第158号黒岩検閲済 2026年6月17日 発行(不定期刊/前号:6月17日発行)|投資詐欺・悪質商法の手口を調べて記録する調査報
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調査報告|高値便乗の型

「初の○万円台」に乗せて“今が買い時の注目株”を配る無料メディア――高値の高揚と「乗り遅れ」を入口に、複数の有料サービスへまとめて送客する型を、お金の流れでほどく

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黒岩警戒度

株価指数が「初の○万円台」を超えた、という見出しが流れると、その日に合わせたように「今が買い時の注目株」を無料で配る情報サイトが目につくようになる。中身は市況の解説と、いくつかの銘柄、そして記事の下に並ぶ「無料登録はこちら」「AIが自動で売買」「投資の学校」といった案内。今号はこの「高値ニュースに乗せた無料メディア」を、ひとつの型として、お金の流れの側からほどいておきたい。

「初の○万円台」という見出しは、なぜ刺さるのか

節目のきりのいい数字には、不思議と人を急がせる力がある。「最高値」「初の大台」と聞くと、相場の中身を確かめる前に「乗り遅れたくない」という気持ちのほうが先に立つ。これは判断の話というより、感情の話だ。

勧誘の入口として見ると、これはよくできている。高値そのものは事実なので、嘘をつかずに高揚だけを借りられる。そのうえで「今なら間に合う」と一押しすれば、読み手は「考える時間」を自分から手放してくれる。急がせる側にとって、これほど都合のいい追い風はない。

無料の銘柄メディアは、どこで稼ぐのか

ここで一度、立ち止まって問いたい。記事はタダで読める。銘柄もタダで教えてくれる。では、その媒体は何で食べているのか。で、その利益の出どころは?

多くの場合、答えは「読者の売買益」ではない。記事から有料サービスへ読者を送り、その登録や成約に応じて紹介報酬を受け取る――いわゆる送客が、媒体側の主な収入になっている構図が考えられる。注目すべきは、送り先が一つではなく、有料の投資助言、AIの自動売買ツール、有料の投資スクールと、複数まとめて並んでいることが多い点だ。入口は「無料の注目株」一つでも、出口は束になっている。

この構図だと、媒体の利益は「その銘柄が当たったかどうか」とは切り離される。当たっても外れても、読者が登録してくれれば報酬は立つ。つまり、回しているのは的中率ではなく登録率だ、ということになる。

数字でほどく:読者の財布と、媒体の財布は別 仮に送り先が「月額3万円」の有料サービスだったとする。年で見れば3万円×12か月=36万円。この36万円は、推奨された銘柄が上がろうが下がろうが、先に運営側へ入る。読者の損益と、媒体・業者の損益は、最初から別の財布になっている。「無料で教えてくれた親切」の出どころは、たいていこの別の財布のほうにある、と私は見ている。

「登録を受けているか」は、自分で確かめられる

送り先が有料で投資の助言をするなら、本来そこには制度の話がついて回る。投資助言・代理業や金融商品取引業は、金融庁の登録を受けて行うものだからだ。金融庁は「無登録業者との取引は要注意!!」のなかで、「日本で登録を受けずに金融商品取引業や暗号資産交換業を行うことは違法です。」と明記している。

同じページには、無登録業者は「投資者等の保護のための態勢が確保されているか当局では確認できず」という指摘もある。要するに、何かあったときに後ろ盾がない相手かもしれない、ということだ。金融庁は無登録業者の名称等の一覧も公開している。送り先の名前が分かったら、登録の有無を自分で照らしてみてほしい。無料メディアの高揚に飲まれる前に、ここで一拍おけるかどうかが分かれ目になる。

公的な数字で、いまの足元を見ておく

高値の話に気持ちが傾いているときほど、冷たい数字を一つ挟んでおきたい。警察庁の令和6年の統計(確定値)によれば、SNS型投資詐欺の認知件数は6,413件、被害額は871.0億円にのぼる。前年からの伸びも大きい。SNSやウェブの入口から始まる投資の話が、これだけの規模で被害につながっている、という足元の事実である。

そして、いちばん地味で、いちばん効く一文を引いておく。国民生活センターは消費者トラブルのFAQで、「投資で『必ず儲かる』ことはありません。」と言い切っている。高値の高揚も、無料の親切も、この一文の前ではいったん脇に置いていい。

高値の高揚と「乗り遅れ」がセットで来たら 「最高値・初の大台」という事実と、「今なら間に合う・無料で教える」という誘いが一緒に届いたら、それは黄信号だと思っている。事実の部分は本当でも、急がせる部分と無料の親切の部分には、別の財布の事情が隠れていることがある。高値は明日もニュースになる。慌てて登録する理由にはならない。

立ち止まるための、ゆるい確認

気合いで見抜こうとすると続かないので、いつものクセにしてしまうのがいい。一番効くのは、その場で登録しないこと。「いったん持ち帰って調べます」を口ぐせにするだけで、大半は防げる。そのうえで、

  • 無料で読めるなら「この媒体は何で稼いでいるのか」を一度考える
  • 送り先の名前を控え、金融庁の登録の有無を自分で照らす
  • 「今が買い時」「今なら間に合う」と急かされたら、それ自体を警戒材料にする
  • 有料サービスは「年いくらか」に直し、当たり外れと関係なく先に出ていく金として見る
迷ったとき用の一言 本当に有望な機会なら、こちらが登録の前に調べる時間を取っても、相手は嫌がらないはずだ。嫌がられたら、それはそれで一つの答えだと思っている。

この記事のまとめ

  • 「初の○万円台」の高揚と「乗り遅れ」は、無料メディアが読者を急がせる入口になりやすい
  • 無料の銘柄メディアの利益の出どころは、読者の売買益ではなく、複数の有料サービスへの送客(登録率)であることが多い
  • 送り先が投資助言なら金融庁の登録の有無を自分で照らせる。「必ず儲かる」はない、という公的な一文を先に置く

対策は結局のところ、その場で登録しない・お金の出どころを考える・公的な窓口や制度で裏を取る。この3つに尽きる。最終的な判断や相談は、警察・消費生活センターなど正規の窓口に委ねてほしい。