第140号黒岩検閲済 2026年6月16日 発行(不定期刊/前号:6月16日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|AI銘柄選定ツール

「AIが上がる株を選ぶ」という投資ツール——料金を見せないまま登録させる設計が隠すもの

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黒岩警戒度

「AIが高騰しそうな株を自動で選んでくれる」。最近、こういう触れ込みのツールをよく見かける。無料で始められて、AIの診断を受けると、あなたに合った銘柄が分かる——そんな案内だ。今号はこの「AIが選ぶ」という看板の型を、一つの案件としてではなく、繰り返し現れる仕組みとして洗った。固有の名前は出さない。私が見ているのは、名前ではなく設計のほうである。

「AIが選ぶ」は、外から確かめられない

まず押さえておきたいのは、「AIが選んでいる」という説明そのものが、こちらからは検証できないということだ。どんな根拠で、どの株を、どれくらいの精度で選んでいるのか。広告に「初月で30万円」といった数字が並んでいても、その数字がどこから出たのかは外から追えない。

つまり「AIが選ぶ」は、中身を見せないまま「すごそうだ」と思わせるのに都合のいい言葉になりやすい。人の名前で勧めれば「その人は信用できるのか」と問えるが、AIだと「機械が出した結果だから」で止まってしまう。そこを狙っている、と私は見ている。で、その的中の実績は、誰がどうやって確かめたものなのか。

入口は無料、料金は後から出てくる

この型の運びは、だいたい決まっている。SNSの広告から公式のメッセージアプリへ登録させ、無料の診断や無料の体験を入口に置く。お金の話はそこではしない。診断が終わり、こちらが乗り気になったころに、有料プランの案内が出てくる。

気をつけたいのは、その料金が登録の前に表示されないことが多い、という点だ。いざ案内されると、数万円のものから数百万円のものまで幅があった、という相談も聞く。これは順序が逆だと思う。ふつう買い物は、値段を見てから選ぶ。値段を見せないまま登録させ、乗り気になった後で金額を出す——これは「比べさせない」ための設計に見える。

「無料」と「価格の後出し」がそろったら 入口が無料で、料金が契約の直前まで分からない。この二つがそろったときは、いったん手を止めてほしい。最初に1万円ほどの安いものを買わせ、その後で著しく高額な商材を勧める手口について、消費者庁も注意喚起を出している。安い入口は、高い出口への通路になっていることがある。

数字でほどく——確実に増えるのは、誰の口座か

少し立ち止まって考えてみる。本当に「AIが上がる株を当てられる」のなら、その仕組みを人に売る必要があるだろうか。当てられるなら、黙って自分の資金で運用したほうが早い。わざわざ広告費をかけて利用者を募り、ツール代を受け取る理由は薄い。

もう一つ。料金が数万円から数百万円まで開いているなら、その差額は何の対価なのか。「上位プランほどよく当たる」のだとしたら、当たる精度を価格で出し分けている、ということになる。当てられる技術があるのに、安いプランの人にはわざと精度を落として渡す——筋が通らない話だ。

結局、この設計でいちばん確実に増えるのは、利用者の口座ではなく、ツールを売る側の売上のほうではないか。情報を売る商売は、買った情報で利益が出るかどうかにかかわらず、売れた時点で売り手の取り分が確定する。国民生活センターにも、こうした情報商材をめぐる相談が年間数千件規模で寄せられ続けている。で、その利益の出どころは、運用の成果なのか、それとも新しく入った人が払うツール代なのか。

「登録」と「実績の演出」も見ておきたい

投資の助言や運用を仕事として行うには、金融庁(財務局)への登録がいる。金融庁は「登録を受けずに金融商品取引業を行うことは違法」だと、はっきり注意喚起している。だから、銘柄を名指しで勧めてくる相手については、まず登録のある業者かどうかを確かめたい。これは公表されている情報で、自分でも調べられる。

あわせて、実績や利用者の声の見せ方も見ておきたい。設立してまもない会社が「何年も前から実績がある」とうたっていたり、利用者の写真が他で配られている素材だったり——そうした演出は、信用を借りてくるための手段になりうる。金融庁は、著名人をかたる手口や「必ず儲かる」と確実であるかのように伝える手口について、その主な型を公開している。あわせて読んでおくと、見え方が変わると思う。

迷ったとき用の一言 「本当に上がる株が分かるなら、値段を隠す必要はないはずだ」。健全な商品は、買う前に値段と中身を見せる。見せたがらないこと自体が、一つの答えだと思っている。

立ち止まるための、ゆるい確認

気合いで見抜こうとすると疲れる。だから、いくつかを「いつものクセ」にしてしまうのがいい。料金が出てくる前に、次のあたりを一度だけ確かめてほしい。

  • 登録する前に、総額の料金が明示されているか(後出しなら一拍おく)
  • 「AIが選ぶ」の的中根拠を、自分の手で確かめられるか
  • 銘柄を勧めてくる相手が、登録のある業者か(公表情報で確認できる)
  • 解約・返金の条件が、契約前にはっきり書かれているか

SNSやメッセージアプリをきっかけにした投資の勧誘トラブルは、いま大きく増えている。警察庁の集計では、令和7年の1月から10月までで、SNS型投資詐欺の認知件数は7,243件、被害額は945.2億円にのぼる(警察庁・暫定値)。数字の大きさそのものより、「身近な入口から入ってくる」ことが増えている、という事実のほうを覚えておいてほしい。

この記事のまとめ

  • 「AIが選ぶ」は中身を外から確かめにくく、無料の入口と料金の後出しがそろう型に注意したい
  • 本当に当てられるなら売る必要は薄い——確実に増えるのは利用者の口座か、売り手の売上か

確かめどころは、料金が前もって出ているか・勧める相手が登録業者か・解約条件が契約前に分かるか。値段と中身を見せたがらないこと自体が、一つの答えだと思う。