「AIが自動で運用、勝率は毎月100%」という投資話を、割り算でほどく
「最新のAIが自動で運用するので、知識のない人でも増やせる」。そこに「1日の回収率が高い」「月の勝率は100%」といった、景気のいい数字が添えられている。こういう案内を見たという話が、ときどき耳に入る。今号は特定の商品やシステムを名指しせず、案件をまたいで繰り返し現れる一つの型として、この「AIが自動で、ほぼ負けずに増やす」という入口をほどいた。新しいのは「AI」という言葉だけで、約束されている数字の作りは、昔からある高利回りの話と変わらない。まず、その数字を割り算してみたい。
その「数字」を、まず割り算してみる
派手な実績画像や体験談は、こちらからは裏が取れない。だから印象ではなく、約束されている利回りそのものを数字でほどく。たとえば「1日で元手が1.5倍になる」という回収率を例にとる。これを30日くり返すなら、1.5を30回かけることになる。
世の中に、そんな運用が安定して存在するだろうか。本当にあるなら、その金額はどこかの市場から運び出されてくることになる。だが現実に、ひと月で元手を何億倍にもする金は、どこにも循環していない。うますぎる利回りは、まず割り算で確かめたい数字だ。「AIだから」という説明は、この割り算の答えを変えない。
「勝率100%」が本当なら、人は募らない
「月の勝率100%」という言葉も、同じように一度立ち止まりたい。勝率100%とは、一度も負けない、という意味になる。もし手元に、一度も負けない運用の仕組みが本当にあるなら、人を集めて勧める前に、黙って自分の金で回しているはずだ。わざわざ無料体験を配り、見知らぬ相手を募る理由がない。
金融機関で長く見てきて得た実感だが、確実さを言い切る話ほど、確かめると確実でなくなる。法律も同じところを戒めている。金融庁は「上場確実ですので、必ず儲かります!元本も保証します!」といった勧誘を詐欺的な投資勧誘の典型例として挙げる。「絶対」「100%」「元本保証」は、安心の材料ではなく、むしろ黄信号として置いておきたい。で、その勝率は、誰が・どうやって検証したのか。
お金の流れで見える「型」
数字の作りが同じなら、人を運ぶ順番も似てくる。報告される入口は、おおむねこう進む。
- SNSの広告や短い動画で「AIが自動で増やす」と関心を引く
- 「まずは無料で」とLINEの登録へ誘導する
- 無料体験や少額で「増えた」という小さな成功体験を一度持たせる
- 信頼が育ったころに、高額なプランやツールの契約へ進ませる
順番には意味がある。無料と少額は、財布を出す抵抗を消すための入口だ。一度「ちゃんと増えた」という体験を作ると、人は次の金額を出しやすくなる。そして料金の全体像は、たいてい登録した後で出てくる。つまり、比べる時間が先に奪われる運びになっている。SNSをきっかけにした金融トラブルは実際に増えていて、国民生活センターは著名人を名乗る・つながりがあるなどと勧誘される金融商品の相談が急増し、2023年度には1,629件に上ったと公表している。
確かめられるのは「登録の有無」
相手の出してくる実績や勝率は、こちらでは検証できない。だが、確かめられることが一つある。その相手が、日本で登録を受けた業者かどうかだ。日本に住む人を相手に株やFX、暗号資産の取引を業として行うには、法律上の登録が要る。金融庁は無登録で金融商品取引業を行うことは違法であり、無登録業者は投資者保護の態勢が当局では確認できず、出金拒否や連絡途絶などのトラブルが高リスクだと注意している。AIや自動運用をうたっていても、ここは変わらない。会社名を控えて、金融庁が公表する登録業者・無登録業者の一覧で、自分の手で照らせばいい。
被害の規模も、軽く見ないでおきたい。警察庁によれば、令和7年のSNS型投資詐欺は認知9,538件・被害額1,274.7億円(暫定値)に上る。多くがSNSの広告やDMを入口にしている。派手な勝率の話に乗る前に、まず一拍おく。それだけで防げるものは少なくない。
- 約束された利回りは、自分で割り算して現実味を測る
- 「勝率100%」「絶対」「元本保証」は安心ではなく黄信号として扱う
- 料金の全体像を、登録する前に文字でもらう
- 運用元・販売元の名称を控え、金融庁の登録一覧で照らす
この記事のまとめ
- 「AIが自動で、ほぼ負けずに増やす」の新しさは言葉だけで、数字の作りは昔の高利回りと同じ
- 約束された利回りは割り算で現実味が測れ、「勝率100%」なら人を募る理由がない
確かめられるのは、相手の勝率ではなく登録の有無。その場で決めず、数字を自分でほどき、運用元を公的な一覧で照らす。この3つに尽きる。