられる計算 1.5を30回かけると、約19万倍になる。つまり「1日で1.5倍」が1か月続けば、1万円の元手は計算上19億円を超える。これは桁を間違えているのではなく、掛け算がそのまま積み上がるとこうなる、というだけの話だ。読者の方も、電卓で1.5を30回かけてみてほしい。同じ数字が出る。

世の中に、そんな運用が安定して存在するだろうか。本当にあるなら、その金額はどこかの市場から運び出されてくることになる。だが現実に、ひと月で元手を何億倍にもする金は、どこにも循環していない。うますぎる利回りは、まず割り算で確かめたい数字だ。「AIだから」という説明は、この割り算の答えを変えない。

「勝率100%」が本当なら、人は募らない

「月の勝率100%」という言葉も、同じように一度立ち止まりたい。勝率100%とは、一度も負けない、という意味になる。もし手元に、一度も負けない運用の仕組みが本当にあるなら、人を集めて勧める前に、黙って自分の金で回しているはずだ。わざわざ無料体験を配り、見知らぬ相手を募る理由がない。

金融機関で長く見てきて得た実感だが、確実さを言い切る話ほど、確かめると確実でなくなる。法律も同じところを戒めている。金融庁は「上場確実ですので、必ず儲かります!元本も保証します!」といった勧誘を詐欺的な投資勧誘の典型例として挙げる。「絶対」「100%」「元本保証」は、安心の材料ではなく、むしろ黄信号として置いておきたい。で、その勝率は、誰が・どうやって検証したのか。

お金の流れで見える「型」

数字の作りが同じなら、人を運ぶ順番も似てくる。報告される入口は、おおむねこう進む。

  • SNSの広告や短い動画で「AIが自動で増やす」と関心を引く
  • 「まずは無料で」とLINEの登録へ誘導する
  • 無料体験や少額で「増えた」という小さな成功体験を一度持たせる
  • 信頼が育ったころに、高額なプランやツールの契約へ進ませる

順番には意味がある。無料と少額は、財布を出す抵抗を消すための入口だ。一度「ちゃんと増えた」という体験を作ると、人は次の金額を出しやすくなる。そして料金の全体像は、たいてい登録した後で出てくる。つまり、比べる時間が先に奪われる運びになっている。SNSをきっかけにした金融トラブルは実際に増えていて、国民生活センターは著名人を名乗る・つながりがあるなどと勧誘される金融商品の相談が急増し、2023年度には1,629件に上ったと公表している。

この型に共通する狙い 入口の言葉は「AI」でも「自動」でも構わない。狙いは一貫して、考える時間と、第三者に相談する余地を奪うことだ。無料・少額で警戒をゆるめ、料金は後から出し、急がせる。そう感じたら、それ自体を黄信号と見てほしい。

確かめられるのは「登録の有無」

相手の出してくる実績や勝率は、こちらでは検証できない。だが、確かめられることが一つある。その相手が、日本で登録を受けた業者かどうかだ。日本に住む人を相手に株やFX、暗号資産の取引を業として行うには、法律上の登録が要る。金融庁は無登録で金融商品取引業を行うことは違法であり、無登録業者は投資者保護の態勢が当局では確認できず、出金拒否や連絡途絶などのトラブルが高リスクだと注意している。AIや自動運用をうたっていても、ここは変わらない。会社名を控えて、金融庁が公表する登録業者・無登録業者の一覧で、自分の手で照らせばいい。

被害の規模も、軽く見ないでおきたい。警察庁によれば、令和7年のSNS型投資詐欺は認知9,538件・被害額1,274.7億円(暫定値)に上る。多くがSNSの広告やDMを入口にしている。派手な勝率の話に乗る前に、まず一拍おく。それだけで防げるものは少なくない。

  • 約束された利回りは、自分で割り算して現実味を測る
  • 「勝率100%」「絶対」「元本保証」は安心ではなく黄信号として扱う
  • 料金の全体像を、登録する前に文字でもらう
  • 運用元・販売元の名称を控え、金融庁の登録一覧で照らす
迷ったとき用の一言 「いい話なら、急がなくても明日も残っているはず」。本当に健全な機会なら、こちらが持ち帰って調べる時間を取ることを嫌がったりはしない。「今日中の人だけ」と急かされたら、それはそれで一つの答えだと思う。

この記事のまとめ

  • 「AIが自動で、ほぼ負けずに増やす」の新しさは言葉だけで、数字の作りは昔の高利回りと同じ
  • 約束された利回りは割り算で現実味が測れ、「勝率100%」なら人を募る理由がない

確かめられるのは、相手の勝率ではなく登録の有無。その場で決めず、数字を自分でほどき、運用元を公的な一覧で照らす。この3つに尽きる。