「完全放置で毎日数万円」自動売買ツールの勧誘、その利益はどこから出ているのか
「ほったらかしで毎日数万円が入ってくる」。自動売買ツール——EAやBOTと呼ばれるもの——の勧誘で、よく見かける文句である。便利そうに聞こえる。だが、私はこの手の話を見ると、まず一つだけ確かめることにしている。で、その利益の出どころは? 今号はこの「型」を、数字と仕組みで淡々とほどいてみる。
そもそも「自動売買ツール」とは何か
EA、BOT、自動売買ソフト——呼び名はいろいろあるが、中身は「あらかじめ決めた条件で、機械が自動で売り買いをする仕組み」である。つまり、人が画面に張り付かなくていい、という点はたしかに本当だ。
ただ、ここで抜け落ちやすいことがある。自動で動くのは「利益」だけではない、ということだ。条件が外れれば、損失も同じように自動で積み上がる。「完全自動で稼ぐ」が真っ赤な嘘とは限らないからこそ、この型は人を引き込みやすい。金融庁も、FX・暗号資産投資の勧誘への注意喚起のなかで「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」といった誘い文句が使われていると挙げている。便利な道具が、そのまま安全を意味するわけではない。
「毎日数万円」を、まず割り算でほどく
仮に「毎日平均8万円が自動で入る」とうたわれていたとする。数字を並べてみてほしい。1か月を20営業日として、8万円×20日で160万円。年にすれば約1,900万円という計算になる。
これは利回りに直すと現実離れした数字だ。もしそんな運用が安定して回り続けるのなら、わざわざ人を募ってツール代や手数料を集める必要はない。黙って自分の金で回していればいい。要するに、人を集める時点で、その話の前提が一度ぐらついている。で、その利益の出どころは?
「開発者の経歴」と「実績画像」は裏が取れるか
勧誘では「元エンジニア」「投資歴◯年」といった経歴や、利益の出た画面のスクリーンショットが添えられることが多い。もっともらしく見える。ただ、経歴も画像も、こちら側からは確かめようがない。
まっとうな自動売買ツールなら、どういう条件で動くのかという機能の詳細や、過去のデータでどう振る舞ったか(フォワードテストなどの検証結果)を開示できるはずだ。そこが伏せられたまま「とにかく儲かる」とだけ言うなら、判断材料が足りていない、と見ていい。
お金の流れで見る——利益は誰の金から出ているのか
自動売買という看板は、お金の流れを見えにくくする装置になりうる。「システムが稼いでいる」と思わせておいて、実際の配当は、あとから入ってきた人の入金を先に入った人へ回しているだけ——新しく入った人の金を、先に入った人への配当に充てる構造に陥っているケースがある。
実際、被害は小さくない。警察庁によれば、令和7年のSNS型投資詐欺の被害額は1,274.7億円で、前年から46.3%増えたという(暫定値)。とくに暗号資産を送らせる手口の伸びが大きい。相談の現場でも、暗号資産に関するトラブル相談は近年、年に7千〜8千件規模で寄せられている。数字は、この型が今まさに広がっていることを示している。
登録の有無は、自分で確かめられる
投資の勧誘には、法律上のルールがある。「絶対に儲かる」「元本保証」と言い切るような勧誘は、その時点で一歩引いて見ていい。金融商品取引法は、不確実なことを確実だと誤解させる「断定的判断の提供」を禁じているからだ。
もう一つ、確かめられることがある。日本で登録を受けずに金融商品取引業や暗号資産交換業を行うことは違法だ、と金融庁も無登録業者との取引への注意喚起で明記している。勧誘してきた相手の名称は、金融庁が公表する無登録業者の一覧で照らし合わせられる。名前を一つ調べる。それだけで分かることがある。
巻き込まれないための、ゆるい行動ルール
気合いで見抜こうとすると疲れる。だから「いつものクセ」にしてしまうのがいい。一番効くのは、その場で決めないこと。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、大半は防げる。そのうえで、
- 「完全自動・放置で稼げる」は、損失も自動で増えうる、と読み替えておく
- 見せられた実績画像や経歴は、自分の手で裏が取れるかどうかを基準にする
- 約束された利益が「誰の金から出るのか」を、一度たどってみる
- 勧誘元の名称を、金融庁の無登録業者の一覧で照らしてみる
- 「絶対」「元本保証」と言い切る勧誘は、その言葉自体を黄信号と見る
この記事のまとめ
- 「自動・放置で稼げる」は、利益も損失も自動という意味。完全な嘘にならないからこそ引き込まれやすい
- 毎日数万円という約束は、割り算をすれば現実離れが見える。利益の出どころが説明されない話には近づかない
確かめ方は結局、数字でほどく・出どころをたどる・登録を照らす。この3つに尽きる。迷ったら、警察・消費生活センターなどの正規窓口へ。